第146話 ギャンブラーの風上に置けない屑ね。恥を知りなさい
再び【
現時点で坂東市内でアンデッドモンスターが群れているのは、坂東市観光交流センターだけだった。
(愉悦勢なら人気のない所にいても愉悦を味わえない。いるとしたらあそこかね?)
愉悦を味わうにはその対象がいなければならない。
そう考えれば、鬼童丸は次の目的地を坂東市観光交流センターに定めて向かう。
ドラクールが坂東市観光交流センターの前に着陸して悪魔形態に戻ってから、建物の前でトロールゾンビとコボルトゾンビ、オークゾンビ、ゴブリンゾンビが1体ずつ集まり、ロシアンルーレットで勝負しているのを見つける。
「ゾンビがロシアンルーレットってのも変な感じがするな」
「仮に弾丸が当たっても元々死んでるから、こいつ等にとってロシアンルーレットなんて遊びみたいなものなんだろうね」
「ゾンビ達にギャンブルを教えた元凶は、きっと建物の中にいるはず。行ってみるか?」
「勿論」
鬼童丸達が坂東市観光交流センターの中に入ったら、そこには囚人服を着た悪魔がいた。
鬼童丸と宵闇ヤミの姿を目にして、一瞬だけ目を大きく見開いたがすぐに元通りになった。
「これはこれは中立派解体の直接的な原因の鬼童丸じゃないか」
「ちょっと、ヤミのことを無視しないでくれる?」
囚人服を着た悪魔は鬼童丸のことしか見ていなかったから、宵闇ヤミは自分が無視されたことにムッとして割り込んだ。
その宵闇ヤミのリアクションが嗜虐心を刺激したらしく、囚人服を着た悪魔はニッコリと笑みを浮かべる。
「貴様はえーっと、鬼童丸の腰巾着?」
「そっちこそ敗残兵のくせに生意気じゃない」
「敗残兵とは言ってくれるじゃないか。私の名前はノジーク。まずは貴様から潰してやる覚えておけ」
ノジークと名乗った囚人服を着た悪魔が指パッチンした時、坂東市観光交流センターの内装が洋風ファンタジーに出て来る酒場に変化した。
酒場の真ん中にはトロールゾンビとコボルトゾンビ、オークゾンビ、ゴブリンゾンビが円卓に座っておりいずれも気を失って机に突っ伏している。
「なんのつもり?」
「見てわからないのか? 今からこいつ等の体を借りてロシアンルーレットをするんだよ」
「ゾンビの体を借りてとか言ってるけど、ノジークの用意したゾンビの体に入ったら外に出られなくなるとかありそうだもの。嫌に決まってるでしょ」
「フン、馬鹿ではなかったか。ならば、貴様の所有するアンデッドのカードを貴様の代わりに選べば良かろう」
そう言いながらノジークが指パッチンをした瞬間、4体のゾンビがぐしゃっと潰れて消えた。
それと同時に鬼童丸と宵闇ヤミの視界に、従魔を含めたカード一覧が映る。
(あぁ、俺もやっぱりやるのね)
言い合いをしているのは宵闇ヤミとノジークだが、鬼童丸もこの場にいるから当然巻き込まれるようだ。
というよりも、ノジークにとっては鬼童丸の方がターゲットだったから、宵闇ヤミに噛み付かれることの方がイレギュラーなのだろう。
「ドラクール、頼みがある」
「なんでしょうか?」
ノジークにわからないようサインで合図したら、ドラクールはわかったという意思表示をするべく頷いた。
さて、ロシアンルーレットをするということは、使用するアンデッドモンスターをロストする可能性がある。
そう考えると
結果として、鬼童丸が選択したのはアビスドライグであり、宵闇ヤミは安全策でリビングロイヤルガードを選択した。
アビスドライグを鬼童丸が選んだ訳だが、アビスドライグに経験値を獲得させたかったこともあるけれど、鬼童丸が身代わり人形を所有しているから一度だけなら死んでもそれがなかったことになるため、カードをロスせずに済むと判断してのことだ。
この瞬間、鬼童丸の意識はアビスドライグに乗り移り、宵闇ヤミの意識もリビングロイヤルガードに乗り移った。
それに対して、ノジークはアンデッドモンスターを用意せずに自身がロイヤルルーレットに参加することにしていた。
「別に私自身が参加しちゃいけない決まりはない。そうだろう?」
「まあな」
「大した自信ね。最初から銃弾で撃ち抜かれれば良いんだわ」
ロシアンルーレットのルールは簡単であり、6発撃てるリボルバー式の拳銃に1発分の弾丸を込め、額に当てて引き金を引く。
最大で2ターンしかかからないから、あっという間に決着がつくだろう。
