治療②

「心之介さま、こちらに来てください」

「これくらい平気です」


 心之介はそう答えたが、さくらは一瞬だけ浮かべた苦痛の表情を見ていたのでお里に言った。


「ここまで連れてきて」

「はい!」


 お里は小走りで心之介のところへやってきた。


「左腕におケガをされているようですが、右腕はつかんでも構いませんか?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「分かりました」


 お里がそう言って心之介の右腕をつかんで処置台の前まで引っ張ってくると、さくらは今度はお梅に指示した。


「着物を」

「はい! お召し物を切りますので、動かないでください」

「分かりました」


 心之介が答えると、お梅はハサミで血に濡れた着物の左腕の部分を切り取った。


 すると、肩口の近くがザックリと裂け、肉がむき出しになっていた。


 血の匂いが色濃くなって鼻をつく。


 それでも、三人とも顔色一つ変えなかった。


 その傷の深さからお梅がさらに左半身の部分まで着物を切り離すと、体に無数の切り傷の跡があった。

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