第116話 そんな君等にアタックチャンス

 完全回復したミストルーパーが倒れて消えたクエイクドラゴンゾンビの中から現れたことで、鬼童丸達の耳にシステムメッセージが届く。


『鬼童丸がLv94からLv96に成長しました』


『大罪武装を装備したアンデッドモンスターを使わず掃除屋に勝利したことにより、鬼童丸の称号<死の君主>が称号<死賢者>に上書きされました』


『レギネクスがLv28からLv38まで成長しました』


『レギネクスの【死体爆発ネクロエクスプロージョン】が【死爆轟デスデトネ】に上書きされました』


『フロストパンツァーがLv28からLv38まで成長しました』


『フロストパンツァーの【呪氷結棺フリーズコフィン】と【氷結罠フリーズトラップ】、【氷結武装フリーズアームズ】、【氷結砲フリーズバースト】が【呪氷支配アイスイズマイン】に統合されました』


『フロストパンツァーが【魔法半球マジックドーム】を会得しました』


『フロストパンツァーが【消音移動サイレントムーブ】を会得しました』


『フロストパンツァーが【全耐性レジストオール】を会得しました』


『ヨモミチボシがLv28からLv38まで成長しました』


『ヨモミチボシの【興奮空間エキサイトスペース】と【沈黙空間サイレントスペース】が【気分空間テンションスペース】に統合されました』


『ヨモミチボシが【忘却水流オブリビオンストリーム】を会得しました』


『イミテスターがLv22からLv34まで成長しました』


『イミテスターの【不幸爆弾バッドボム】が【不幸爆発バッドエクスプロージョン】に上書きされました』


『ミストルーパーがLv22からLv34まで成長しました』


『ミストルーパーの【千里眼クレヤボヤンス】と【記録撮影ログレコード】が【観察眼オブザーブアイ】に統合されました』


『ミストルーパーが【不幸招来バッドラック】を会得しました』


『ダイダラボッチがLv1からLv18まで成長しました』


『ダイダラボッチの【破壊斬捨デストロイチェスト】が【極限斬捨マキシマムチェスト】に上書きされました』


『ベガイラズがLv1からLv18まで成長しました』


『ベガイラズの【暗黒火炎ダークネスフレイム】が【地獄火炎ヘルフレイム】に上書きされました』


『各種ブースターⅢ型1セットとクエイクドラゴンゾンビを1枚手に入れました』


 (色々ツッコミどころがあり過ぎる!)


 長いシステムメッセージを読み終え、鬼童丸は順番にチェックすることにした。


 まずは自身の称号だが、<死の君主>から<死賢者>に上書きされたことで従魔からの好感度が上がるだけでなく、アンデッドモンスターの弱点が視界に映るようになった。


 弱点がわかれば、今回のような主戦力がいない状況でも工夫して戦えるのでありがたい恩恵と言えよう。


 次に従魔達のアビリティについて確認する。


 既出のアビリティについてはスルーして、レギネクスの【死爆轟デスデトネ】とイミテスターの【不幸爆発バッドエクスプロージョン】、ダイダラボッチの【極限斬捨マキシマムチェスト】、ベガイラズの【地獄火炎ヘルフレイム】は元のアビリティの上位互換だ。


 フロストパンツァーの【呪氷支配アイスイズマイン】は【深淵支配アビスイズマイン】の氷属性版だと考えて良い。


 また、【魔法半球マジックドーム】は自身を中心にエネルギードームを創り出し、敵の攻撃を防ぐ。


 ヨモミチボシの【気分空間テンションスペース】は元の2つのアビリティの良いとこどりであり、指定した空間にいる者を興奮状態にさせてSTRを上げる代わりにDEXを下げさせるか、沈黙状態にしてアビリティを封じる。


 【忘却水流オブリビオンストリーム】は攻撃によるダメージを与えられない代わりに、受けた相手の行動をキャンセルできる。


 ミストルーパーの【観察眼オブザーブアイ】は探索向きで、同一エリアで起きたことを空から監視してその映像を細かく記録できるだけでなく、主人であるネクロマンサーと視界や映像を共有可能だ。


 【不幸招来バッドラック】は特殊な波動であり、この波動を受けた者に必ず不幸が訪れる。


 ここまでの確認でも軽くぐったりしてしまった鬼童丸だが、そんな鬼童丸を追い込む知らせが最後のシステムメッセージだった。


 (アンデッドモンスターのカードがクエイクドラゴンゾンビだけだと?)


