第3話 ハレンチ野郎になりました

 俺は全裸で棒立ちになっていた。


 あまりにも素速い動きに全く対応ができずにいた。


 そしてサバスの右手にはパンツが握られている。


「あのー、お風呂に入ってもいいですか?」


 パンツを脱がされ、全裸の状態で3分は放置されただろう。


 俺を脱がした後に再びサバスは固まってしまった。


 そんなに見たくなければ目を閉じていればいい話なのだが……。


 そもそも自分でパンツを脱ぐつもりだったのに、脱がしたのはサバスの方だ。


 湯浴みを手伝うと言っていたが、入る前からこんなに手伝うとは思ってもいなかった。


 体も寒さで震えてきたため、サバスを無視して自分でお風呂の中に入ることにした。


 湯の中は花の香りが広がり、入浴剤とはまた違うフローラルな香りにとろとろとした白い湯が体に染み込んでくる。


 今まで経験したことのないお湯に体の力は抜けていくが、一方のサバスは固まっていた。


「サバスさん?」


「ああ、すみません」


 サバスはすぐに動き出し俺に近づいてきた。


 ただ、顔をこちらに向けようとしない


 そんなに見たくなければ、別に手伝ってもらわなくても問題ない。


 ただ、一人で入れると伝えたがサバスはそれを拒否していた。


 当主の指示は絶対らしい。


 それなら仕方ないと思ったが、あの人は部屋と服の準備をしてとしか言っていなかったはず。


「とりあえず頭を洗いたいのですが……」


 サバスは手を伸ばして何かを取ろうとしているが、こっちを見ていないため全く届いていない。


 きっとあれがシャンプーなんだろう。


 俺は湯船から体を出し、近くにある瓶に手を伸ばした。


「うわっ!?」


 ただ、湯の水質の影響かそのまま浴槽の外に倒れていきそうになった。


「危ないです!」


 そんな俺を咄嗟にサバスは支える。


 だが、俺はそのままサバスの上に乗るように倒れてしまった。


「いたたた、すみません」


 目を開けたそこにはサバスの顔があった。


 髪から滴る雫はサバスの赤く染める頬を伝い床に落ちていく。


 俺はサバスの体に重なるように倒れていた。


 サバスは恥ずかしかったのか視線を下げるが、そこには貧弱な俺の体が露わになっていた。


「ああああぁぁ」


 俺を退かすとそのまま発狂するように部屋から出て行ってしまった。


 そんなに俺の体が見たくなかったのか。


 俺達同じ同性じゃないか!


「あの執事なんな……ってか俺のパンツ返せよ!」


 部屋から出て行ったサバスは、右手に俺のパンツを握ったままどこかへ消えてしまったのだ。


「あれで執事って大丈夫なのか……?」


 俺はひとまず湯船に戻り、入浴の続きをすることにした。


 それにしても瓶に入った液体も全て良い香りがしており、どれを使えばいいかわからなかった。


 とりあえず端から順番に使ったら髪の毛はさらさらになり、体からは香水をつけたような匂いが漂っているから問題ないだろう。


「とりあえず、服もないからこれでいいか」


 俺は近くに用意されていたバスローブを着て部屋を出ることにした。



「ここはどこだ?」


 急に風呂場に連れてこられたが、ラブホテルのような屋敷に来てから、中を紹介されることはなかった。


 正直、どこに向かえばいいのかわからない。


 とりあえず俺は廊下を歩いていると、中から声がする部屋を見つけた。


 わずかに隙間が空いておりそこを覗くとそこには、あの二人がいた。


 そのまま覗いていると、どうやらちょうどイチャつきだしたところなんだろう。


 ワイルドなイケオジの上に美形の当主が重なり合っていた。


「えっ……まさかそっちが受けなのか!?」


 見た目と話している感じからして、イケオジが攻めだと思っていたが実は美形当主が攻めだったとはな……。


 まぁ、それなら普段の行動に納得できる。


「誰かいるのか!」


 イケオジが何かに気づいたのか、扉の方に向かって歩いてきた。


 さすがに覗き見していたことが、バレると思い俺は急いでその場を離れることにした。


 さすがにイチャイチャしているところを覗く趣味はないからな。



「まさかあっちがニャンニャンする方だとは……」


 俺は二人のことを考えながら部屋から離れていると、曲がった瞬間に誰かとぶつかってしまった。


「おい、俺の家で走ってるやつは誰……」


 曲がり角でぶつかって恋が始まるのは少女漫画だけだと思ったが、実際に曲がり角で大きくぶつかることがあるんだな。


 だが、体の軽い俺は思ったよりも遠くに飛ばされていた。


 まさに屋敷内で起こった交通事故のようなものだ。


「すみま……」


 すぐに謝ろうとすると、そこには知らない男が立っていた。


 見た目はスラッとしており、少し霞んだ金髪にグレーの瞳をしている。


 本当に出てくる人みんなイケメンばかりだ。


「なっ……」


「なっ……?」


 俺が男を凝視しているとだんだん男の顔は赤くなっていく。


 見た目と違って可愛い反応をする人のようだ。


「このハレンチ野郎め!」


 ハレンチ野郎?


 あまり言われたことのない言葉に、何を言われているのか理解できなかった。


 どうやら目線は俺の下を見ているようだ。


 転んだ拍子にバスローブがはだけて、股間がスースーして……。


「あっ、パンツ履いてなかった」


 サバスにパンツを取られたままなのを忘れていた。


 俺は尻餅を突いて脚を開き、大事な部分が男に見えるように開帳していたことに気づく。


 あっ、これはハレンチ野郎・・・・・・で間違いはない。


「おっ、おい早くそれを隠せ!」


 男はタジタジしていたが俺もひとこと言いたいことがある。


「いやいや、君もそれを隠せよ!」


 彼は体が大きいため飛ばされることなく立っていたが、同時に別のところも勃っていた。

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