第8話 ホワイトボード
「てっちゃん、おじゃましまうま」
どうしてか
私は元の小虎に戻った小虎と一緒に、玄関のチャイムを押したけど、てっちゃんの返事はなかったので、仕方なく、鍵の開いていた玄関の扉を開けて、玄関で靴を脱いで、家の中に入れば。
てっちゃんが、てっちゃんが、てっちゃんの顔が。
「てっちゃん私がわかる?わからないの?そうだよねわかるはずがないよねだっててっちゃん人間の記憶がないんでしょ人間の言葉を話せないんでしょおよ、およよよよよよよよ」
シュッと顔が細くてちょっと怖い動物の狐の顔になってしまっていたてっちゃんに私は駆け寄って、泣いた。泣いてしまった。
顔は狐の顔なのに、身体はてっちゃんのまま。
あれ、なんか、こういう子どもが出ている映画がなかったっけ。
ほら。えーと。ほら、顔は動物で、他の身体の部分は子どものままの。
えーと。うーんと。ダメだ思い出せない。
「あっちゃん、落ち着………いてるね。別の事を考えてらあ。もうこうなるともう少ししないと話しかけても全然聞いてくれないから、少し待っていようか。小虎。ごめん。俺、うまく飛べなくて。でもまさか、ここに落ちるなんて思いもしなかった」
ぶつぶつぶつぶつ。
頭を抱えて小声で話しているあっちゃんから、俺は浮かんでいる小虎に話しかけた。
小虎は真面目な顔で現状は理解できていますかと俺に質問した。
「え~~~。変化もできないくらい身体が弱っちゃったのかな?顔、狐だし」
「いいえ、
「はい」
「今、某の目の前におられる哲寿様は哲寿様の一部なのです。理由は不明ですが、哲寿様の一部であるあなた様は、ここに落ちてしまった。御本体は御母上と御父上の故郷におられます。早く御本体に戻られなければ、人間に変化する事が叶わず、狐として、一生御母上と御父上の故郷で暮らさなければいけなくなります」
「………小虎」
「はい」
「ホワイトボードに書いて、もう一度ゆっくり説明してくれないかな?俺。ちんぷんかんぷんだった」
「はい。何度でもご説明いたします」
俺はゆっくりと移動して冷蔵庫にかけてあるホワイトボードとホワイトボードマーカーを持って来て、小虎に手渡した。
とってもすごいんだよなあ。
小虎は小虎の手でホワイトボードマーカーを持つ事ができるんだ。
あ、何か絵を描いてもらおう。
何にしようかな。
「絵は描きませぬぞ、哲寿様。説明をお聞きください」
「あ、そうだった。ごめんごめん」
(2024.8.20)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます