八話 母さんと会うよ!

 あれから教室に戻るとのぞみが何の話をしていたのかと問い詰めてきた。


 まぁコソッとだけどちゃんと答えましたよ、俺の為に動けって言ったって。

 それと抱いて欲しいって言われたとも。


 それを聞いた彼女は思いっきり顔をしかめて『キモッ、あんな事したうえ笑ってたのに?意味わかんない』と言っていた。

 ホントそうだよね、俺も全く同じこと思ったわ。



 そんなこんなで学校が終わり、母さんに連絡すると近くのファミレスで待ってると連絡がきた。

 なんとそこは俺のバイト先だった。


 母さんは俺の様子を見るなり号泣して抱き締めてきた。やっぱりお母さんの温もりって安心するなぁ…あぁ童心に帰るぅ…。


「ごめんなさいね、まさかこんなに酷い怪我をしてるだなんて思わなくて、つい…」


「マジで母さんは気にしなくていいって」


 母さんは離れる気配を見せない、四人用テーブルなのに向かい側空いてるよ。まぁ今の時間帯 店はすいてるからいいけど。


「アイツは絶対許さない、絶対に晴政はるまさを返してもらうから」


「お願いね、俺も母さんと一緒がいいからさ」


 あの時、母さんが俺を引き取ると言ったなら間違いなくついていった。


 しかし母さんよりクソ親父について行った方が金銭面で不自由はしないだろうからと親権を譲った。だけど今は母さんの収入だって負けてないらしく、引く気は無いらしい。


 どの道こんな事になったのだからクソ親父は親権を喪失するだろう、時間の問題だ。



「……ちょっと失礼。久しぶり…ってちょっと前に会いましたね、オバさん」


「ふふっ、そうね…それとありがとね、晴政と会わせてくれて」


 そう笑いあう二人には穏やかな雰囲気が流れる。

 友人と家族が仲良くしているのは見ていて嬉しいものだね。


「俺の友人が困ってるからやっただけで礼を言われるほどの事じゃないっす。…あと、俺の知り合いが色々と証拠集めをしてるみたいなんで、ヤツをハメるのは時間の問題っすよ」


 彩藤さいとうさんは人脈を駆使して色々やってくれてるらしい。

 頼りになるわー。


「それは頼もしいわ、今度お礼をさせてね」


「礼ならマサから貰うんでいいっすよ」


 彩藤さんは金々とした髪をしていてピアスとか日焼けとかしてるので見た感じはチャラいが、これでも彼女一筋の誠実な人だ。

 面倒見もいいので、年下年上問わずモテるのにあっちこっち手を出さないくらい意外と真面目なのだ。

 人って見た目じゃわからない。

 大学でもかなり頭いいらしいしやべぇよマジで。



 かくして俺は彩藤さん、莉乃りのの方面から、クソ親父をハメられる情報を集めてもらい、母さんは俺を引き取るために尽力してもらう事になった。


 着々と準備は進んでいく…



 ーーーーー少々 時間を遡りクソ親父はーーーー



栄渡えどさん、今いいっすか?」


「なんだ、酒匂さかわ君」


 私は栄渡えど 粕斗かずと、とある企業に勤める会計士だ。といっても経理も財務も行うが。


 そして彼はこの会社の社長子息だ。

 随分とチャラチャラしていて怪しいがな。


「いやぁね?なんか栄渡さんが可愛い女の子を紹介してくれるって聞いたんすよォ」


「っ!…なんの事だ、根も葉もない噂だろう」


 非常にマズい、何処から漏れたのか知らないが、未成年相手に援助交際をした挙句、自分の息子に手を出したなんてことが知られればどうなるか分かったものではない。


 せっかく会社の金を横領してまでヤっているのだ、それを手放してなるものか!


「その反応だと、マジっぽいっすねぇ…いいんすか?会社の金に手ぇ付けてんの、親父にバラしちゃいますよ?」


「なっ…」


 そう下卑た笑みを浮かべるコイツに背筋が凍ったような感覚に陥る。

 どうしてコイツがそこまで知ってるんだ!

 誰も関わっていないはず…まさか自力で気付いたというのか?


「まさかバレないって思ってました?さすがに金銭の過不足を放置するほど、俺はアホじゃないっすよ」


 馬鹿な…今の役職は俺が長年会社に勤めてコツコツと社長から信用を買って、更に無茶を言って一人でやらせてもらったんだ。

 他の人間が手を出すなど…。


「俺も社長の息子なんでね、一応会社のこと考えてるんすけど…やっぱ疲れンすよねェ…なんでちょっと息抜きに…いいっしょ?」


 つまり、この事は黙っておくから自分にも甘い汁をすすらせろということか。

 なんとも簡単な話だ、莉乃りのが独占できないのは痛いものの、それなら美智みさとでも抱けば良い。今の生活が守れればどうとでもなる。


「うぅむ……分かった、誰にも言うなよ?」


「やった!そうこなくっちゃ! 」


 そう言って無邪気に喜んでいる酒匂。

 こんな事で釣られるのか…と思ったがやはり女学生というのはやはり需要があるのだな。


「ついでにハメ撮りでもして、それ売りましょーよ!良い金になりますよ…それに、動画をネタに脅せばワンチャン言うこと聞いてくれるかも…っくぅー楽しみだぜぇ!」


 下卑げびた笑みを浮かべながら笑っている。

 まぁ私は今の状況が壊れないというのならそれでいい。


 彼には数日後に裏木うらき 莉乃りのと会わせる約束をした。


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