第136話 本編でもイベントでも女型従魔侍らせるなんてイヤミか貴様!

 鬼童丸が特設エリアに戻って来たらしばらくして、リバース、ヴァルキリー、宵闇ヤミの順で戻って来て、ラストの予選通過者である宵闇ヤミが帰って来るのと同時にまだ生存しているプレイヤー全員が強制的に戻って来た。


 全員集まったところで、デビーラが進行を再開する。


「さて、貴様等蛆虫共から予選通過者が4名出揃った。その4名を踏破タイムと共に紹介しよう」


 デビーラが指パッチンした瞬間、鬼童丸達の前にシステムウィンドウが表示される。



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レンタルタワー攻略戦(予選)

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1位:鬼童丸(踏破タイム:49分30秒)

2位:リバース(踏破タイム:53分12秒)

3位:ヴァルキリー(踏破タイム:55分9秒)

4位:宵闇ヤミ(踏破タイム:58分43秒)

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「やはり鬼童丸は別格かぁ。50分切るとかヤバいでしょ」


「新人戦と違うのはリバースと宵闇ヤミがの順位が入れ替わってるところか」


「そもそもまだ俺なんて4階に到達してなかったんですけど」


 表示されたシステムウインドウを見て、プレイヤー達がざわついていた。


 そんなプレイヤー達を見て、やれやれとわざとらしく首を振ったデビーラが口を開く。


「貴様等蛆虫共の教育のため、予選通過者4名が使役したアンデッドモンスターも紹介してやろう。しかと学べ」


 再びデビーラが指パッチンした瞬間、鬼童丸達の前に別のシステムウィンドウが表示される。



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レンタルタワー攻略戦(予選)

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○鬼童丸

 ウルピール/マッドタウロス/トゥームウォーリア/イビルクロス

○リバース

 ゲイザス/レギオン/ファントムホーク/ヘルスカウト

○ヴァルキリー

 トゥームウォーリア/ヘルキャリッジ/グラッジミキサー/トリックウィスプ

○宵闇ヤミ

 マッドタウロス/タキシム/アッシュレックス/フレッシュスライム

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 (俺以外にもマッドタウロスとトゥームウォーリアを使ってたか。流石にウルピールを使ってないようだが)


 ヴァルキリーと宵闇ヤミが自分と同じレンタル従魔を使っていたため、鬼童丸は上位陣が考えることは似ているらしいと分析した。


「えっ、待って。本編で普通に使いたい従魔がいるんだが」


「鬼童丸がまた女型従魔を使役してる件について」


「本編でもイベントでも女型従魔侍らせるなんてイヤミか貴様!」


 表示されたシステムウインドウにはアンデッドモンスターの名前が載っていて、それをタップするとそのイメージが閲覧できるようになっていた。


 それゆえ、ウルピールの名前をタップして鬼童丸がまた女型従魔を使役したという声がちらほら聞こえた。


 ということは、当然のことながらぬるっと背後に立っていた宵闇ヤミの機嫌が悪くなっている。


「鬼童丸、イベントでも違う雌を侍らせるんだね」


「実力を考慮してのことだ。予選通過を目指すなら強い従魔を使役するのは当然の判断だろ」


「それはまあ…」


 消えていた目のハイライトがすぐに戻るあたり、宵闇ヤミも鬼童丸が合理的判断に基づいてウルピールを使役したと理解したようだ。


 プレイヤー達がシステムウインドウに表示された参考情報を見た後、デビーラが喋り出す。


「さあ、更なる勉強タイムとして決勝を行うぞ。まずはレンタルする最初の3体を抽選で決める。ルーレットよ回れ」


 デビーラが指パッチンすることで、3台のルーレットがホログラムとしてプレイヤー全員の上空に現れて回り始める。


 1台ずつルーレットの針が止まり、レンタルできる従魔3体がルーレットと入れ替わるようにして現れた。


 1体目がグリムライダー、2体目がグール、3体目がグラッジマンティスという結果だった。


「準備は揃った。予選通過者の貴様等をランダムな位置に強制転移させる。優勝を目指して死力を尽くすのだ」


 決勝の行われるタワーに転移させられている間、鬼童丸の目の前にシステムメッセージが表示される。


『1分以内に決勝で最初に使役するアンデッドモンスターを1体選択して下さい』


『選択肢はグリムライダーLv1とグールLv1、グラッジマンティスLv1です』


 (うーん、この中ならグールかな)


