第6話 これからどうしよう
「現状把握はこれくらいでよしにして。これからどうする~?」
花ちゃんがコーヒーのおかわりを入れつつ聞いてくる。
「やっぱりさ、私はせっかく異世界に来たんだから異世界っぽいことしたいかなぁ。できるなら魔法とか使ってみたいし」
「そうだなぁ、俺も魔法は使ってみたいなぁ」
そこは俺も同意見だ。俺も花ちゃんも生粋のオタクである。そりゃ魔法使えるならバンバン使いたい。
「あとは異世界観光とかかな? ゲームで見たファンタジーが現実にあると思うと……くぅぅー、高まるぅぅ!!」
キラキラと目を輝かせて、まぁかわいいこと。
花ちゃんはゲーオタである。いっちゃんが生まれる前は暇があればゲームをしていた。
出産時、陣痛が来てもゲームを止めなかったほどで、分娩室にゲームを持って入ろうとして医者に怒られていた。
さすがに生まれてからはお世話があるので多少は自重しているが、あまりプレイできなくて相当ストレス溜まっているみたいだ。
異世界観光、してみたいな。
だが、うちにはいっちゃんがいる。
8ヶ月の乳児を連れて知らない土地を行くのはリスクが高い。そこが異世界ともなれば尚更だ。
「高まってるところ水を差すようだけど、俺達のよく知る異世界だったとしてもさ、色々と問題があると思うんだよね」
「問題って? 何かあったっけ?」
「例えばいるかわからないけど、魔物に魔獣、盗賊とか人間とも争うでしょ異世界ならば。現状チートも何もないのに、その上で乳児を連れて旅をするのはリスクしかないと思うのだけど」
「……ぐぬぬ、確かに」
「今考えたら朝に何も考えずに皆で外に出たのは危なかったかな。それにここが地球じゃないのなら未知の病原菌とかもあるかもだし。今更だけど」
俺の知ってる異世界ならば此処彼処に危険が潜んでいる。特に外敵に関しては石を投げれば盗賊かゴブリンに当たると言うほどのエンカウント率になってるはずだ。
転移直後は大体彼らにエンカウントするのが異世界あるあるだ。
「……もしかして、こんなのんびり朝御飯食べてコーヒータイムなんてしてる暇なんてないのかしら? 家の中にいても襲われたらちょっとまずかったりする?」
「まずいかもしれない。ここは現実だから、ラノベみたいに都合が良い展開はこない思った方が良いかも」
外にいようが家の中にいようが、現代日本人の我々には異世界の暴力に抗う術は今のところ無いのである。
「スキルもチートも何もない異世界転移って割と難易度ベリーハードよねぇ」
そう、だから何かしらの対策を早急にしなければいけないのに、悠長に朝御飯をしっかり食べてコーヒタイムまで楽しんでしまった。
冷静になったと思ってたがやはり俺もどこか浮かれていたみたいだ。
とりあえず何もしないよりはマシだ、と家中の施錠を確認したところで――、
『ぶもぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおっっっ!!!』
フラグが立ったのだろうか、なんか来たっぽい。
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