第十五話 謎の娘①
そして、その中で、宗庵は金庫の残金を数えていた。
わずかしかなかった。
とてもじゃないが、本波さくらの用心棒を倒せるような腕の立つ者を再度雇うことなどできそうもなかった。
かといって、開店休業状態では、金が増えるあてもなかった。
どうしたものか………。
と、宗庵が苦しい思案をしていた折、訪ねてくる者がいた。
患者かと思ったが、彦三郎だった。
彦三郎は布袋を持っていた。
「これは彦三郎さん、何かご用ですか?」
「お願いがあって来ました。これで薬を作ってくれませんか?」
彦三郎は手短に挨拶をすませると、すぐに布袋を開いた。
中には一夜花がたくさん詰められていた。
「見ない花ですね………? スイセンにも似ていますが、花びらの色が違うようですね………?」
「はい、よく似ていますが違うものです。スイセンがなかなか手に入らないので、これで代用しようと考えています」
「そうでしたか、分かりました。では、作り方も同じで構いませんか?」
「はい、とりあえずは、そのようにお願いします。可能でしたら、できるだけ早く」
それだけ言うと、彦三郎は懐から紙包みを取り出して宗庵に差し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます