第三十四話 似顔絵②

 離れの部屋に戻ってくると心之介は腰を下ろし、木刀を抜いて置いた。


 このひとときだけが唯一息をつける時間だった。


 が、ヒスイは腰に帯びたままだった。


 寝る時も体から離さなかった。


 それが心之介なりの覚悟だった。


 だから、そのまま机の引き出しから一枚の紙を取り出した。


 それは安来地区の町の地図だった。


 そして、調べてきた六つの神社のある場所を墨で黒く塗りつぶした。


 だが、それは、まだほんの一部に過ぎなかった。


 全部を見て回るには、どれだけの月日がかかるのだろうか………?


 とにかく、事は一刻を争う………。


 心之介はそう思った。


 それから、もう一枚、別の紙を取り出した。


 ある男の顔。


 それは、心之介と同様に、葉宮家から追放された人物、葉宮天空はみや てんくうの似顔絵だった。


 こちらも、急がなければ………。


 そして、心之介はそれを懐に入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る