第4話 ムリ




 駄菓子屋の居間にて。


 私をてっちゃんのお母さんとお父さんのふるさとに連れて行って。


「あっちゃん」

「どうせ私にはふるさとがないから、夏休みの間ずっと家だし。お母さんもお父さんもドケチだからどこにも遊びに連れて行ってくれないし。てっちゃんがいなかったら………いなくても、お母さんとか、お父さんとか、おばあちゃんとかおじいちゃんとか、近所のお姉さんお兄さんとか、他の友達と面白おかしく遊ぶけど。でも。おバカで庶民の同盟を結んだのは、てっちゃんだけだから!私にとって、てっちゃんは、とても、とっても、親友だから!最強だから!だから!私と一緒にいれば、バカにされても悲しくないなら、私はてっちゃんとずっと一緒にいる!てっちゃんのお母さんとお父さんのふるさとに行く!連れて行って、てっちゃん!」

「あっちゃん」

「てっちゃん」


 私はちゃぶ台の三本の内の一本脚にゴムひもで固定されているティッシュ箱から、素早くティッシュを五枚引き抜いて自分用に太ももの上に置いて、もう一回五枚引き抜いて、てっちゃんに渡した。

 私もてっちゃんも、鼻水と涙で、顔がえらい事になっていた。


 ズビズバズビズバ。

 五枚のティッシュをごうせいに使って、鼻水も涙も出し切ったあと。

 ゴミ箱にポポイのポイしたあと。

 ニッカリテリテリ。

 てっちゃんは満面の笑顔になって、私に言った。


 ムリ、あっちゃんを母ちゃんと父ちゃんのふるさとに連れて行けない。


「………オイオイオイ。ここは、うん一緒に行こうあっちゃんって、私の手を強く握って言うところだろうが」

「うん。言いたいけどムリ!」











(2024.8.14)



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