花園の美郷
この街には、花園があるのですって。
まぁ素敵。
でもそこの番人は女の子で、一日経つと記憶を失うのですって。
なんだか可哀想ね。
おとぎ話よ、ただの。
それもそうね。
美郷は後ろを歩くマダムたちをキッと睨み、ぎらぎらとした太陽の時間に、初めて美郷に出逢った場所へと走って行った。
美郷がわたしを忘れるですって?
美郷はわたし自身なのに。
「……ここだわ。」
トリックは分かっていた。
わたしはわざと美郷好みの本をバサバサと落とした。
そうするとやはり花園は開け、そこにドレスを着た美郷が居た。
「美郷っ!」
わたしは美郷目掛けて走って行き、美郷を抱きしめ、口付けをした。
「まぁ」
美郷は驚いた顔をしてこう言った。
「随分熱烈なお客さまね。あなた、お名前は?会ったこと、あったかしら?」
美郷は固まって、身動きが取れなかった。
あんなに愛し合った美郷が、わたし自身が、
わたしを忘れているだなんて―
to be continued..........
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