第134話 飛んで火にいる経験値

 予選の行われるタワーに転移させられている間、鬼童丸の目の前にシステムメッセージが表示される。


『1分以内に予選で最初に使役するアンデッドモンスターを1体選択して下さい』


『選択肢はスケルトンLv1とゾンビLv1、ゴーストLv1です』


 (練習で慣れたスケルトン1択だ)


 鬼童丸は迷うことなくスケルトンLv1を選択した。


 1分が経過して移動が完了したら、鬼童丸を含めた全てのプレイヤーが予選用のタワーの1階に散らされていた。


『予選開始まで3,2,1, START!!』


 開始の合図と共に、鬼童丸の視界の端に周辺のエリアマップが表示される。


 エリア全体のマップは与えられず、初めて通過する場所では自身の周囲10mしかわからないようで、通過すればマップを埋められる形式のようだ。


 (2階を目指しつつスケルトンを育てないと)


召喚サモン:スケルトン」


 スケルトンを召喚したら、鬼童丸は周囲をよく観察しながら歩いていく。


 イベントで使われるタワーはミニゲームで遊べるものと異なり、その内装は和風の墓地になっていた。


 上の階に行ったら内装が変わる可能性がある。


 というよりも、デーモンズソフトなら内装を変えてプレイヤーを試すぐらいのつもりでいた方が良いまである。


 (おっとSTRブースターだ)


 墓前にしれっと供えられたSTRブースターを見つけ、鬼童丸はそれをスケルトンに使用した。


 その直後に墓石が崩れ落ち、その代わりにスケルトンが現れた。


 (墓の主がお供え物を奪われて怒ったか)


「スケルトン、【飛斬スラッシュ】だ」


 スケルトンはデフォルトで片手剣を装備しているため、鬼童丸はそれを用いたアビリティを自身の使役するスケルトンに命じる。


 STRブースターでSTRが通常のスケルトンよりも強くなっているおかげで、鬼童丸のスケルトンは敵のスケルトンとの【飛斬スラッシュ】の撃ち合いを制して倒せた。


『スケルトンがLv1からLv5まで成長しました』


『スケルトンを1枚手に入れました』


 レベルだけならば格上の相手だったため、鬼童丸のスケルトンがこの戦闘で得られた経験値は多かった。


 (上の階に行くまでに似たような墓石を見つけられるとタイパが良いね)


 ブースターを使って強くなれるだけでなく、そこそこ強い状態の敵と戦えるから倒せば経験値も多い。


 お供え物のある墓石を探しながら進むのは、タイムパフォーマンス的に良いのは間違いない。


召喚サモン:スケルトン」


 ついさっき倒したスケルトンを召喚し、鬼童丸のレンタル従魔が2体に増える。


 それから少し進んで行くと、今度は正面にゾンビが現れた。


 2対1で数の優位性を活かせたから、先程の撃ち合いよりも楽に戦闘を終えられた。


『スケルトンがLv6に到達しました』


『スケルトンがLv2に到達しました』


『ゾンビを1枚手に入れました』


 ゾンビはスケルトンと融合フュージョン可能だから、鬼童丸は2体目のスケルトンとゾンビを融合フュージョンさせる。


 それにより、スケルトンの外骨格で守られたアームドゾンビが誕生する。


 その時、後ろから3体のグリムハウンドに追われているプレイヤーがやって来る。


「げぇ、前門の鬼童丸、後門のグリムハウンドの群れ!?」


「飛んで火にいる経験値。スケルトンは【飛斬スラッシュ】だ。アームドゾンビは【突撃ブリッツ】で攻撃」


 まだ全然レベル上げできていなかったらしいそのプレイヤーは、最初に使役していたゾンビを倒されて脱落した。


 乱戦モードで始まった戦闘ゆえに、ターン制に比べて自由度の高い状況でグリムハウンド達の連携の取れた動きを冷静に崩し、HPこそぼちぼち削られたものの致命的なダメージは負わずに戦闘を終えられた。


『スケルトンがLv6からLv10(MAX)まで成長しました』


『スケルトンが格上の敵との戦闘や乱戦モードを通じてレベル上限に達したため、スケルトンがスケルトンバーサーカーに特殊進化しました』


『スケルトンバーサーカーが【狂化バーサクアウト】を会得しました』


『アームドゾンビがLv2からLv7に到達しました』


『グリムハウンドを3枚、ゾンビを1枚手に入れました』


 (良い流れだ。ここで更に融合フュージョンだな)


