第203話 マスターには私がいます
チャレンジクエストをクリアしたところで、タナトスがファントムホークに乗って鬼童丸達の前にやって来た。
それからクレアこうのすに移動して拠点登録を行い、ホールに閉じ込められていたNPCを開放した。
オリエンスはその辺りから退屈だと言って自分で送還されており、対応していたのは鬼童丸とタナトスだけだ。
解放イベントをサラッと済ませたら、タナトスが鬼童丸に訊ねる。
「鬼童丸、オリエンスからのクエストで専用武装交換チケットを2枚手に入れただろう? 今すぐ使うか?」
「一旦10体目の従魔枠を
「良いだろう」
タナトスは鬼童丸なら
鬼童丸が所持しているアンデッドモンスターのカード一覧を調べてみれば、それに追加された
まずはノーライフドレイクとスケリトルドラゴン、バフォメットの組み合わせだ。
きたくぶちょーの体を乗っ取っていたバフォメットのカードは、そのまま使うにはなんとなく不気味だったからカードリストの中で塩漬けにしていたが、この機会に使うことにしたのだ。
素材に悪魔を含んだ
その結果として、ドラゴンの要素を兼ね備えた両性具有の悪魔であるドラメットが誕生した。
黄色いドレスアーマーで両性具有、紫色の肌と異なる点は目立つが、ドラゴンと悪魔が合体という点でドラクールに近い系統なのかもしれない。
それが理由なのか、ドラクールが無言で鬼童丸の両肩を掴んで顔を近づける。
「ドラクール?」
「マスターには私がいます」
「勿論わかってるさ。ただ、ドラクールが強くなり過ぎてUDSではドラクールを強くできなくなって来ただろ? それに、戦闘でも制限をかけられるようになったからその時の保険だよ。俺の中ではドラクールが右腕なのは変わりない」
「それならば良いんです」
右腕と言われたのに自分と似た従魔を
ちゃんと自分が鬼童丸の右腕だとわかったから、ドラクールは安堵したように微笑んで鬼童丸の両肩から手を退けた。
次の
この
その名前はノーフェイスであり、変身して他の存在になり切ったり他者のアビリティをコピーするトリッキーな従魔だ。
2体の従魔が誕生したところで、鬼童丸はタナトスに意見を求める。
「タナトス、今の俺の保有戦力を見てドラメットとノーフェイスのどっちを10体目の従魔枠に入れたら良いと思う?」
「ドラクールを戦わせられない時のことを考えたらドラメットだが、ノーフェイスも育てたら有用なのは間違いない。どちらでも鬼童丸の力になるのは間違いないが、即戦力という観点ならドラメットだろうな」
「わかった。じゃあ、10体目の枠にドラメットを採用」
『しょうがないわね』
ドラメットを10体目の従魔枠に採用すると宣言している途中で、鬼童丸の頭にオリエンスの声が直接響く。
それからすぐに、鬼童丸としては二度目のシステムメッセージが目の前に表示された。
『ヨモミチボシが自身の飢えを満たしてくれるならば守護悪魔になると条件を提示しました。提示された条件を受け入れますか?』
「え?」
『妾が従魔枠を1つ潰してるのは事実だし、さっきは楽しませてもらったからそのお礼よ。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと受け入れちゃいなさい』
「わかった。受け入れる」
『おめでとうございます。鬼童丸のヨモミチボシが守護悪魔に昇格しました』
あまりにも突然のことだったが、ヨモミチボシがドラクールやリビングフォールンと同様で守護悪魔に昇格した。
これにより、リアルでもUDSと同じだけの実力を発揮できるようになり、体のサイズもUDSと同じになる。
タナトスが予想外の展開にポカンとしている間、ヨモミチボシは鬼童丸の正面に立って恭しく頭を下げる。
「これから末永くよろしくお願いします」
「よろしく、ヨモミチボシ」
「…狡いでござる。拙者も早くマスターの守護悪魔になりたいでござる」
「貴女もきっと守護悪魔になれます。だって、私達のマスターは規格外のお方ですから」
自分だけが実体化できる中ではまだ従魔の枠から抜け出せていないため、アビスドライグが羨ましそうにヨモミチボシを見てそう言えば、ドラクールがアビスドライグのことを元気づけた。
鬼童丸の最初の守護悪魔である彼女は、鬼童丸ならば実体化した妹分全員を守護悪魔にできると本当に信じているのだ。
具体的な根拠は提示できていないのかもしれないが、鬼童丸が規格外なのは事実なのでアビスドライグも元気を出して鬼童丸に期待の眼差しを向けた。
それはそれとして、ヨモミチボシが従魔から守護悪魔になったことにより、従魔枠がもう1つ空いた。
したがって、鬼童丸はドラメットを9番目の枠にスライドし、ノーフェイスを10番目の従魔にした。
そして、ドラメットとノーフェイスのステータスを改めて確認し始める。
-----------------------------------------
種族:ドラメット Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,200/6,200 MP:6,000/6,000
STR:6,200(+200) VIT:6,000(+200)
DEX:6,000 AGI:6,000
INT:6,000 LUK:6,000
-----------------------------------------
アビリティ:【
【
【
装備:ドレイクハンマー
備考:なし
-----------------------------------------
-----------------------------------------
種族:ノーフェイス Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:6,000 VIT:6,000
DEX:6,200 AGI:6,200
INT:6,000 LUK:6,000
-----------------------------------------
アビリティ:【
【
【
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
(ドラメットは見た目以上にタフで、ノーフェイスはかなり癖が強いわ)
ドラメットとノーフェイスのステータスを確認し終えたところで、鬼童丸はそのように評価した。
ドラメットはドラクールと違って遠距離攻撃が【
基本的にはハンマーを振り回して戦う近中距離が得意な従魔だ。
それに対してノーフェイスは闇と氷の複合属性が使えることに加え、耐久力もあれば自動で回復もできる。
鬼童丸が実際に目にして驚いたのは【
敵の中にはダメージを受ける毎に変身して強くなる者もいたが、それを味方の従魔ができるようになるのだから驚いても仕方あるまい。
ここまで確認したところでタナトスが正気に戻る。
「やはり四大悪魔はなんでもありだな。守護悪魔を容易に増やすのだから」
「容易に見えるかもしれないけど、案外そう振舞ってるだけみたいだ。ヨモミチボシが守護悪魔になった時、オリエンスから感じていた力が弱まった。守護悪魔の昇格はそれだけ特別なんだろう」
「そうか。少し不謹慎に聞こえるかもしれないが、オリエンスの力が弱まったと聞いて少しだけホッとしたぞ。これでなんの気兼ねなくホイホイ守護悪魔を増やせるんだったら、規格外過ぎるからな」
「まあね。元中立派だったけど、意外とオリエンスは責任感の強い真面目な悪魔なのかもしれない。自分が俺の従魔になることで従魔の枠を潰してるから、ヨモミチボシを守護悪魔にしてくれたし」
『別に鬼童丸のためじゃないわ。妾の精神衛生を保つためよ』
聞き耳を立てていたオリエンスがそう反応するものだから、オリエンスのツンデレ疑惑が強まった。
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