十四話 義家族の意向

「災難だったな、大丈夫か?」


「あ…はい、ありがとうございます」


 凄くかっこいい人だ、お義兄ちゃんと同じくらい。


「まぁああいう奴らもいるから、これからは気を付けてな」


「はい!」


 お義兄ちゃんの為にできることを考えなきゃいけないのに、こんなことで時間を無駄にできない、気を引き締めないと。

 余計なことに時間を取られちゃいけない。


「俺はこっちに向かうんだけど、もし良ければ途中まで送ろうか?」


「え、いいんですか?」


 そんな簡単に信じてはいけないのかもだけど、またあの人に会ったら最悪だという気持ちもある。


 私はその人…彩藤さいとうさんにお願いして途中まで送ってもらうことになった。



 それからしばらくして、私の家の前に着いた。


「それじゃあ、私はここなので…」


「え…」


 あたしがそう言うと彩藤さんが凄く驚いた顔をしていた。


「ち、ちょっとまて…もしかして君って、マサの家族か?」


「え、誰ですか?それ」


 マサとは誰だろう、少なくとも私の家族にそんな人…あれ?お義兄ちゃんの名前って…


「あぁ悪かった、マサってのは栄渡えど 晴政はるまさってやつの事なんだが…」


「え…」


 どうして彩藤さんからお義兄ちゃんの名前が出てくるの?


「その様子だと、知ってるっぽいな…アイツは確か…だから…君はアイツの妹か」


 彩藤さんはしばらく思い出すようにしていると、そう言った

 あたしが妹だと言い当てたことを考えると、お義兄ちゃんから聞いたのかな?


「えっと…あなたはお兄ちゃんの知り合いですか?」


「あぁ、知り合いっていうか友人だ。君のことも聞いてるぞ……相当怒ってたけどな」


 あぁやっぱり…あの時のお義兄ちゃんを見れば分かる。


「そうですよね…そんな気はしてました…」


 辛い…なんて言っちゃいけないけど、それは事実。

 なんであんなこと信じちゃったんだろう…。


「……反省はしてるっぽいな」


「え?」


 確かにあんな事しなければ良かった、義兄ちゃんを信じれば良かったとは思っているけど…


「今、アイツは親父を訴える為に動こうとしてる。もし良けりゃあ暴行をしたっていう証人になってくれねぇか?」


「っ…なります!」


 もうお義兄ちゃんては仲良くなれないかもしれない、でも何もしない訳には行かないから…。



美智みさと?何しているの?それに…その人は、どちらさん?」


「あ、お母さん…」


 しまった…長話しすぎた。

 仕事を終えたお母さんが帰ってきたのだ。


「あの…ウチに何か用ですか?」


 お母さんが彩藤さんに敵意にも似た警戒心を見せる。


「あぁ、俺はマサ…晴政の友人です。先程お嬢さんが変な人に絡まれてたので、帰り道も同じなんで送って来たんすよ」


 彼はその様子に怯むことなく堂々と告げた。


「えっ、晴政君のお友達?」


「えぇ、あいつも色々と困ってるようで。DVをされただなんて嘘で…ね」


 もしかして、お母さんにもあの事を話すのかな?

 だとするとお母さんは…。


「……私に何か出来ることはあるかしら?」


 やはり、お母さんは協力するみたい。

 やっぱり義父にはあまりいい感情を抱いてないっぽい。


「そうっすね…取り敢えず暴行の事実が欲しいとこっす。まぁ結構集まってるんでついでっちゃついでですが…」


「いいわ、私たちができる事なら証人になりましょう…だから私のお願いも聞いてくれるかしら?」


 お母さんが彩藤さんに何をお願いするんだろう…。


「いいっすけど、内容によりますよ」


「大した事じゃないの、あの人が浮気したっていう証拠が欲しいだけ」


「え?お母さん、どういうつもり?」


 あの時は気にしない旨の発言をしていたのに、今になってその証拠が欲しいだなんて…。

 そう思いお母さんに尋ねた。


「あの人は嘘をついて、挙句に晴政君にあれだけの傷を負わせたのよ?それに加えて援助交際まで…間違いなく捕まるわね、そうなったら私たちだってどうなるかわからないの」


「それは、そうだけど…」


 正直あたしはどうすればいいのか分からない。

 お母さんは一体 何を考えているんだろう?


「俺は別に浮気の証拠を渡すのはいいんすけど、それ持ってんのは晴政なんすよ…だからアイツに直接お願いして欲しいんですよね」


「分かったわ、私の連絡先を渡しておくから、もしあの子が会ってくれるのなら連絡して」


 そう言ってお母さんは電話番号を紙に書き、彩藤さんに渡した。


「分かりました、アイツにも話をしときますが…後はアイツ次第ですよ、めっちゃ怒ってたんで」


 彼はそう言って去っていった。


「これは…私達もあの子に謝る必要があるわね」


 お母さんはそう言って家の中に入り、私もその後に続いた。

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