十五話 義家族との相互協力
「へぇ…それで、あのクソババァの電話番号が手元にあると…」
「そゆことだな」
ぶっちゃけあいつらの協力なんていらないし、してやりたくない。
「お前が嫌なのは分かったけどよ、俺としては、証拠 証人 証言はあればあるほどいいって理解して欲しいんだよな」
「それは分かるけど、前にも言った通りそれならもう一度あのクソ親父にボコされた方がいいんだって」
マジでやだ、あいつら。
今更どのツラ下げて協力だの言ってきてんだ。
「いやそれはマジやめてくれよ、俺がキレそうになる」
「そりゃまぁ俺が逆でもそうなるけどさ…」
気持ちは分かる、友人が殴られてヘラヘラとしていられるほど俺らは変な感性をしていない。
「確かに今のままでもそこまで不利って程じゃないけどよ、万が一ってこともあるんだ。ヤツを法的に裁くにゃ法的に認められた証拠がいる。証言だって立派な証拠だ」
「あぁ、そうだな。頭じゃわかってんだけど…」
それとこれとは別問題だ。
頭で納得しているから感情もだなんて、そんないい話があるなら企業が人員不足で悩むことはほぼ無いだろう。
それだけ人の心は難しく複雑だ、わがままでもある。
「まぁ相当頭にキてるのは分かるし、話を聞いてて俺も大分キたけどよ…まぁ少し考えといてくれ、ただ時間はあんまねぇぞ」
「分かってる」
そう…クソ親父突撃の日までそう長くない。
もし決断まであと数日しかないのだ。
「取り敢えず、腹が決まったら連絡するよ。悪いけどツヨシには橋渡しを頼むよ」
「気にすんなよ、マサがアイツらとは話したくねぇのは重々承知だ。お前が直接話す回数は極力減らすさ」
彼はなんだかんだ仲間のためなら貧乏クジを買ってでる所がある。
今度なにか礼をしないとな。
今日はここまでにして、一旦帰宅。
なんとか心の準備しないとなぁ…。
とかなんとか言ってるうちに翌日、うだうだしてても仕方ないので話をする事にした。
めちゃくちゃ気が重い。
二人のことは彩藤さんが呼んでくれるようで、''元''俺の家で待つことになった。
しばらく戻っていないとはいえ自分が住んでいた家だ、鍵も待ってる。
先にリビングで待っていると、玄関の扉が開く音がした。
「お邪魔するぜ、マサ」
「どもっす」
二人を無視して彩藤さんと挨拶。
しかしいつまでも無視ってわけにゃいかんだろ。
「お兄ちゃん…えっと…」
「話は聞いてる…が改めて聞かせてもらうぞ」
二人が何を望んでいるのか、直接聞きたい。
加えてコイツらなりの誠意が見たいのだ。
そうして今、二人は額を床に擦り付けている。
誠意を見せろと言ったらこうした、決して俺が強要した訳では無いとは言っておく。
「ごめんなさい
「お兄ちゃんごめんなさい…」
あの時 俺を疑い目の敵にしてきた二人の土下座だが、思ったよりスッキリしない。
むしろここまでするくらいならどうしてあの時、少しでも耳を傾けてくれなかったのか。
「本当に…なんであの時…」
思わず頭を押さえる。
俺とて本当はこんなこと望んじゃいない、しかし二人…というか元義母からは誠意とまではいかないが切羽詰まっているのであろうということは感じ取れた。
美智は…多分本気だと思う。
「はぁ…なんだっけ、あのクソ親父が浮気した証拠が欲しいんだっけか」
モヤモヤは収まらないが、このままでは話が進まないので、取り敢えずこのババァの要望を聞いてみる。
「そうなの、晴政君の持ってる証拠を分けてし欲しくて…虫のいい事は承知しています…でも、お願いします!」
そう言ってまた頭を下げる義母。
しかしここまで黙っている義妹が気になった。
「んで、お前はなに?」
「あっあたしは…お兄ちゃんに謝りたくて…」
あの時謝ってたし、そもそも許す許さない以前の問題なので必要ないのだが…。
引く気はなさそうだな。
「どうでもいいよ、好きにしてくれ」
「え…でもお兄ちゃん、いなくなるって…」
「そりゃ当たり前だろ、誰が好き好んで冤罪 掛けてくるようなヤツらと住むんだよ」
当たり前の話である、やむを得ない事情がない限り誰だって俺と選択をするはずだ。
「そっそんな…お願いお兄ちゃん、行かないでぇ!」
「そう言われてもな…俺はもうアンタらを家族として見れないよ」
「いや…いやぁ…」
美智は涙を流して突っ伏しているが、あの時は俺の方がそうしたかったくらいだ。
「とにかく、浮気の証拠だな」
そう言って改めて元クソ義母に視線を向けた。
「はい、改めてお願いします」
誠意はともかくとして、ここまで頭を下げることを見ると必死の様だ。仕方ない。
「わかった、二人がヤってる写真があるし、それで足りなきゃ動画もある…それでいいか?」
「充分よ、ありがとう…」
元義母はそう言って安堵のため息を吐いた。
俺ができる事はこれだけだ。
「私たちは、晴政君が暴行を受けたと証言するわね」
「あぁ、頼んます」
こうしてクソ親父にとって身近な人間の証言を得ることができた…ということか。
「ただ、離婚の話をするなら俺たちのタイミングに合わせて欲しい…いいか?」
「えぇ、分かったわ」
とりあえずこちらの要望は伝えた。
横にいる彩藤さんに視線を向ける。
「はぁ…これでいいよな、ツヨシ」
「あぁ、バッチリだ」
彼はそう言ってサムズアップした。
先走られても面倒だ、莉乃とクソ親父がやるタイミングに合わせないと。
それについても示し合わせが必要だ。
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