第126話 残念だったな。俺が来た
まだ時間に余裕があるから、宵闇ヤミはリスナー参加型のエリア争奪戦の2戦目を行う。
「今日はスパチャ読みタイム含めて11時までだから、もう1戦だけやるよ~。ヤミ達と戦いたい人プチョヘンザ」
その問いかけですぐに挙手したのはバブエモンとタケアッキーだった。
どちらも黄色いスーパーチャットで主張し、鬼童丸&宵闇ヤミペアとバブエモン&タケアッキーコンビで戦うことになった。
バブエモンは新人戦で決勝トーナメントに出た実力者であり、タケアッキーは北海道の道南エリアをどんどん統治している試練子爵(松前・福島・知内・木古内・上ノ国)として過疎エリアの攻略者として静かにその存在が知られて来ている。
バブエモンとタケアッキーは相談してバブエモンの統治する稲城市を賭け、鬼童丸と宵闇ヤミは引き続き下妻市を賭けた。
エリア争奪戦の舞台は下妻市と稲城市であり、鬼童丸と宵闇ヤミは稲城市の拠点を落とせば勝利だ。
今度は宵闇ヤミが守ると言い出したから、鬼童丸が攻め込むことになった。
お互いの準備が整ったところで、システムメッセージが4人の視界に表示される。
『エリア争奪戦開始まで3,2,1, START!!』
鬼童丸は宵闇ヤミに下妻市の留守を任せ、稲城市に向かって出発するべく従魔を召喚する。
「
折角攻められるならば、ドラクールによる圧倒的な蹂躙もありと考えて鬼童丸はドラクールを召喚した。
「ドラクール、俺を稲城市まで連れてってくれ」
「かしこまりました」
コマンド入力で【
下妻市の境界線を越えた直後、鬼童丸は正面にタケアッキーのアイコンを見つけた。
「
タケアッキーは鬼童丸に見つかってしまうからには戦うつもりらしく、自分が乗っていたミミックパンツァーとデッドトレントでドラクールと戦うようだ。
「
(ドラクールだけ召喚すると拗ねられるからな。召喚するならリビングフォールンもだ)
エリア争奪戦の間はおとなしくしているかもしれないが、それが終わってからリビングフォールンに拗ねられる可能性がある。
それゆえ、戦力的には十分なのだが鬼童丸はダメ押しでリビングフォールンを召喚した。
「リビングフォールン、【
「は~い」
『お任せ下さい』
リビングフォールンがドラクールの背中の上で【
これによって敵2体が当てやすい的に変わったから、ドラクールが【
深淵属性と火属性が合わさったブレスはドラクールが吐き出すのに相応しく、これが宵闇ヤミの配信に乗っていたら高評価間違いなしである。
『鬼童丸によってタケアッキーが倒されました』
(このままバブエモンが守ってる拠点に向かうか。すまんね、ヤミ)
鬼童丸はバブエモンが待機しているよみうりランドに向かう。
宵闇ヤミに対して心の中で謝ったのは、ここから自分が戻るよりも攻めた方が早いので宵闇ヤミの出番がなくなることに対してだ。
空を飛んで行くとよみうりランドはあっという間であり、バブエモンは鬼童丸を見て驚愕する。
「もしかして、ヤミヤミ来ないんですかぁぁぁぁぁ!?」
「残念だったな。俺が来た」
「降参! マジ降参! 損切り待ったなしだって!」
『バブエモンが降参を宣言しました』
『戦えるプレイヤーがいなくなったことにより、鬼童丸と宵闇ヤミの勝ちでエリア争奪戦が終了しました』
『鬼童丸に稲城市が移譲されて冥開に吸収されました』
『鬼童丸がLv99に到達しました』
『ドラクールがLv52からLv54まで成長しました』
『リビングフォールンがLv42からLv44まで成長しました』
『ミミックパンツァーとデッドトレントを1枚ずつ手に入れました』
鬼童丸がエリア争奪戦を終わらせてしまったため、宵闇ヤミがむすっとした表情でよみうりランドまでやって来た。
「ヤミの出番がなかったんだけど」
「俺は悪くねえ! 勝手に降参したバブエモンが悪いんだ!」
「それは否定しないけど配信の撮れ高的に何かコメントある?」
「強過ぎてごめん」
この発言でコメント欄に大草原が広がった。
