第140話 読みが当たったか。ありがたく頂戴する

 距離を詰めて来るヘルデスコアに対し、鬼童丸はレンタル従魔達に対応させる。


「ハルキジャミデスは【付与領域エンチャントフィールド】を使え。それから、ヨモツイクサは【威圧空間プレッシャースペース】だ。続いてフリーメズは【青霊氷結ブルーフリーズ】で凍えさせてしまえ」


 ハルキジャミデスの【付与領域エンチャントフィールド】で状態異常のアビリティの効力を増すようにしたら、ヨモツイクサの【威圧空間プレッシャースペース】でヘルデスコアの動きを鈍らせる。


 動きが鈍ったところでフリーメズの【青霊氷結ブルーフリーズ】が命中し、ヘルデスコアの体が青い霊の触れた箇所から凍えていく。


 ところが、ヘルデスコアは様々な骨で構成される外殻をパージして、骨の中に隠れていた正体を現す。


 (剥き出しの心臓? 気持ち悪いな)


 ヘルデスコアが隠していた正体とは、剥き出しになった赤黒く巨大な心臓だった。


 アンデッドモンスターのくせに脈動しており、まるで生きているかのように見える。


「ダンピール、【暗黒砲ダークネスバースト】で打ち砕け」


 氷結状態にならずに済んだとしても、【威圧空間プレッシャースペース】によってヘルデスコアの動きは鈍いままだから、鬼童丸はダンピールに攻撃を命じた。


 ヘルデスコアはダンピールの【暗黒砲ダークネスバースト】で体に大穴が開き、そこから派手に血をぶちまけた。


 これで倒せたのなら話は簡単だが、【自動再生オートリジェネ】で傷が治る上にぶちまけた血が燃え始めて凍えた骨の外殻を溶かしていく。


 これは【血液炎上ブラッドブレイズ】というパッシブアビリティで、血液を燃やして血液に触れた者を攻撃する。


 つまり、ヘルデスコアを攻撃して血に触れようものなら火傷になるのは間違いない。


 ヘルデスコアは【骨操作ボーンコントロール】を発動して辺りに散らばった全ての骨を最初と違った形に纏い、電動鋸のような外見に変化した。


 しかも、ご丁寧に骨でギザギザな歯を再現しており、その歯を回転させて再現度を高めている。


 鬼童丸は今の状態なら血に触れることもないと判断し、グレイヴオーガに指示を出す。


「グレイヴオーガ、【破壊打撃デストロイストライク】で骨の鎧を吹き飛ばせ」


 グレイヴオーガの攻撃でヘルデスコアの本体を守る骨が砕かれ、その中身が露出した。


「ハルキジャミデスは剥き出しの部分に【出血針雨ブリードレイン】」


 針の雨がヘルデスコアの本体に命中して出血状態になり、ドバドバと血が流れては燃え上がる。


「ヨモツイクサ、【破壊斬撃デストロイスラッシュ】で傷口を広げろ。フリーメズは【破壊踏撃デストロイスタンプ】だ」


 ヨモツイクサの攻撃で派手に出血し、フリーメズの攻撃で闘技場の地面が罅割れて炎が穴の中に流れ込めば地上の足場が増える。


「ダンピール、【暗黒砲ダークネスバースト】」


 ダンピールの攻撃により【自動再生オートリジェネ】で再生する血液の量よりも失う量の方が多く、弱っているヘルデスコアがダウン状態になる。


 残りHPも出血の効果でガリガリ削られたこともあって残り3割を切っており、鬼童丸が追撃ボタンを押せば全てのレンタル従魔によってヘルデスコアを袋叩きにした。


 HPが尽きてヘルデスコアは倒れてカードに変わった。


『ダンピールがLv57からLv75(MAX)まで成長しました』


『ダンピールがハルキジャミデスと血に関するアビリティを使用するアンデッドモンスターを倒したため、ダンピールがハルキュラに特殊進化しました』


『ハルキュラの【暗黒砲ダークネスバースト】が【深淵砲アビスバースト】に上書きされました』


『ヨモツイクサがLv55からLv73まで成長しました』


『ヨモツイクサの【威圧空間プレッシャースペース】が【威圧拘束プレッシャーバインド】に上書きされました』


『グレイヴオーガがLv50からLv70まで成長しました』


『グレイヴオーガの【罪業重力カルマグラビティ】が【罪業爆発カルマエクスプロージョン】に上書きされました』


『フリーメズがLv48からLv68まで成長しました』


『フリーメズの【青霊氷結ブルーフリーズ】が【青霊粉砕ブルークラッシュ】に上書きされました』


『ハルキジャミデスがLv1からLv30まで成長しました』


『ハルキジャミデスの【付与領域エンチャントフィールド】が【呪言領域カースフィールド】に上書きされました』


『ヘルデスコアを1枚手に入れました』


 5階に続く階段に繋がる通路が通れるようになったから、鬼童丸はそのまま通路に進む。


 その直後に背後で鉄格子が降りたことから、自分以外のプレイヤーが4階に辿り着いた時はヘルデスコアとの戦闘になることを察した。


 (ちょっと待てよ。報酬でレンタル従魔を貰う可能性ってあるか?)


