第十五話 謎の娘①

 井出橋いでばし通り診療所は、見るからに金をかけて作った豪華な外観で、門構えも立派だった。


 そして、その中で、宗庵は金庫の残金を数えていた。


 わずかしかなかった。


 とてもじゃないが、本波さくらの用心棒を倒せるような腕の立つ者を再度雇うことなどできそうもなかった。


 かといって、開店休業状態では、金が増えるあてもなかった。


 どうしたものか………。


 と、宗庵が苦しい思案をしていた折、訪ねてくる者がいた。


 患者かと思ったが、彦三郎だった。


 彦三郎は布袋を持っていた。


「これは彦三郎さん、何かご用ですか?」

「お願いがあって来ました。これで薬を作ってくれませんか?」


 彦三郎は手短に挨拶をすませると、すぐに布袋を開いた。


 中には一夜花がたくさん詰められていた。


「見ない花ですね………? スイセンにも似ていますが、花びらの色が違うようですね………?」

「はい、よく似ていますが違うものです。スイセンがなかなか手に入らないので、これで代用しようと考えています」

「そうでしたか、分かりました。では、作り方も同じで構いませんか?」

「はい、とりあえずは、そのようにお願いします。可能でしたら、できるだけ早く」


 それだけ言うと、彦三郎は懐から紙包みを取り出して宗庵に差し出した。

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