それから、降参したバブエモンがアンデッドモンスターのカードを差し出すべくやって来る。
「好きなカードを持っていけば良いさ」
「勿論そうするとも」
「じっくり見させてもらうね」
鬼童丸と宵闇ヤミはバブエモンのカードリストをチェックする。
戦わずして逃げたバブエモンに対し、鬼童丸も宵闇ヤミも容赦したりしない。
2人はまだ自分達の持っていないアンデッドモンスターのカードを貰い、宵闇ヤミはエリア争奪戦パートは終了した。
今日の配信ではスパチャ読みがあると宣言していたため、鬼童丸はスパチャ読みタイムで手持無沙汰になるからここで宵闇ヤミの配信から離脱する。
自由になったら、都庁に戻ってタナトスに話しかける。
「タナトス、エリア争奪戦で府中市と稲城市を手に入れた。転移魔法陣の設置を頼んでも良い?」
「順調に領地を増やせているようだな。良いだろう。少し待っていろ」
鬼童丸に頼まれ、タナトスは府中市と稲城市に転移魔法陣を設置した。
都庁に戻って来たタナトスが鬼童丸に声をかける。
「鬼童丸、もうすぐ侯爵になれそうだな」
「次で20ヶ所目だし、あともう1ヶ所統治できたらってところかね?」
伯爵になったのが10ヶ所目のエリアを統治した時だったから、鬼童丸は20ヶ所目の統治が侯爵にグレードアップできる条件だと睨んでいた。
そんな鬼童丸の予想を聞いてタナトスは静かに頷く。
「その通りだ。今日はログアウトするのか?」
「まあね。ヤミのために時間を取るって言って宥めたから」
「宵闇ヤミが敵に回るのは避けたい。ヴァルキリーについても同様だ。大変な道のりかもしれないが、どうにか2人が獄先派に取り込まれないよう上手くコントロールしてくれ」
「道が険し過ぎるなぁ」
遠い目をする鬼童丸に対し、タナトスは頑張ってくれと鬼童丸の肩をぽんと叩いた。
タナトスと別れてログアウトしたら、寝る前にスマホをチェックする。
寧々が引っ越し完了したとチャットをして来たから、久遠はお疲れ様と打ち返しておいた。
あまり寧々とのチャットに夢中になっていると、スパチャ読みタイムを終えてログアウトするだろう桔梗から圧をかけられかねない。
したがって、適当なところで寧々とのチャットも終わらせた。
午後11時を回ったところで、桔梗がログアウトしてゴーグルを外した。
「久遠さん、じゃあ寝ようか。抱き枕になってもらうからね」
「はいはい」
「お休み~」
「お休み」
電気を消してベッドに横たわると桔梗が久遠に抱き着く。
桔梗の体が密着したことにより、久遠の耳に桔梗の深呼吸する音が聞こえる。
「桔梗さん、なんで深呼吸してるの?」
「久遠さんの匂いを嗅ぐと落ち着くから」
「桔梗さん、どんどん呼吸が荒くなってるけど落ち着くつもりある?」
「久遠さんと同じベッドで抱き合ってるんだよ? 興奮しちゃうよね」
(これは早まったか?)
そう思ったけれど、桔梗の呼吸はすぐに落ち着いて寝息が聞こえて来る。
昨晩から今朝にかけて心配をかけさせてしまい、今日もしっかり眠れずに短時間しか眠っていなかったから、桔梗は一瞬興奮したようだがそれよりも眠気の方が強くて眠ってしまったのだ。
『マスター、危ないところでしたね』
『マスターの貞操が守られて良かったね』
(桔梗さんが本調子だったらヤバかったな。ドラクールとリビングフォールン、もしも桔梗さんが抱き枕以上のことをやろうとしたら起こしてくれ)
『かしこまりました』
『任せて~』
ドラクールとリビングフォールンはアンデッドモンスターだから、食事と同様に睡眠も必要としていない。
だからこそ寝ずの番を任せるにはピッタリの存在なのだ。
久遠はドラクール達に寝ずの番を任せ、安心して眠りに就くことにした。
最初は抱き枕にされると寝付けないのではと思っていたが、久遠もすんなり睡魔に負けるぐらいには疲れていたので問題なかった。
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