第十八話 御幸の森③

 とはいえ、御幸の森は、葉宮家の人間でさえお務めの時以外は足を踏み入れることはなかった。


 また、一の川から二の川の間には木々の他に珍しい植物が若干生えていたが、二の川と三の川の間にはほとんど見当たらなかった。


 というより、実際はよく分からないというのが本当のところだった。


 お務めは、主に一の川と二の川の間だけで行われたからだ。


 まれに二の川を越えることもあったが、三の川までたどり着いた人はほとんどいなかった。


 それだけではなく、二の川より奥に進んだ人は、二度と戻ってくることはなかった。


 やはり、必ず霧隠しにあうからだった。


 だから、葉宮家の人間であっても、誰も三の川がどこにあるのか分からなかった。


 ただ一人を除いては―――。


 そして、心之介はすでに葉宮の外に出た身であり、ある一件以来、十年以上もの間、御幸の森ともかかわることもなかった。


 その自分が再び戻ってきた。


 心之介は言い知れぬめぐり合わせを感じた。


 だから、何も変わっていないでほしい………。


 そう強く願いながら、一歩ずつ奥へと進んだ。


 が、その矢先だった。


 ………!?


 その安堵を打ち砕くものが突如現れたので、心之介は足を止めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る