第2話 ホテルに連れて行かれる
「成人過ぎているなら別にいいじゃないか」
「お前は何を言ってるんだ!」
「だってこんなやつと出会う機会そうそうないだろ!」
「さすがに相手の承諾が必要だろう? って何を言わせるんだ!」
なぜか美形の男達が言い合いをしている。
まるで俺を取り合っているような感覚だ。
「ははは、なんか元気が出てきました」
二人の掛け合いに俺は自然と笑みが溢れる。
最近色々なことが起こり、俺は笑っていない……いや、心から笑えない日常が続いていた。
それだけ自分の中で大志の存在が大きかったのだろう。
「さっきまであんな話をしていたが、別に手を出すつもりはない。渡人ならこの世界にもあまり詳しくなさそうだから、私達の家に来てみたらどうかな?」
渡人が何かはわからないが、天国について知るには良い機会だろう。
このまま森の中で一人でいるわけにはいかないからな。
俺は彼らの提案に乗ることにした。
特にこれからの方向性は全く決まっていないから別に問題ないだろう。
それに頼れる人もいないから、ここで出会ったのも何かの運命だったのかもしれない。
「ありがとうございます。とりあえず3Pは遠慮しますが大丈夫ですか?」
冗談混じりで答えると、イケオジはさらに叩かれていた。
「あんたが冗談言うからよー!」
「いやいや、冗談ってわかってるからいいじゃないか! まぁ、俺は全然……痛いって!」
二人の掛け合いを見ることで、しばらくは楽しめそうだ。
イケメンが戯れ合うのって目の保養にもなるしな。
馬車の中に案内されると、二人は俺の目の前に座っていた。
やっぱり夫婦揃ったら一緒に座るのだろう。
一つ一つの動きや配慮全てが、今の俺にとっては羨ましく感じてしまう。
「そんなに熱い視線を送られても――」
「この人は無視していいわよ」
相変わらずイケオジには当たりが強いようだ。
少し落ち込んでいる姿がどこか犬みたいで可愛く見えてくる。
どうやら住んでいる町はこの近くにあり、馬車ですぐ着くらしい。
俺は二人の邪魔をしてはいけないと思い、窓から外の様子を眺めた。
すると目の前に大きな城のような屋敷が目に入った。
どこから見てもラブホテルのような気がする。
〇〇貴族という名が付いていたら、ラブホテルに確定だろう。
俺は必死に看板を探したが見つからなかった。
「どうぞこちらにいらっしゃってください」
先に降りた二人が馬車に残っている俺に声をかけてきた。
キョロキョロとしていた俺はどうやら馬車の中に置いてかれたようだ。
馬車から降りようとすると、二人は手を差し出していた。
「えっ、ありがとうございます」
どうするべきかわからず、二人の手を取ると笑っていた。
背の高い二人の手を掴んだら、まるで子どものような気分だ。
馬車から降り、屋敷の前まで行くと本当に見た目はラブホテルに見えてくる。
重要なことだからもう一度言うが、どこからどう見てもラブホテルなのだ。
「ここが私達の住むウェンベルグ公爵家となります」
「へっ?」
俺は美形の男の一言に驚いて、空いた口が塞がらないでいた。
公爵家?
天国にも公爵家があるのだろうか。
「俺のぶつで口を塞い――」
「その口か後ろの口をキラースパイダーの糸で縫い付けますよ」
イケオジが何かを言おうとしていたが、すぐに美形の男が被せるように話していた。
どこか怯えていながらも嬉しそう顔している。
なんとなくイケオジの性格が垣間見れた気がした。
「では中に案内しますね」
美形の男に案内されるまま、屋敷に入るとそこには見たことない世界が広がっていた。
中央には大きな階段があり、そこから玄関まで執事とメイド達が並んでいる。
「当主様おかえりなさいませ」
全員がこちらに頭を下げているところを見ると、二人はかなり地位が高い存在なんだろう。
「ああ、ただいま。サバス、彼の部屋の準備と衣服の準備をお願いできるかな」
「かしこまりました」
サバスという執事に声をかけたのは美形の男だった。
当主様と呼ばれるぐらいだから、イケオジより美形の男の方が立場は上なのかもしれない。
「お客様、今からご準備しますのでこちらへお願いします」
俺が戸惑っていると、当主である美形の男は微笑んで頷いていた。
やはり顔が良いとちょっとした笑顔すら、破壊力抜群だった。
俺は執事に案内されるがまま部屋に入ると、執事は俺の前まで近づいてきた。
執事なのに
端正な顔立ちにがっちりとした体、髪は一つにまとめられている。
さっきも執事やメイドを見て思ったが、天国は顔立ちが良い人ばかりのようだ。
「湯浴みをしますのでお手伝いします」
それだけ言うと彼は俺を脱がしてきた。
優しく微笑む姿に見惚れて、いつのまにか服を脱がされていたことに戸惑う隙もなかった。
むしろこうやって色んな女をベッドに連れ込んでいるのだろうと思ってしまった。
恐るべしサバス!
それにしてもいつになったら湯浴みをするのだろうか。
服を脱がされてから、サバスは一時停止していた。
「サバスさん、大丈夫ですか?」
声をかけるとサバスは頬を少し赤く染めていた。
「あっ……いや、あまりにも素敵な体で興奮してしまった気持ちを抑えていました」
「へっ!?」
ド直球な言葉にまた俺の頭は思考停止してしまう。
さっきまでの紳士さはなくなり、どこか幼さを感じた。
「俺そんなにいい体はしていないですよ? 筋肉もないですし……」
俺の体はどこから見ても貧弱な体をしている。
これ以上痩せたら肋骨が浮かびそうなくらい細身な体型だ。
振られた影響で食事が喉を通らなかったからな。
「何を言っているんですか! こんな素敵な体を持っているではないですか」
サバスは人を褒めるのが得意なようだ。
さすが執事をやっているだけのことはある。
「ありがとうございます。サバスさんは褒め上手ですね」
「くっ……」
またサバスは一度停止しているようだった。
だが、そろそろ風呂に入っても良いだろうか。
段々と寒くなってきた。
「あのー、そろそろ湯浴み?をしてもいいですか?」
「あっ、失礼しました。すぐに案内いたします」
そろそろ寒さに限界がきた俺が再び声をかけるとサバスは元に戻っていた。
さすがは執事だな。
扉の奥には湯船が置いてあり、中には花びらとオイルが入っているのか良い匂いがしていた。
うん、全く俺のキャラじゃないな。
「ではお手伝いしますので湯浴みをしましょうか」
いつになったらサバスはこの部屋から出ていくのだろうか。
俺がジーッと見ていると、何かに気づいたのかサバスは近づきパンツに手をかけた。
「お手伝いしますね」
「ちょ……パンツは自分で脱ぎ……」
俺は必死に抵抗していたが、サバスに最後まで死守していたパンツをあっさりと脱がされてしまった。
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