第162話 久遠はロリコン。はっきりわかんだね
東京競馬場での第一陣との戦闘で勝ったのは良いけど、後片付けが必要なレベルで周辺が荒れてしまった。
原状復帰は結界担当のデーモンズソフトが対応してくれるらしく、久遠達は結界の外に出た。
その時、久遠の手の中に
(これは何か起きたと見て良さそうだ)
そんな風に考えていると、久遠達を競馬場に連れて来たデーモンズソフトの社員が久遠達に駆け寄る。
「東京タワーの方でも地獄の門が開いたようです。現在、警視庁特務零課のメンバーが現場にいるそうですが戦力的に心許なく、皆様にご助力いただきたいです。連戦になって恐縮ですが、こちらにも対応していただけますか?」
「構いません」
Noと言っていられる状況ではないから、久遠達は従魔達を送還してその社員のワゴン車に乗って東京タワーに向かう。
移動中の車内で徹が久遠に質問する。
「久遠、さっき競馬場での戦闘が終わった時にUDSのシステムメッセージみたいなのが聞こえた。あれって聞き間違いじゃないんだよな?」
「本当に起きたことだ。わざわざパイモンがシステムメッセージっぽくやってるんだよ」
「そこに拘るのか…」
「まあ、UDSに近い方が俺達にもわかりやすいって配慮だろ」
「なるほど」
久遠の言い分を聞いて徹は納得した。
先程はじっくり確認する余裕がなかったため、久遠は初見で効果がわからないアビリティを会得した従魔達と話す。
(アビスドライグ、【
『敵全体をビビらせて能力値を15%カットするのと同時に、普段の3倍の重力をかけて動きを鈍らせるでござるよ』
(なるほど。恐慌状態にはならなくなったけど、相手を弱らせた上に動きが目に見えて遅くなるのは良いね)
『その通りでござる。リビングフォールンの【
アビスドライグの言う通りで、リビングフォールンの【
使えるアビリティなのは間違いないし、アビリティの統合によってアビスドライグが空いた枠で【
雷属性の攻撃を目的としたアビリティでは出力が強過ぎるから、停電になった時に【
次に確認するのはヨモミチボシの2つのアビリティだ。
(ヨモミチボシ、【
『わかりました。【
(複数の状態異常を同時に与えるのは良いね。それじゃ【
『私が見つめた相手を飢餓状態にします。飢餓状態ではアビリティの発動が不完全になり、1割カットされるのです』
(腹が減って力が出せないってことか。理解した)
ヨモミチボシの扱える状態異常が増えることは良いことだから、久遠はこの強化についても喜んだ。
アビスドライグとヨモミチボシだけ質問されたのが不服らしく、リビングフォールンが久遠に話しかける。
『マスター、私にも構ってよ~。私だって新しいアビリティを手に入れたじゃんか~』
(強いアビリティなのは理解してるけど、どんな結果を齎すかわかってるからなぁ)
『酷~い! マスターが私のことを蔑ろにする~!』
『リビングフォールン、落ち着きなさい。マスターを困らせてはいけません』
リビングフォールンが大きな声を出せば、久遠の頭の中だけでそれが響くからはっきり言って煩い。
それを理解しているから、ドラクールはリビングフォールンに落ち着くよう注意した。
しかし、リビングフォールンはドラクールのように自制できないから、久遠はやれやれと苦笑する。
「
突然、久遠がリビングフォールンを膝の上に召喚したから、桔梗達は何があったのかと視線で訊ねる。
「マスターが私だけ召喚してくれた~。わ~い」
リビングフォールンは自分だけが召喚されたことを理解し、体の向きを反転させて久遠に抱き着き、そのまま頬擦りを始める。
当然のことながら、久遠に甘えるリビングフォールンを見て桔梗と寧々の目からハイライトが消える。
「ねえ、久遠。そんな雌よりも私のことを抱っこしてよ」
「久遠、彼女の私の前で浮気する気なの?」
「久遠はロリコン。はっきりわかんだね」
「誤解するな。リビングフォールンが拗ねたから、気分転換をさせてやろうと召喚しただけだ」
桔梗と寧々のヤンデレムーブも困るが、とても良い笑顔で自分をロリコン認定する徹に対して久遠は特に誤解しないでくれと訴えた。
これはあくまでリビングフォールンへの埋め合わせであり、自分はロリコンではないと声を大にしたいが車内でそんなこともできないから、久遠は静かに訂正した訳である。
そんな久遠の気持ちを考えず、ご機嫌なリビングフォールンはヤンデレ2人にマウントを取り始める。
「こういうことなんだよこういうこと~。やっぱりマスターは面倒な女より私を選んだんだね~」
「「は?」」
『実に美味ですね』
桔梗と寧々からのヘイトを察知し、ヨモミチボシの嬉しそうな声が久遠の脳内に響く。
これは不味いと判断し、久遠はリビングフォールンを送還した。
「
「マ、マスター?」
突然自分が膝の上に召喚されたことに戸惑うドラクールに対し、久遠はちゃんと理由を説明する。
「ドラクールのことをちゃんと労ってあげられなかったからな。それに、何かあった時の即応力でドラクールの右に出る者はいないし」
「なるほど、わかりました。マスターのことは私が必ずお守りします」
ドラクールは久遠が自分のことを考えてくれたことが嬉しくて頬を赤く染めたが、すぐに気持ちを切り替えていつもの優等生なドラクールに戻った。
絵面で判断するならば、はしゃぐ幼女を抱っこする青年男性から優等生な幼女を抱っこする青年男性に変わっただけだが、それに対して寧々は一時休戦して桔梗と視線を合わせて相談する。
「どう思う?」
「リビングフォールンよりマシだけど、最近のドラクールからは久遠への忠誠以外の感情も感じる」
ジト目を向けられたドラクールは、2人の言葉に慌てて応じる。
「ち、違います! 私はマスターをお慕いしておりますが、リビングフォールンのように子供っぽくマスターに甘えたいとかそういう訳ではありません!」
『子供っぽくないもん!』
ドラクールの弁明にリビングフォールンが抗議すれば、内でも外でも騒がしくなって久遠は困ったように笑うしかない。
その一連の流れを見て徹が悔しがる。
「どうして現場にポップコーンとコーラがないんだ」
「現場にポップコーンとコーラがある訳ねえだろ」
ふざけたことを言ってのける徹に久遠は冷静にツッコミを入れた。
そうしている内に久遠達を乗せたワゴン車は東京タワーに到着し、運転席にいるデーモンズソフトの社員が久遠達に告げる。
「東京タワーに到着しました。こちらは競馬場と違って人員が足りず結界を展開できておりません。後程応援が来ますが、それまでの間は結界なしです」
「それって思いっきり現世と地獄の次元融合が大っぴらになるんじゃ」
「戦場さん、仕方ないんですよ。完全に獄先派の侵攻を隠し続けられるリソースはないんですから」
寧々が懸念を口にすれば、社員は悲しそうに答える。
そんな寧々に対して久遠が声をかける。
「ないものねだりをしても意味がない。とりあえず、今できることだけやろうぜ」
「そうだね」
久遠達はワゴン車を降り、獄先派のアンデッドモンスターの混成集団と戦う特務零課と合流する。
特務零課の実体化できる戦力は
「ん? なんでリッチディーラー以外の悪魔が味方として戦ってるんだ?」
「鬼灯さん、応援に来ていただきありがとうございます。あれは利根川が口説き落として従魔になったアイナスです。中立派の残党だったのですが、ギャンブルで意気投合して従魔になったそうで、元々それなりの力を持っていたからなのか実体化しました」
「「「「「えぇ…」」」」」
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