第二十二話 報告①
久兵衛は、また台帳を見ていた。
赤字が累積し続けていた。
彦三郎からは、まだ何一つ朗報はなかった。
このままでは本当に吉津屋の看板を下ろさなければならないことになる。
と、久兵衛がそんなことを考えていた折、突然、胸に痛みを感じた。
やがてそれがおさまると、着物の襟口から胸元を見た。
謎の黒ずみが胸から腹や首に向かって広がっていた。
何なのだ、これは………!?
得体の知れない症状に、久兵衛は不穏なものを感じた。
未知の病か何かか………?
だとしたら、どんな治療も薬も役に立たないだろう。
こうならないために「願掛け」をしたというものを………。
いや、あるいは、あの黒い液体か………?
ということは、私は騙されたのか………。
久兵衛がそう思った時だった。
慌ただしく部屋の障子が叩かれた。
「入れ」
すると、彦三郎が血相を変えて入ってきた。
「とんでもないことが分かりました!」
「どうした? 少し落ち着け」
「落ち着いてなどいられません! 天地がひっくり返るようなことが起きたのですから!」
彦三郎は小箱を開け、紙で包んだものを久兵衛に見せた。
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