 中立派のリソースを親人派のものにするべく、レンタルタワー攻略戦の報酬として自分がレンタル従魔のカードを貰えるのではないかと鬼童丸は考えた。


 幸いにも後ろからまだ誰も来ていないので、融合フュージョンする時間はあると判断して融合フュージョン可能な組み合わせをチェックする。


 その結果、ハルキュラとフリーメズ、ハルキジャミデスの組み合わせとヨモツイクサとグレイヴオーガ、ヘルデスコアの組み合わせはそれぞれ融合フュージョンできるとわかった。


 それぞれ融合してみると、前者の組み合わせによってハルキュリオスが誕生し、後者の組み合わせでヨモツゼッキが誕生した。


 ハルキュリオスは蛇腹剣を装備した青白い吸血鬼であり、ヨモツゼッキは心臓部が赤黒く光る鬼武者の外見である。


 融合フュージョンが終われば他にやることはないから、鬼童丸は通路を進んで5階に続く階段を上る。


 5階に鬼童丸が足を踏み入れた瞬間、システムアナウンスがタワー全体に届けられる。


『鬼童丸が決勝参加者の中で初めて5階に辿り着いたため優勝しました。お疲れ様でした』


 そのアナウンスが聞こえた直後に、鬼童丸は特設エリアに強制転移された。


 予選とは異なり、鬼童丸は大勢のプレイヤーに拍手され、紙吹雪とクラッカーによる祝福を受けながら特設エリアに戻って来た。


 それからしばらくして、ヴァルキリー、リバース、宵闇ヤミの順で戻って来たため、デビーラが進行を再開する。


「さて、全員戻って来たな。順位は既にわかっているだろうが、踏破タイムと共に改めて紹介しよう」


 デビーラが指パッチンした瞬間、鬼童丸達の前にシステムウィンドウが表示される。



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レンタルタワー攻略戦(決勝)

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優勝:鬼童丸(踏破タイム:58分44秒)

準優勝:ヴァルキリー(踏破タイム:1時間7分3秒)

3位:リバース(踏破タイム:1時間14分28秒)

4位:宵闇ヤミ(踏破タイム:1時間20分9秒)

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「あの難易度のタワーで鬼童丸は1時間を切るのかよ。エグいて」


「リバースとヴァルキリーの順位が予選から変わったか」


「ヤミヤミの下克上ならずか。残念」


 決勝を観戦していたプレイヤー達は、思い思いに感想を述べていた。


 そんなプレイヤー達を見て、やれやれとわざとらしく首を振ったデビーラが口を開く。


「予選で敗退した蛆虫共、他人事のように言うんじゃない! 貴様等が決勝出場者4名に追いつくにはどうするか考えろ! 他人事ではなく自分事化できない限り永久に勝てないぞ。わかったか蛆虫共!」


『『『…『『Sir, Yes Sir』』…』』』


「ふざけるな! 大声出せ! タマ落としたか!」


『『『…『『Sir, Yes Sir!』』…』』』


 (まだこの流れは続いてたのか)


 鬼童丸達が苦笑していると、デビーラによる表彰が行われた。


「レンタルタワー攻略戦3位、リバース。貴様が優秀な成績を収めたことをここに表彰する。おめでとう」


「ありがとうございます」


 リバースがデビーラから銅メダルを首にかけてもらうのと同時に、リバースの正面にシステムメッセージが現れたようだから、新人戦と同じく称号かアイテムが手に入ったのだろう。


「レンタルタワー攻略戦準優勝、ヴァルキリー。貴様が優秀な成績を収めたことをここに表彰する。おめでとう」


「ありがとうございます」


 ヴァルキリーもデビーラから銀メダルを首にかけてもらい、何かしらの称号かアイテムを得た。


 3位と準優勝の表彰が終われば、次はいよいよ鬼童丸の番だ。


「レンタルタワー攻略戦優勝、鬼童丸。貴様は他者の追随を許さぬ圧倒的な強さを見せつける蛆虫共の模範となり、優勝したことをここに表彰する。おめでとう」


「ありがとうございます」


『鬼童丸は称号<レンタルタワー攻略戦チャンピオン>を獲得しました』


『鬼童丸はレンタル従魔受領チケット2枚、専用武装交換チケットを1枚獲得しました』


 (読みが当たったか。ありがたく頂戴する)


 途中でイレギュラーな事態に巻き込まれた者の、こうしてレンタルタワー攻略戦は鬼童丸の優勝で幕を閉じた。

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