第二十三話 刺客④

 心之介は道具箱と提灯をさくらに渡すと、すぐに振り返って追手を待った。


 さくらは心之介の後ろに控えた。


 その直後、半ば走るようにして三人の男たちが姿を現した。


 全員、心之介が待ち構えていたのに動揺した。


 そんな挙動を見て取った心之介は、刺客たちの腕の程度を察しつつも聞いた。


「念のために聞きますが、人違いではありませんか?」

「自分の狙う相手を間違えてただ働きする間抜けがどこにいる! 本波さくらを仕留めて金をもらうだけだ!」

「何故、さくらさんを狙うのですか?」

「お前には関係のないことだ!」

「誰に頼まれたのですか?」

「依頼主を売るようなことをするわけがないだろ!」


 三人は口々にそう言うが、明らかに腰が引けていた。


 心之介はゆっくりと木刀を抜いた。


「なめやがって!」

「三対一なら、なんとかなるはずだ!」

「そうだ! 一気にやってしまうぞ!」


 男たちは自分たちを鼓舞するようにそう言うや、一斉に襲いかかってきた。


 すると心之介は、難なく三人の刀を叩き落とすや、ついでにそれぞれの尻を痛打した。


 刺客たちはまるで叶わないとみるや、心之介に背中を向けて脱兎のごとく逃げ出した。


 やがて、通りに静寂が戻ると、さくらが言った。


「ありがとうございました。でも、このことは、いつもように、誰にも………」

「分かっています」

「では、行きましょう」

「はい」


 心之介はそう答えると、さくらの道具箱と提灯を再び持った。

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