先程までゾンビ達がいた円卓に鬼童丸のアビスドライグと宵闇ヤミのリビングロイヤルガード、ノジークが三つ巴の位置で座る。
テーブルの上で拳銃をルーレットの要領で回転させ、止まった時に銃口が向いていた者から時計回りに引き金を引く。
拳銃が止まった時に銃口が向いていたのは鬼童丸だから、鬼童丸、宵闇ヤミ、ノジークの順番で引き金を引いていくことになる。
躊躇っていても仕方ないから、鬼童丸はアビスドライグの手でスッと拳銃を掴み、リボルバーを適当に回してから引き金を引く。
カチャと空撃ちした音が聞こえ、拳銃は宵闇ヤミが宿るリビングロイヤルガードに渡される。
「鬼童丸、手を握っててほしいな」
「アビスドライグの手だけど良いの? アビスドライグとリビングロイヤルガードが手を握ってる絵面って微妙だと思うけど」
「もう、雰囲気をわざと壊さないでよ!」
語気を強めるのと同時に引き金を引くが、リビングロイヤルガードに銃弾は当たっていない。
拳銃はノジークに渡される。
「なかなか運が良いみたいじゃないか。だが、それは私とて同じこと」
カチャと音がしてノジークも無事にターンを終えたことがわかる。
そして、気障に拳銃を体の周りでくるくると回してから鬼童丸が宿るアビスドライグに渡す。
その時、勝負をじっと観察していたドラクールが口を開く。
「イカサマです」
「イカサマ? なんのことだ?」
惚けるノジークに対して鬼童丸が説明する。
「この勝負が始まる前、俺はドラクールにノジークがイカサマをしてないか監視するように命じた。そして、ノジークはドラクールが監視してる中でイカサマをしてしまった。そういうことだ」
「その通りです。ノジーク、囚人服の中にすり替えた拳銃がありますね。その拳銃を出しなさい」
その言葉は【
それを見て宵闇ヤミがノジークを軽蔑する。
「ギャンブラーの風上に置けない屑ね。恥を知りなさい」
「黙れ! 貴様等のせいで私の悠々自適な愉悦ライフがぐちゃぐちゃにされたんだ!」
ノジークは逆ギレするが、鬼童丸はそんなノジークにペナルティを科す。
「知ってるか? アマイモンは俺達にイカサマを見破られた時に潔くペナルティに応じたぞ。それに対してお前はどうだ? 喚き立てて逆ギレか? 情けないな」
「煩い煩い煩い! ここでくたばれ!」
「ドラクール、【
戦闘が解禁されたことを知って鬼童丸が素早く指示すれば、ドラクールの【
ダウン状態になっているため、追撃ボタンが表示されたから鬼童丸はそれを押す。
追撃でノジークのHPが0になり、ロシアンルーレットで借りていたアビスドライグの体から鬼童丸の意識は自分のキャラクターに戻された。
宵闇ヤミも自分の体に意識が戻されたようだ。
それと同時にシステムメッセージが鬼童丸の耳に届く。
『鬼童丸が称号<坂東市長>を獲得し、称号<鏖殺侯爵>に吸収されると共に坂東市が冥開に吸収されました』
『ドラクールがLv66からLv70まで成長しました』
『ドラクールの【
『ドラクールが【
『アビスドライグがLv36からLv42まで成長しました』
『ノジークを1枚手に入れました』
『坂東市にいる野生のアンデッドモンスターが全滅したことにより、坂東市全体が安全地帯になりました』
『安全じゃない近隣地域のNPCが避難して来るようになります』
『鬼童丸と宵闇ヤミがプレイしたことにより、全プレイヤーのミニゲームにロシアンルーレットが解禁されました』
(喋る悪魔ってUDSで倒すとカード化するのか。知らなかった)
実在する者がゲームに介入した結果、ゲームのルールに従って倒されたらカードになるとわかって鬼童丸は苦笑した。
それはそれとして、ドラクールの新しいアビリティの方が重要だからそちらを確認する。
【
しかも、その腕は使用者と同じ能力値だから、【
不可視の攻撃や不可視の防御に使えると考えれば、かなり自由度の高い優良アビリティと言えよう。
次に【
ノジークを倒して坂東市を奪還できたため、建物内に隠れていた生存者達と合流してからタナトスとヘカテーがやって来て坂東市観光交流センターに転移魔法陣を設置し、ノジークの懸賞金を鬼童丸達に支払った。
コラボ配信としてやるべきことは終わったから、今日の配信はここまでということになった。
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