第204話 耳の痛い話だね
オリエンスのツンデレ疑惑はさておき、鬼童丸はタナトスにショップ画面を見せてもらう。
○専用武装
・ビヨンドカオス専用武装:
・メディスタ専用武装:
・ダイダラボッチ専用武装:
・ベキュロス専用武装:
・ウルキュリア専用武装:
・ドラメット専用武装:
・ノーフェイス専用武装:
(待って。ビヨンドカオスとダイダラボッチの専用武装が変わってる)
新入りのドラメットとノーフェイスの専用武装が追加されているのは当然のこととして、ビヨンドカオスとダイダラボッチの専用武装が変化しているのは注目すべき点だ。
演算杖カルクはMP効率を高めてくれる杖で、ビヨンドカオスの消費するMPに無駄がないように調整してくれる。
オーバーキルになる時は本来消費するはずのMPで無駄な部分を節約し、逆に威力を増したい時は通常よりもMPを多く使ってアビリティを使えるようにする性能である。
そういった戦闘アシストもありがたいから、専用武装交換チケットの1枚目は演算杖カルクに使うことが決まった。
チケットが1枚消費されると同時に、ビヨンドカオスのロッドオブレッドソーサラーが演算杖カルクに交換された。
次に絶鬼刀サツマだが、敵を斬れば斬るだけ鋭くなって攻撃の威力が上がるだけでなく、斬った相手の頭に直接鬼の断末魔の叫びが届く。
敵にとって害悪だが、ダイダラボッチにとって間違いなくプラスの大太刀である。
これも専用武装交換チケットを使う価値ありと判断したため、鬼童丸は専用武装交換チケットの2枚目を絶鬼刀サツマに使った。
チケットが消費されると同時に、ダイダラボッチの専用武装が大妖刀ゴチェストから絶鬼刀サツマに交換された。
専用武装交換チケットを使い終わった後、鬼童丸はタナトスに訊ねてみる。
「タナトス、ヘルオブシディアンについて質問したい」
「…ヘルオブシディアンか。先程の戦いで使われたようだな。何が聞きたい?」
「ヘルオブシディアンってそもそもどうやってできんの? ほら、俺達は研究所を破壊した訳じゃん。でも、研究所でヘルオブシディアンは作られてなかったから、どうやって作られてるのか疑問が解決しなくてさ」
今のところ、ヘルオブシディアンを目視確認した時は必ず使った人間が殺されている。
ヘルオブシディアンの使用=死の等式が鬼童丸の中では成り立っているから、こんな危険物は根絶してしまいたいと思ってタナトスに訊ねたのだ。
「ヘルオブシディアンを作れるのは一定以上の力を持つ悪魔だけだ。人間の負の感情を基に地獄の気と混ぜ合わせて作ると聞いてる。あれを使えば、使った者は良くて感情が空になって放心状態になり、悪いと干からびたミイラみたいになる。しかも、使用者を餌としてマーキングして地獄の悪魔になりかけのアンデッドモンスターを呼び寄せるから、それを喰らって悪魔が誕生する最低の危険物と言えよう」
「じゃあ、ヘルオブシディアンによる被害を根絶するには、極論を言えば獄先派を根絶しないといけないってこと?」
「そういうことだ。なかなか難しいし歯痒いよ」
(参ったね。こりゃかなり時間がかかる問題だったか)
ここでこれ以上話していてもヘルオブシディアン対策は練られなさそうであり、時間もそろそろ正午になる頃合いだったから、鬼童丸は都庁に戻ってログアウトした。
ログアウトしてゴーグルを外したら、久遠はドラクールとリビングフォールン、ヨモミチボシに顔を覗き込まれていた。
「最近じゃ俺が召喚しなくても当たり前に外にいるよな」
「マスターに悪戯する可能性が高い者が多いので、その警戒に当たっているだけです」
「自分だってマスターにキスしてたのに棚上げは良くないと思うな~」
「スナック感覚の美味です」
ヨモミチボシがスナック感覚の美味と言ったのならば、ドラクールとリビングフォールンの軽いジャブの撃ち合いによるものだ。
とりあえず、久遠は召喚してほしいと念じて静かに待つアビスドライグを召喚する。
「
幼女サイズのアビスドライグが召喚されたら、ドラクール達を見上げた後に久遠の脚に抱き着く。
「拙者、早くマスターの守護悪魔になりたいでござる。頑張ってほしいでござる」
