第六話 ドクダミ②

 と、心之介がそんなことを考えていた折、向かいに座っている多助が大根の煮物を頬張ったとたんにクシャクシャな顔になった。


 それに気づいた夏希が、肘で小突きながら小声で言った。


「美味しそうな顔で食べるのよ」


 が、今度は峰次郎が同じく煮物にかじりついたところ、すぐにそれを皿に吐き出した。


「この大根、草の味がする………!?」


 節乃が横に座る峰次郎の口を塞ごうとしたが、どうやら遅かったようだった。


「草の味? そんなはずないわ。ちゃんと塩で味つけをしたから」

「ひょっとして、あれと間違えたんじゃない?」

「あれって?」

「ドクダミの粉末よ、試しに使ってみようかって台所に持ってきたじゃない?」

「あっ、そうだったわね。じゃあ間違えたのかも」


 お梅とお里がそんなことを言っているのを聞くと、多助と峰次郎が顔を見合わせてから肩をすくめた。


「煮物にドクダミの粉末を入れてみるなんて、なかなか面白い考えだわ」


 ところが、さくらはそう言いながら美味しそうに大根の煮物を食べた。


「そうね、病に効くんだから、きっと体にもいいはずよ………」


 夏希もさくらに合わせて無理して食べたてみたが、渋い顔になった。


「なっ? マズいだろ?」

「そっ、そんなことないわ、とっても美味しいわ………」

「じゃあ、もう一つ食べてみろよ」

「いいわよ………」


 多助に対してそう言った夏希だったが、煮物をもう一つ箸でつまんだまま動かなくなってしまった。


「ほらな、正直に言えよ」

「違うわ、なんか、急にお腹が一杯になっちゃって………」


 そんな様子を見ていたお梅とお里は不思議そうな顔をした。

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