第3話 異世界か分からないけど転移はしたみたい

 家族三人で、家の前にある砂浜から海を眺めている。


 エメラルドグリーンの海面に陽の光が反射しキラキラと輝いている。

 海は透明度が高く、珊瑚礁や色とりどりの熱帯魚ぽい魚が泳いでいるのがよく見える。

 砂浜は白く決め細やかでサラッサラ。触り心地がとても良い。


「………海、だなぁ」

「海だねぇ」

「だぁー」


 新居があった場所は駅からかなり離れており山も近くそこそこ緑豊かな環境だった。

 家の周りは田んぼや畑で囲まれており、少し歩いた先にお隣さんの家がやっと一件あるくらいのそこそこ田舎な住環境だった。はずだ。


 それが一夜明けたら家の前には白い砂浜と青い海が広がっている。しかも飛びっきりに綺麗な。

 昔、高校の修学旅行で沖縄に行ったのを思い出す。

 沖縄の海も綺麗だったが、ここはそれ以上かもしれない。


「どうしたもんかね」


「そうねぇ……とりあえず、朝御飯食べよっか。何かするにもお腹一杯にした後にしましょ」


「腹が減ってはなんとやらだね。そういえば起きたまんまそのまま来ちゃったから顔も洗ってないや」


 いっちゃんもごはん食べようねー、とさほど動揺した様子もない花ちゃんは、砂浜を這いずる天使を抱え一足先に家へと戻っていく。


 綺麗な海を眺めているうちに、立て続けに起こった異常現象でアガったテンションは落ち着き、今度は逆に不安や心配事が色々と頭をよぎる。


 これがラノベであるような異世界転移だったなら、スキルやチートといった特殊能力でもないとすぐに詰む。

 だが今のところ俺や花ちゃんにそんなものは確認できていないし、生後8ヶ月の赤ん坊が壁をハイハイしたからといってどうにかなるはずもない。


 もう一度、期待を込めて(花ちゃんに聞こえないように)呟く。


「……ステータス」


 やはりなにも起きず軽くため息をつく。


 はじめちゃん置いてくよー、と少し先で手を振る花ちゃんに、はーいと返事をし買ったばかりの新居へと引き返のだった。






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