 鬼童丸は少しだけ悩んでからグールLv1を選択した。


 1分が経過して移動が完了したら、4人の予選通過者が決勝用のタワーの1階に散らされていた。


『決勝開始まで3,2,1, START!!』


 開始の合図と共に、鬼童丸の視界の端に周辺のエリアマップが表示される。


 (マジか。表示される範囲が半分ぐらいになってる)


 エリア全体のマップは与えられないのは当然のこととして、決勝では初めて通過する場所では自身の周囲5mしかわからないようになっており、通過すればマップを埋められる形式のようだ。


召喚サモン:グール」


 グールを召喚したら、鬼童丸は周囲をよく観察しながら歩いていく。


 1階の内装は洋風の墓地からスタートするのだが、最初に鬼童丸の前に現れたのはレイスだった。


 幽体ゆえに物理攻撃が通用しないけれど、グールには攻撃手段があるから問題ない。


「グール、【闇鉤爪ダーククロー】」


 闇属性の攻撃ゆえにレイスにも攻撃が当たる。


 当たり所が良かったらしくレイスがダウン状態になった。


 ゲームゆえにダウン状態の時の追撃は物理攻撃でも使えるように思うかもしれないが、UDSでは幽体のアンデッドモンスターがダウンするのは攻撃できるアビリティがある時のみであり、追撃ボタンを押すと特別に幽体を攻撃するアビリティで追撃が行われる。


 そのおかげでレイスは一気にHPを削られて力尽きた。


『グールがLv1からLv7まで成長しました』


『レイスを1枚手に入れました』


 (レイスが出て来たのは僥倖だね)


 鬼童丸はすぐにグールとレイスを融合フュージョンし、ダンピールを誕生させた。


 今回は男型従魔だったから、宵闇ヤミに遭遇しても不機嫌になることはないだろう。


「ダンピール、俺を抱えて飛んでくれ」


 ダンピールは美形のアンデッドモンスターゆえに、特設エリアで決勝を見守る一部の女性プレイヤーがダンピールに抱えられる鬼童丸を見てざわついた。


 その反応を見て、男性プレイヤー達は「パターン青、腐女子です!」なんて声があったけれどそれはまた別の話である。


 ダンピールに抱えられて飛ぶ鬼童丸だが、墓石に備えられているランダマイズポーションを確保してから最寄りの階段に向かう。


 予選と異なり、決勝で使用されるタワーでは2階に繋がる階段は2つしかない。


 2階以降は階段が1つだけになるが、1階だけは特別に2つ階段がある。


 鬼童丸が選んだ階段の方には、オチタイショウが待っていた。


 ダンピールに地上に着地してもらってから、鬼童丸はダンピールに指示を出す。


「ダンピール、【呪氷円陣アイスサークル】」


 その指示により、ダンピールが指定した場所にいたオチタイショウを足から凍らせる。


 体が凍って動けないから、オチタイショウは自分のターンで攻撃できなかった。


「ダンピール、【吸収正拳ドレインストレート】」


 ダンピールがオチタイショウを殴り飛ばすことにより、オチタイショウが殴り倒されて凍ったままの四肢が割れて落ちる。


 今はHPが満タンだから変化はないが、【吸収正拳ドレインストレートにはHPが削れていた時は殴って与えたダメージの30%を回復できる効果がある。


 四肢が割れて攻撃手段のない達磨状態だから、ダンピールはずっと俺のターン状態で攻撃を続けられる。


「ダンピール、【暗黒鉤爪ダークネスクロー】」


 この攻撃がオチタイショウのHPを削り取り、オチタイショウが倒れてカードに変わった。


『ダンピールがLv1からLv8まで成長しました』


『オチタイショウを1枚手に入れました』


 (良いペースだ。後ろが来る前にとっとと2階に進もう)


 ダンピールとオチタイショウは融合フュージョンができないから、鬼童丸はさっさと2階に進んだ。

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