第二十五話 気遣い①


 部屋に入った心之介は、ゆっくりと息を吐いた。


 何となく胸のあたりにあるモヤモヤしたものを吐き出したかったからだ。


 さくらと高盛の仲がどうであろうと関係ない。


 そういう感情を抱くことさえ許されないのだから。


 心之介は頭を振って思考を切り替えた。


 白の神社を見つけて千年花を守ること。


 とにかくその一点に集中するべきだった。


 だが、まだ何の手がかりも見つかっていなかった。


 残りの時間も少なくなってきている………。


 心之介は焦りを覚えた。


 と、その時、障子戸が叩かれた。


「さくらです」

「どうぞ………」


 心之介が返事をすると、さくらが部屋の中へ入ってきた。


「今日の往診は徳兵衛長屋のお久さんです。よろしくお願いします」

「分かりました」


 さくらはすでに往診箱を持ってきていた。


 いつもなら戸口でするやり取りをわざわざここで………?


 心之介がそう思っていると、さくらが言った。


「右腕を見せていただけますか?」

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