第二十一話 刺客②

 磯路いそじ六軒通りの長屋界隈は、さくらが来たことで長い順番待ちの列ができていた。


 どの住人の身なりもみすぼらしく、お腹を空かせた幼子を抱えている母親もいた。


 そんな人たちに対して、さくらは一人一人に診察をし、終わったら布袋から野菜や食材を取り出して渡していた。


「………」


 心之介は長屋の一室の隅に控えながら、その様子を眺めていた。


「お代はいりません」


 そして、診てもらった誰もがそう言うさくらに手を合わせていた。


 ◇ ◇ ◇


 磯路六軒通り長屋以外に、もう三ヶ所ほどでも往診をしたさくらと心之介は、ようやく帰路についた。


 その際、なるべく人通りのある道を選んだ。


 が、心之介は、後ろをついてくる男たちがいることに気づいた。


 人目があるうちは襲ってこないだろう………。


 そう思いつつも、診療所までの道のりを考えた。


 襲ってくるとしたら、どの辺りか………?


 その場所を想定した心之介は、隣を歩くさくらに小声で言った。


「そのまま何事もないふりをして聞いてください。あとをつけてくる者たちがいます」

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