第二十六話 人影①

 久兵衛は傾きかけている屋根の上にいる梟を見上げてから、拝殿の戸を開けた。


 はて………?


 が、不審に思った。


 拝殿の中に鳥居が………?


 しかも、漆黒色。


 どういうことだ………?


 と、久兵衛がそう思った矢先、その奥がほのかに黒く灯り、人の輪郭のようなものが怪しく浮かび上がった。


「永遠の命がほしいか?」


 その人影のようなものから声が聞こえた。


「あなたは………?」

「聞かれたことにだけ答えろ」


 久兵衛は即座に命令口調でそう言われたので、素直に従うことにした。


「はい………」

「では、それを飲め」


 すると、何かが久兵衛のほうに近づいてきた。


 それはお椀だった。


 運んでいる者もいないにもかかわらず、それはひとりでに移動して久兵衛の前まで来てとまった。


「………!?」


 久兵衛は驚きながらも、お椀の中を見た。


 どうやら、黒っぽい液体が入っているようだった。

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