第四話 命の価値④
「順番なんかどうでもいい! 今すぐ治療しろと言っているのが分からないのか! 俺を誰だと思っている! ゾロ目の辰三だぞ!」
辰三はさくらに凄んでみせた。
心之介はいよいよ出ていこうとしたが、再度さくらが目を向けてきて首を振った。
なので、一瞬、どうしようかと思ったが、さくらに何か考えがあるのなら様子を見ようと思った。
ただ、木刀に手をかけ、いつでも飛び出せるよう片膝をついた。
と、そこへ騒ぎ声を聞きつけた幹太が竹刀を持ってやってきたので、心之介は声を立てないよう身ぶりで示した。
「何事ですか……‥!?」
幹太がささやくように聞いてきたので、心之介も小声で答えた。
「よからぬ客が来ている」
間仕切り越しに隣の診察室の様子を見た幹太は、すぐにさくらを助けに行こうとしたが、心之介が止めた。
「さくらさんにもしものことがあったら、どうするんですか………!」
幹太は声をおさえながらも心之介に迫った。
「その前に私が止める」
「今すぐ助けるべきです………!」
「さくらさんが大丈夫だと言っているんだ」
「さくらさんが………!? それでも助けるべきです!」
幹太は今すぐ飛び出したい気持ちをグッとこらえて診察室のほうをに顔を向けた。
心之介がその様子を見ると、拳を握りしめて怒りを押しとどめているようだった。
その間にも、さくらは再び辰三にきっぱりと言い切っていた。
「あなたがどのような方であったとしても、誰かの命だけが価値があり、誰かの命には価値がないなどということはありません。誰の命も等しく尊いものです」
辰三は、ついには懐から短刀を取り出し、さくらに向けた。
「命が平等かどうか、確かめてやろうか!」
が、さくらは、そんな脅しに対しても怖じけることなく毅然と辰三を見つめ返していた。
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