第十二話 人相書③
「さすがは親分、すでに目星をつけておられましたか………」
「それが俺の仕事だからな」
「では、お聞きしますが、何故、お縄にしないのですか?」
「出来るわけないだろ。肝心のさくら医師からの訴えがないんだからな」
「そうだとしても、襲われているのは事実です。私も何度も立ち会っているのですから」
「それでも、表沙汰にしたくないんだろ。理由は分からないが、それがさくら医師の意向なんだから、俺たちとしては、あくまでもそういう噂があるというくらいしか言えない。なので、動くに動けないわけだよ」
「そうですが………」
心之介が納得できないといった様子を見せると、米吉はきっぱりと言い切った
「だから、この件はお前さんに任せる。見ての通り、俺は急がしいのでな」
そして、そう告げると、背を丸めて去って行ってしまった。
その姿が角を曲がって見えなくなると、ザンバラ髮の女性と娘が戻ってきた。
心之介は懐から似顔絵を取り出して見せた。
「すみませんが、この人を見たことがありませんか?」
「あなたもお役人さんなの?」
「いえ、違いますが、ちょっと事情があって探しています」
「ふうん」
ザンバラ髮の女性は似顔絵をじっと見た。
と、突然、娘が言った。
「その人、もしかすると、お蓮ちゃんと一緒に暮らしていた人じゃないの?」
「えっ………?」
心之介はいきなり情報が得られるかもしれないという期待と同時に、赤髪のお蓮と同じ名前が出てきたことに驚いた。
「ああ、確かにそうね」
ザンバラ髮の女性もそう同意したので、心之介は聞いた。
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