第二十七話 人影②

「これは………?」

「永遠の命の元だ」

「………」


 久兵衛は眉をひそめた。


 どうも胡散臭い………。


 だから、気味の悪い液体を飲むのをためらっていると、人影が言った。


「嫌なら飲まなくていい。お前が末代までの商売の行く末を見届けることができないだけの話だ」

「………!?」


 またもや久兵衛は驚いた。


「何故、それを………?」

「私は何でもお見通しだ」

「………」


 それでも、久兵衛の疑いは晴れなかった。


 すると、今度は体が持ち上がった。


「………!?」


 何が起きたのか分からない久兵衛は、宙に浮きながら手足をバタつかせた。


 やがて、ドスンと畳に落とされると、恐怖に顔が戦慄わなないた。


「何を驚いている? 私は人間を超越した存在なのだ。だから、不可能なことなどない」

「………」


 ここまでのことを改めて考えてみた久兵衛は、ついに観念して黒い液体を飲んだ。


「これで、私は永遠の命を得たのですね………?」

「まだだ」

「それでは、話が違います………」

「慌てるな。今、飲んだものでは、まだ半分の効力しかない。もう半分は御幸の森にある。それを手に入れれば永遠の命は完成する」

「………」


 急に御幸の森が話に出てきたので、久兵衛はまた訝しがりながらも聞いた。

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