第十四話 赤髪のお蓮②
おみつはよごれた着物を着たままうつむいており、その傍らに二人が寄り添っていた。
「どうしてあげたらいいんだろうねえ………」
「………」
心之介はじっとおみつを見つめた。
「おう、用心棒、今日も立派に務めを果たしているようだな?」
と、そんな折、一人の小柄な男が近づいてきた。
見回り役人の
米吉はニヤニヤしながらわざとそんなふうに言った。
用心棒なのに年寄りを背負って往来を行き来している心之介のことがおかしくて仕方なかったからだ。
さらには、心之介の腰を見る。
刀と木刀。
噂では木刀で刺客とやり合っているらしいということで、ますます興味津々な様子だった。
「米吉親分、見回りご苦労さまです」
心之介は米吉に頭を下げた。
「用心棒ともあろう者が婆さんの送迎にまで駆り出されるんじゃ、相変わらず繁盛しているらしいな」
「さくら先生は腕がいいからね」
お加代が自慢気にそう言うと、米吉は眉をしかめた。
「それは間違いないが、診療所も一応は商売みたいなものだからな。あまり安売りし過ぎると、いろんなところに皺寄せが行くものだ」
「………」
それは心之介も案じていたことだった。
それこそがさくらが狙われる理由だろうとも。
だから心之介がやや表情を曇らせると、米吉が言い足した。
「いや、悪い意味で言っているんじゃない。俺はさくら医師を尊敬している。病になったら診てもらいたいぐらいだ。だが、世の中にはいろんな人間がいてな、善意でやっていることでも、恨みを買うこともあるわけだ。まあ、そのために彼女はお前さんを近くに置くようになったのだろうから、その辺のことはちゃんと分かっているらしいがな。とにかく、あまりさくら医師を一人にしないことだ。壁に耳あり障子に目あり、意外なところに落とし穴あり、って言うからな」
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