第11話 癖
「……すまぬが、この縄をほどいて欲しいでござる」
「………」
「……先程の話では拙者を助けてくれたのでござろう? ならば貴殿は命の恩人、感謝こそすれ危害を加えるなど、武人としてそのような恥ずかしい真似せぬでござるよ」
「………」
犬が喋っている。
よくアニメとかで動物が喋ってたりするけど、あれってどうなっているんだろう。
犬の口の構成でどうやって日本語話しているの、とかいうのは野暮だろうか。
目の前の柴犬が流暢な日本語を話しているが、口の動きと聞こえる音が合っていないので少し違和感がある。
だが、そんなことはどうでもいい。
そんなことより大事なことがある。
「――――し、もしっ!大丈夫でござるかっ?」
「――はっ!?」
「いきなり目を見開いて微動だにしなくなったので驚いたでござるよ、大丈夫でござるか?」
「……あ、あぁ、はい、大丈夫です、はい、ちょっと考え事してまして、すみません」
「貴殿、なにやらお疲れの様子。拙者の事はこのままで結構でござる、しばし休まれたら如何か? 拙者はここを動かないので安心なされよ」
「はぁ、あ、大丈夫です、気にしないでください」
犬が優しい。
口をにへっとして笑っている。
「えー、縄の件ですけど、ちょっと相談してきて良いですか?」
「構わんでござるよ。拙者は待つのは得意でござる」
すみません、と家の中に戻りリビングでお茶を飲む。
「はじめちゃん、大丈夫? 声は聞こえなかったから何話してたかわからないけど、なんかびっくりしてた?」
「……どうしよう花ちゃん」
「――っ! なんかあったの!?」
「犬がかわいいっ!! ござる口調だった! ござる口調だったっ!!」
大事なことなので二回言った。
ござる口調の柴犬とか癖に刺さる。
超可愛い。
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