 融合フュージョンの素材はスケルトンバーサーカーとアームドゾンビ、グリムハウンドの3体であり、融合フュージョンしたことでコープスウルフマンが誕生した。


 コープスウルフマンはライカンデスロープの進化前であり、レンタルタワー序盤で手に入るアンデッドモンスターとしてかなり強い。


召喚サモン:オール」


 残ったグリムハウンド2体とゾンビ1体はそのまま召喚し、鬼童丸は脱落したプレイヤーが落としたポーションを拾った。


 そのまま先に進むと2階に続く階段を見つけ、鬼童丸は階段を守るアンデッドモンスターと対峙する。


 階段を守っているのはゴブリンゾンビだったが、4体の従魔で囲めば容易く倒せてしまった。


『コープスウルフマンがLv2に到達しました』


『グリムハウンドがLv4に到達しました』


『グリムハウンドがLv4に到達しました』


『ゾンビがLv4に到達しました』


『ゴブリンゾンビを1枚手に入れました』


 階段を守るアンデッドモンスターだが、他のプレイヤーの前に立ちはだかるべくすぐにリスポーンしてしまうので、鬼童丸はさっさと2階に移動する。


 ちなみに、予選で使用されているタワーには上の階に繋がる階段が4つある。


 これは階段でプレイヤーが詰まってしまうのを避けるための措置だ。


 2階に着いた後、鬼童丸はゴブリンゾンビとグリムハウンドを融合フュージョンしてモブライダーを誕生させた。


 ジェネラルライダーと比べれば弱いけれど、ただのグリムハウンドとゴブリンゾンビよりは強いと言える。


 2階は廃病院の内装になっており、鬼童丸は公衆電話が並んでいるコーナーにしれっとアイテムが置いてあるのを見つけた。


 (ボムポーションじゃん。なんでこんなところに)


 廃病院にボムポーションという組み合わせはなんとも異質だが、使えるアイテムは取っておくべきだろう。


 1階では霊体のアンデッドモンスターと運良く出会わなかったけれど、2階に来て3体のファントムが現れた。


 ゴーストの進化先であるファントムも当然霊体だから、物理攻撃はファントムに当たらない。


 しかし、コープスウルフマンは【騒音波ノイジーウェーブ】を使えるから、全体攻撃でコープスウルフマンにダメージが入った。


「早速出番が来たか」


 ついでに先程手に入れたボムポーションを鬼童丸が投げることで、コープスウルフマンの攻撃で弱っていたファントムを倒すことができた。


『コープスウルフマンがLv2からLv5に成長しました』


『モブライダーがLv1からLv4に成長しました』


『グリムハウンドがLv4からLv7に成長しました』


『ゾンビがLv4からLv10(MAX)に到達しました』


『ゾンビが霊体のアンデッドモンスターとの戦闘を通じてレベル上限に達したため、ゾンビがゾンビモンクに特殊進化しました』


『ゾンビモンクが【読経ストラチャンティング】を会得しました』


『ファントムを3枚手に入れました』


 (ゾンビモンクも霊体に攻撃できるようになったか。だが、まだ強くなるぞ)


 新たなアンデッドモンスターを手に入れたら、とにかく融合するのが強くなる近道だ。


 それゆえ、鬼童丸は融合フュージョンの素材としてゾンビモンクとファントムを選択し、グラッジモンクを誕生させた。


 更にグリムハウンドとファントムも融合フュージョンさせ、シャドウグリムを誕生させた。


召喚サモン:ファントム」


 融合フュージョンできなかったファントムを召喚し、鬼童丸は廃病院の廊下を進んで行く。


 待合スペースに到着したところ、そこにはスケルトンメイジとゾンビファイター、グラッジファントムが待ち構えていた。


「コープスウルフマンは敵全体に【騒音波ノイジーウェーブ】を放て。モブライダーとシャドウグリムはスケルトンメイジにそれぞれ【突撃ブリッツ】と【影噛シャドウバイト】だ。グラッジモンクはグラッジファントムに【読経ストラチャンティング】を使え。ファントムはゾンビファイターに【幻痛ファントムペイン】」


 コープスウルフマンの攻撃が敵全体に命中して敵の動きが鈍り、モブライダーとシャドウグリムは遠距離攻撃が厄介なスケルトンメイジをそのまま攻撃して倒した。


 グラッジモンクの【読経ストラチャンティング】でファントムに麻痺状態と継続ダメージを与え、ファントムは【幻痛ファントムペイン】でゾンビファイターを怯ませた。


 敵が動けなければ、鬼童丸がずっと自分のターン状態で攻撃を続行してファントムとゾンビファイターを倒した。


『コープスウルフマンがLv5からLv10に成長しました』


『コープスウルフマンの【飛斬スラッシュ】が【怪力飛斬パワースラッシュ】に上書きされました』


『モブライダーがLv4からLv9に成長しました』


『シャドウグリムがLv1からLv4に成長しました』


『グラッジモンクがLv1からLv4に成長しました』


『ファントムがLv1からLv4に成長しました』


『スケルトンメイジとゾンビファイター、グラッジファントムを1枚ずつ手に入れました』


 (良いね。これで魔法系アビリティも使えるようになる)


 鬼童丸はこの戦闘で挙げた成果に満足した。

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