何をどう頑張ればそうなるかわからないが、アビスドライグだけ仲間外れな状況が続くのは可愛そうだから、久遠はしゃがんでアビスドライグと目線を合わせながら優しくその頭を撫でる。
「やれるだけやってみるから、程々に期待しててくれ」
部屋を出てテレビのスイッチを入れたら、久遠は昼食の準備を始める。
準備がほとんど終わって配膳しようかというタイミングになれば、桔梗と寧々もリビングに集まって来て、ヨモミチボシが大きくなっていることに気づく。
「ヨモミチボシまで大きくなってる」
「久遠、ヨモミチボシも守護悪魔になったの?」
「まあな。オリエンスのおかげでヨモミチボシも守護悪魔になれたんだ」
オリエンスのおかげと聞けば、桔梗も寧々も気分が穏やかではなくなる。
目のハイライトが消えてそのまま久遠に詰め寄る。
「久遠、着せたい服とかやりたいプレイとか言ってよ。なんでもしてあげるんだから」
「ねえ、久遠。オリエンスに浮気したの? 私という彼女がありながら?」
「「は?」」
「太ってしまわないか心配です」
(ヨモミチボシのおかげでマジで俺の胃は助かってるわ。褒めるとまた揉めるかもしれんから褒められないけど)
久遠が苦笑していたところ、テレビで放映されていたニュースで緊急速報が入る。
『ここで緊急速報です。先程、警察が記者会見にて国内で起きている不審死事件について発表しました。これはいずれもアンデッドモンスターの仕業であることが判明したそうです。』
キャスターがそう言うと画面が切り替わり、記者会見会場でのやり取りのVTRが流れる。
警察の偉い人に混ざり、特務零課の山上もその記者会見に参加していた。
記者会見において、不審死事件についてメインで説明しているのは山上だった。
本当にそんな証拠があったのかは怪しいが、発表の内容は理路整然としていた。
「デーモンズソフトと警察が口裏を合わせたか」
「その通り」
声が聞こえたと思ったら、真後ろにパイモンが立っていた。
相変わらず音もなく背後に立つものだから、久遠はジト目になる。
「デーモンズソフトが大勢に石を投げられる前にテコ入れしたのか。今日も1人箱入り娘が死んだだろうし」
「そうだね。UDSのプレイヤーが連続して死んでると公表すれば、危険な状態なのにデーモンズソフトを糾弾する者が出て来てしまう。それでは獄先派への対処で遅れてしまうからね。悪いが真実とは少し違う設定にしてあるよ」
悪魔の中に電子機器の操作ができる者がいて、プレイしているゲームを調整してダメージをプレイヤー本人にフィードバックしたという設定らしい。
そのような悪魔は複数いて、全ては倒せていないが何体か倒せていると山上が説明している。
これで捜査の進捗が0ならば何をしているんだと言われるかもしれないが、何体か倒していてその証拠も用意されれば記者達も大々的に批判できない。
何故なら、ただでさえ未知の出来事が続いている状況下でできるだけのことを行い、進捗もちゃんと報告しているからだ。
ここで何も成果を報告できなかったら叩くチャンスだけれど、デーモンズソフトが協力している以上、捜査が何も進んでいない演出なんてするはずない。
「それでも、何人かは何かに気づいて石を投げるだろうな。そして、デーモンズソフトがそれを中途半端に潰すから獄先派に利用されて箱入り娘みたいな奴が再び現れるんだ」
「耳の痛い話だね」
「箱入り娘は昨日、獄先派との戦いに参加しなかったプレイヤーだった。それで人任せにするような問題のある性格の持ち主なのはわかるが、何かしら戦わない奴等にも敵に寝返らないような措置を講じるべきだと思う」
「やはりそう言われるか。では、参戦せずに文句だけ言うプレイヤーはUDSに関する一切の記憶を抹消するとしよう。そうすれば、親人派の戦力は増えないが敵の戦力も増えないからね。後は鬼童丸達以外のプレイヤーも強化できるような策があれば良いのだが…」
久遠の提言を受け、パイモンは仕方あるまいと頷いて姿を消した。
パイモンがいなくなって昼食を取った後、久遠達はリアルで出動するレベルの問題が発生していないことを確認してからUDSにログインした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます