第142話 ん、今日も憎悪が美味
キレるアリオクはそのままキレさせておけば、ヨモミチボシの【
「これでも喰らえ!」
「無駄です」
アリオクは【
頭に血が上ったせいで有効な攻撃を使えないアリオクを見て、久遠は狙い通りだとほくそ笑みながらリビングフォールンとヨモミチボシに指示を出す。
「リビングフォールンは【
「はいは~い」
「わかりました」
久遠の指示に従ってリビングフォールンが踊れば、味方にバフがかかってアリオクにデバフがかかる。
それで動きが鈍ったから、アリオクはヨモミチボシの【
沈黙状態になってしまえば、アビリティを使えないからアリオクはしまったという表情になる。
ニヤリと笑った久遠がドラクールに指示を出す。
「ドラクール、【
「お任せ下さい。反撃の時間です」
動きが鈍ってアビリティの使えないアリオクの動きを捉えるのは容易いから、ドラクールはアリオクの脳天に
轟音と共にアリオクがUDSならば追撃ボタンが表示されるようなダウン状態に陥れば、久遠は当然のことながら容赦なく追撃の指示を出す。
「ドラクールは【
ドラクールとリビングフォールン、ヨモミチボシが連続して攻撃を叩き込めば、アリオクは力尽きてピクリとも動かなくなっていた。
『ドラクールがLv62からLv64に成長しました』
『リビングフォールンがLv54からLv56に成長しました』
『ヨモミチボシがLv52からLv54に成長しました』
(パイモンがシステムメッセージ代わりをするのかよ。つーか、アリオク弱いな)
パイモンがシステムメッセージの真似をしたため、久遠はゲームの再現をするパイモンに苦笑すると同時に、奇襲して来たアリオクを完封してしまったからアリオクは大したことなかったとも思った。
『鬼童丸、アリオクのことを弱いと思ったね? それは鬼童丸が強くなったからそう感じたんだ。それとさっきのアナウンス通り、ドラクール達のレベルアップはゲームに反映するから安心して良いよ』
(そんなことできんの? 現実とゲームの境界がうやむやになってないか?)
『獄先派が手順を踏まずにガンガン地獄の門を開いたからだね。今後はもっと地獄からの干渉が増えるから鬼童丸達は気を付けた方が良いよ』
(親人派の代表なんだからなんとかしてくれよ)
久遠の言い分は地球を代表するものとしてもっともである。
獄先派と対立しているのはパイモン率いる親人派なのだから、この状況をどうにかしてほしいと思うのは自然なことだ。
『その指摘は当然だけどちょっと難しいかな。今、地獄では親人派も獄先派も中立派の懐柔で大忙しなんだ。アリオクが鬼童丸に会いに行ったのは、性格的に中立派の懐柔に向かないからさ。我の立場からすれば、鬼童丸のおかげで最小限の労力で獄先派の先兵を始末出来てありがたい限りだよ』
(利用されたのはムッとするけど置いておこう。中立派の懐柔ってオリエンスとアマイモンを親人派に引き入れるってこと?)
枝葉を口説いたって大勢に影響は与えられないから、中立派の懐柔と言うのであれば共同代表であるオリエンスとアマイモンを口説くぐらいやらなければ駄目だろう。
そのように判断して久遠が念じれば、パイモンはそれを肯定する。
『そうだ。それが狙いだったが、我の勧誘に応じたのはオリエンスだけだ。アマイモンはアリトンの勧誘に乗ってしまった。こうなってしまえば、オリエンス派は親人派でアマイモン派は獄先派に合流するから中立派は完全に分断されたね。これは鬼童丸のおかげとも言えるし、鬼童丸のせいとも言える』
(オリエンスが俺のことを気に入って親人派に合流したが、俺と戦ってる途中で邪魔されたアマイモンは戦うために敵に回ったとでも?)
