第十一話 人相書②
「女性なのですか………? しかも、まだ少女の頃では………?」
「だから、納得がいかないんだよ」
「では、人違いではないのですか?」
「俺もそう思っているんだが、聞き込みをして出来上がったのがこの人相書だ。しかも、どいつもこいつも善人だと言いやがる。だが、それは騙されているからだ。俺には分かる、お蓮は最も質が悪くて卑劣なヤロウだってことが、吐き気がするほどのな………」
「どういうことですか?」
「悪党が悪党らしく振る舞えばこっちも探しやすいものだが、お蓮は巧妙にやってやがる。足取りが分からないように住まいを転々と変えているようだが、行く先々で住人たちを食べ物や金で懐柔していたらしい。しかも、変装までしているはずだ。血も涙もない人斬りが、こんな娘のはずがないからな。許しがたいヤロウだ。こうなったら、もう一度、人相書から作り直しだ」
米吉は憎々しげにそう言って人相書をクシャっと丸めると、話題を変えてきた。
「ところで、お前さんは、今日も婆さんを送ってきたのか?」
「はい。ですが、親分に聞きたいことがあったので追いかけてきました」
「何だ?」
「刺客について、何か心当たりはないかと」
「そんなのは簡単だ。閑古鳥の鳴いている同業者に決まっているだろ」
「ですから、その中から、特に疑わしいところはどこかと」
「それを突き止めるのもお前さんの仕事のうちじゃないのか?」
「いろいろと雑用がありまして………」
「だから、手抜きをしようっていうのか? たいした用心棒だよ。まあ、こういうことは、普段の素行から知っていないと分からないものだがな」
米吉はやや呆れ気味ながらにそう言いながらもヒントをくれた。
「同業者では
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