第143話 人気者は辛いね
夕食や風呂等を済ませてから、久遠はUDSに鬼童丸としてログインした。
宵闇ヤミとのコラボ配信までまだ時間があるから、生産系デイリークエストを済ませたところで、久遠は都庁にいたタナトスを見つけて話しかけに行く。
「タナトス、丁度良かった」
「鬼童丸か。アリオクに襲撃されて返り討ちにしたと聞いたが大丈夫か?」
「人気者は辛いね」
「そんな口が利けるなら大丈夫そうだな。それはそれとして、レンタルタワー攻略戦も優勝したと聞いた。よくやったな」
タナトスは弟子の鬼童丸が新人戦に引き続き、レンタルタワー攻略戦でも優勝したことを褒めた。
レンタルタワー攻略戦では大罪武装を使うドラクール達が参戦していないから、優勝したのは純粋に鬼童丸の力量によるものだと言える。
イベントで大罪武装を使う従魔さえいなければ鬼童丸を倒せると思っていたプレイヤーはいたかもしれないが、その幻想は打ち砕かれた訳だ。
「ありがとう。予想はしてたけど、優勝したらレンタル従魔を貰えるんだな。
「私も良い読みだと思ったよ。それにこの副賞も親人派の戦力が上がって、もう解体されたも同然の中立派の戦力をこちらに引き抜けるから丁度良いんだ。早速交換するか?」
「交換する」
そう言って鬼童丸はレンタル従魔受領チケットを2枚タナトスに渡し、その代わりにハルキュリオスとヨモツゼッキのカードを入手した。
優勝の副賞はまだ残っているから、タナトスは鬼童丸にこのまま訊ねる。
「専用武装交換チケットも使うか?」
「それはちょっと待ってほしい。交換するのは
「そうか」
大罪武装がなくなった今、七つの大罪と八つの枢要罪の関連性から憂鬱と虚飾を司る武器があるらしいことはわかったが、今のままではまだその専用武装が手に入らないと考えて鬼童丸は先に
ハルキュリオスとヨモツゼッキを手に入れたことで、鬼童丸の従魔の中に融合できる者が見つかった。
1つ目の組み合わせは、アビスライダーとクエイクドラゴンゾンビ、ヨモツゼッキの3体だ。
早速だが
光が消えて現れたアンデッドモンスターは、心臓にコアがある黒甲冑龍人と呼ぶべき見た目だった。
(アビスドライグか。ライダーじゃなくなったんだな)
今までは何かしらに乗っていたけれども、今は騎乗する存在がいなくなったからライダーじゃないのは間違いない。
とりあえず、鬼童丸はアビスドライグのステータスを確かめてみる。
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種族:アビスドライグ Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:6,200(+400) VIT:6,200(+400)
DEX:6,000 AGI:6,000
INT:6,000 LUK:6,000
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アビリティ:【
【
【
装備:ヨモツドラゴンアーマー
備考:なし
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(残念。憂鬱も虚飾も駄目だったか。惜しい感じはするんだけど)
初見のアビリティは【
【
【
しかも、負のエネルギーを纏わせて斬撃を放つから、ちゃっかり霊体のアンデッドモンスターにも命中するようになっている。
絶縁槍カイシャクだが、ダメージを与えた者は10秒間HPを回復できなくなる効果を持ち、ダメージを連続して与えた場合は最後にダメージを与えたタイミングから10秒がカウントされる。
回復阻害の武器は地味に強いから、この先でも役立ってくれることだろう。
1つ目の組み合わせの
今度はベガイラズとジェリーレイス、ハルキュリオスの組み合わせで
先程と同様に眩しい光が生じて3体のアンデッドモンスターのシルエットが重なり、光が収まった時に現れたアンデッドモンスターは首に2匹の蛇を巻いて両手にグローブをした女吸血鬼と呼ぶべき見た目だった。
加えて言うならば、顔や胸元、腕に入れ墨が入っており、鬼童丸の従魔にしてはやんちゃな印象もある。
(ベキュロス。また女型従魔か。ヤミが過剰に反応しそうだ)
そう思いつつ、鬼童丸はベキュロスのステータスをチェックし始める。
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種族:ベキュロス Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:6,200 VIT:6,200
DEX:6,000(+400) AGI:6,000
INT:6,000(+400) LUK:6,000
-----------------------------------------
アビリティ:【
【
【
装備:ピュトングローブ
備考:なし
-----------------------------------------
(芸達者な従魔が誕生したもんだ)
多様な属性の攻撃を使えるベキュロスだから、鬼童丸はその誕生に感心した。
ピュトングローブは攻撃によって与えたダメージの5%分だけ敵にダメージが追加されるようになったから、
2体の新しい従魔が誕生し、タナトスはほうと小さく呟く。
「ドラクール達が戦えなくても戦力は十分そうだな」
「一応、縛りプレイを強要された時の戦力は着々と揃えられてると自負してる」
「それはそうだ。現実に持ち込める従魔になる可能性もあるから、その調子で頑張ると良い」
「そうするよ。これからコラボ配信に参加するからまたな」
タナトスと別れた後、鬼童丸はアビスドライグとベキュロスを送還してから宵闇ヤミと合流する。
午後8時になって宵闇ヤミの配信が始まり、宵闇ヤミがヤミんちゅ達を待たせずに挨拶をする。
「こんやみ~。レンタルタワー攻略戦が4位で終わって悔しい悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す。そして~?」
「どうも、レンタルタワー攻略戦も優勝した鬼童丸だ。よろしく」
そんな挨拶を鬼童丸がすれば、いつもなら宵闇ヤミが許せないとコメントするはずなのに、今は普段と違って鬼童丸に近づくとスンスンと臭いを嗅ぎ始める。
「雌だ。新しい雌の臭いがする」
そう断言した宵闇ヤミの目からハイライトは消えていた。
「ヤミ、落ち着いてイベントの報酬で獲得したアンデッドモンスターを融合したんだ。数としては変わってないんだし許容範囲だろ? それと、ヤミは昨日手に入れたレンタル従魔受領チケットを使ったか?」
「…使った。4位は1枚しか貰えなかったけど、レンタル従魔受領チケットを貰って配信前に使ったよ」
「どの従魔を貰ったんだ?」
この時には宵闇ヤミの目のハイライトも元通りになっており、心の中でホッとした鬼童丸は宵闇ヤミに質問して会話の主導権を握る。
そうすることで、宵闇ヤミのヤンデレムーブを強制終了したのである。
「ヤミはフリーメズを貰って
宵闇ヤミが鬼童丸の質問から派生して新しい従魔をお披露目する。
フリジブリルはグラッジブリルとフリーメズを
「ヤミが新従魔のお披露目をしたんだもの。当然、鬼童丸も新従魔のお披露目をしてくれるよね? ヤミの知らない雌なんて認めないんだから」
「あっ、はい。
受けた圧の強さが異常だったため、鬼童丸はおとなしく新しく誕生した従魔のお披露目を行う。
アビスライダーがアビスドライグになっていることに加え、ベガイラズもベキュロスになっているのを見て、鬼童丸がハルキュリオスとヨモツゼッキを貰ったことを察し、宵闇ヤミが自分の新しい融合アンデッドお披露目をしたのなら鬼童丸もその後に続くだろうと判断したのだが、まさにその通りの展開である。
ちなみに、コメント欄のヤミんちゅ達はアビスドライグがお気に入りなのか、アビスドライグを賞賛する声が多かった。
まだコラボ配信はオープニングの挨拶で中断されたままだったから、宵闇ヤミは咳払いをしてここから仕切り直すのだった。
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