『よくわかってるじゃないか。正解だ。アマイモンが獄先派に入ってしまったけれど、アンデッドガチャに関する全てはアマイモンが獄先派に行く前に親人派が回収したからUDSで継続してガチャができるよ。安心してくれ。それとアリオクの死体は我が回収させてもらおう』
(ガチャはそんなにやらんから俺は特に影響ないんだわ)
桔梗なら朗報だと思うかもしれないが、久遠としては特にそこまでガチャに思い入れがないのでアンデッドガチャが続けてあろうとなかろうとどうでも良かった。
アリオクの死体がパイモンに回収されて消えるのを見ていたら、心配そうな表情の寧々が久遠の袖を引っ張って声をかける。
「久遠、大丈夫? アリオクを倒してからずっと固まってるけど…」
「ん? あぁ、心配かけてごめん。ちょっとパイモンとテレパシーで会話をしてたんだ」
「パイモンって親人派の代表だよね? そんな悪魔とテレパシーで話してたの?」
「色々あってUDSじゃ<パイモンの孫弟子>なんて称号も貰ってるから、その絡みで喋れるんだ」
その説明を聞いて寧々は悔しそうな表情をする。
自分は頑張ってレンタルタワー攻略戦で新人戦の時より順位を1つ上げたのに、久遠は1位をキープするどころかその上の次元で活動していたと知ったからだ。
久遠と寧々が話している内に世界に色が戻り、周囲の時が進み始めた。
この場に留まっていれば、アリオクが投げつけた鉄骨のせいで集まった野次馬に写真を撮られてYellに投稿されかねない。
それはなんとしても避けたい事態だから、久遠と寧々はそれぞれの従魔を送還してさっさとマンションに移動した。
久遠が帰宅すると、肩にヴィラを乗せたまま桔梗が玄関に駆けつけて久遠に抱き着く。
「久遠、大丈夫だった? コネクトの返信くれなかったから心配してたんだよ? 今、近所で工事現場で鉄骨を投げる不審人物が現れたってニュースになってるの」
「あぁ、俺と寧々さんはその事件に思いっきり巻き込まれてた」
「え? じゃあ、インタビューで鉄骨を投げられてた通行人がいたって久遠と寧々さんだったの?」
「そうそう。ついでに言えば、犯人は獄先派のアリオクだった」
鉄骨を投げ飛ばせるなんて犯人は普通の人間とは思っていたが、まさか悪魔が久遠のことを直接襲っていたとは考えていなかった。
だからこそ、桔梗は久遠の体をあちこち触って怪我がないか確かめる。
「本当に怪我はしてないんだよね?」
「大丈夫だって。ドラクール達のおかげで倒せたから。
家に帰って来たから周りの目を気にする必要はないので、久遠はドラクール達を召喚する。
ドラクール達のおかげで久遠が無事だと教えてもらったから、桔梗はドラクール達に礼を言う。
「ドラクール、リビングフォールン、ヨモミチボシ、久遠を守ってくれてありがとう」
「マスターをお守りするのは従魔として当然の勤めですが、礼は受け取っておきましょう」
「フッフッフ。私はマスターの役に立ったもんね~。あれれ~? またしても何もしてない誰かさんがいるよ~?」
「ん、今日も憎悪が美味」
リビングフォールンが桔梗を煽れば、桔梗は静かに目を見開いて圧をかけていた。
当然だがその時に憎悪する感情が桔梗から溢れ出しており、ヨモミチボシはそれを喰らって満足そうにしている。
軽くカオスな状況になっているが、久遠はこれ以上放置していると桔梗がヴィラに命じてリビングフォールンを攻撃するのではないかと考え、そうならないようにリビングフォールンを注意する。
「リビングフォールン、桔梗さんを煽るんじゃない」
「は~い。我慢するからマスターが構って~」
「リビングフォールン、マスターを困らせてはいけません」
「やれやれ。ドラクールはそうやって良い子ぶるんだから」
「良い子ぶってるつもりはありません。リビングフォールンと違って理性があるだけです」
ツンとドラクールが言えば、今度はリビングフォールンが言い返そうとすると思ったため、久遠はドラクールとリビングフォールンの頭を同時に撫でる。
「はい、そこまでだ。ドラクールはもう少し甘えても良いぞ。リビングフォールンは逆にもう少しおとなしくしような」
「かしこまりました」
「そんなぁ…」
ドラクールは甘えて良いと言われて頬が少しだけ緩んでおり、それとは対照的にリビングフォールンはもっと甘やしてほしいからしょんぼりしていた。
ドラクールとリビングフォールンの後ろでヨモミチボシが順番待ちをしていたから、久遠はちゃんとヨモミチボシの頭も撫でた。
桔梗もその後ろに並んで物欲しそうな目で見ていたため、久遠は桔梗の頭も撫でてからリビングに移動した。
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