第二話 命の価値②

「こっ、これは高盛さん………!?」


 あまりの取り乱した様子に、高盛のほうが戸惑ってしまうほどだった。


「珍しいですね、こんなところに?」

「実は、あっ、あなたを探していたんだ………!」

「私を?」

「ぜひ見てもらいたかったんだ!」


 宗庵は取りつくろうようにそう言うと、着物を高盛に見せた。


「おたくにしつらえてもらった着物、実に着心地がいい。そのことを伝えたくて………よくここに来ていると聞いたものだから、吉津屋での用事を済ませたあとで、近くに来たついでに寄ってみたのだ」

「そうでしたか、わざわざありがとうございます。宗庵先生のような素晴らしい方に着ていただけるからこそ着物も映えるのです」

「いやいや、私などはまだまだ未熟者だ。医術の道は実に奥が深い。だから、常に学ぶ気持ちを忘れないでいる」


 宗庵は落ち着きを取り戻しつつそう言った。


 高盛はそんな宗庵に崇敬の眼差しを向けた。


「そうそう、宗庵先生にご紹介したい人がいます。宗庵先生はもちろんですが、ここの診療所の医師もとても尊敬に値する方です。診察代を支払えない人たちに無料で診察をしているのです」

「ほう、そうなのか? それは素晴らしい………」


 宗庵は知らないふりを装って答えた。


「どうぞ、お入りください。今、ご紹介いたします」

「あっ、いや、せっかくだが、これから行かなければならないところがある。また時間のある時にいずれご挨拶にうかがおう」

「そうでしたか、それは残念です」

「それでは、また」


 宗庵はそれだけ言い残すと去って行った。


 その際、貧しそうな親子がお椀を持って歩いているのを見かけた。


 宗庵は高盛が見ているので、あえてお金をめぐんであげた。


 高盛はそれを見て言った。


「何と慈悲深いお方だ………素晴らしい………」


 と、そんな折、一人の男が診療所に駆け込んで行った。

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