 掃除屋レイドに巻き込まれて倒れたアンデッドモンスターは大勢いるはずなのに、戦闘によって手に入ったアンデッドモンスターのカードはクエイクドラゴンゾンビのものだけだった。


 ラストアタッカーがミストルーパーだったのは良いことだったとしても、それ以外のカードが手に入らない理由なんて鬼童丸には1つしか思い当たらない。


 (ヘルストーンが下妻市のどこかにある。というか、何処かでヘルストーンが効果を発揮してると見た)


 鬼童丸がUDSにおけるトッププレイヤーだとしても、流石に主戦力を封じる縛りプレイをした掃除屋レイドにおいて、倒されたアンデッドモンスターがどうなったかじっくり見ている余裕はなかった。


 だからこそ、ヘルストーンが下妻市の何処かにあるとわかり、まだ下妻市でのトラブルは起こることも容易に想像できた。


 鬼童丸達は従魔を一度送還した後、お互いを労い合う。


「お疲れ様。チャレンジクエストに参加してくれてありがとな」


「鬼童丸に誘われたらなんだって一緒にやるよ。経験値も美味しかったし、クエイクドラゴンゾンビも手に入ったからヤミ的にも大満足」


「お疲れ~。クエイクドラゴンゾンビが手に入らなかったのは残念だけど、経験値は確かに美味しかったね」


「それな。経験値ウマウマだし、選抜メンバーでの縛りプレイってのも面白かったわ」


「そんな君等にアタックチャンス」


 鬼童丸がいきなりそう言えば、鬼童丸に新しいクエストでも発生したのかと宵闇ヤミ達が首を傾げる。


 この集まりが鬼童丸のチャレンジクエストに起因するものだから、掃除屋レイドを終えて何か発生したのではと思うのは自然なことだ。


「システムメッセージの最後でアンデッドモンスターのカードを手に入れた人はいる? クエイクドラゴンゾンビ以外で」


「「「あっ…」」」


「気づいたようだな。十中八九ヘルストーンが下妻市にある。ついでだから、地獄から出て来たアンデッドモンスターを探そうぜ。召喚サモン:ドラクール」


 もうチャレンジクエストは終わったから、鬼童丸はこの場にドラクールを召喚する。


 召喚されたドラクールは鬼童丸を祝う。


「マスター、チャレンジクエストの達成おめでとうございます」


「ありがとう。…どうした? 俺に何か付いてるか?」


 ドラクールが自分をじっと見ているから、鬼童丸は自分に何か付いているのか訊ねてみた。


 その鬼童丸の問いに対し、ドラクールは少しだけ顔を赤らめる。


「いえ、マスターがチャレンジクエストを経てまた素敵になったと思いまして」


「「ドラクール?」」


 宵闇ヤミとヴァルキリーの目からハイライトが消え、2人がそのままドラクールを見つめる。


 ドラクールはリアルにも具現化できたため、宵闇ヤミとヴァルキリーはヴァルキリーも鬼童丸争奪戦に参戦するのではと警戒しているのだ。


 (最近、ヴァルキリーが宵闇ヤミに引っ張られてる気がする)


 ヴァルキリーも鬼童丸と事ある毎に鬼童丸と付き合っていると言い続けているが、それでもヤンデレムーブをすることはなかった。


 ところが、最近のヴァルキリーは宵闇ヤミに引っ張られているというか、対抗するためにヤンデレに寄っているのだ。


 それはそれとして、鬼童丸がドラクールを召喚したことにちゃんと理由がある。


「ありがとう。ドラクール、お前にチャレンジクエストの報酬を使うぞ」


 各種ブースターⅢ型を使い、能力値が全て200ずつ上昇した。


「ありがたき幸せ。これからもマスターを精一杯お守りいたします」


 強化してもらったドラクールは片膝を地面に着け、鬼童丸への忠誠心を示した。


 宵闇ヤミとヴァルキリーもその姿を見て、ドラクールの鬼童丸に対する感情は恋慕ではなく忠誠なのだと理解できたから目が元に戻った。


 それから、ドラクールに【憤怒竜ラースドラゴン】を使ってドラゴン形態に変身し、鬼童丸達を背中に乗せて飛翔する。


 ヘルストーンが使われたならば、空から見渡すことで何処に地獄の門から現れたアンデッドモンスターがいるか突き止められると考えてのことだ。


 しかし、流石に肉眼で探すのは面倒だったため、鬼童丸は楽をするべくミストルーパーを再び召喚する。


召喚サモン:ミストルーパー」


 ミストルーパーの【観察眼オブザーブアイ】を使い、下妻市に既に現れたと考えられるターゲットの居場所を探す。


 (見つけた。【観察眼オブザーブアイ】は優秀だな)


 鬼童丸がミストルーパーの【観察眼オブザーブアイ】で見つけたターゲットは、下妻市にいるアンデッドモンスターを見つけては仕留めて移動することを繰り返していた。


 強者が更に成長すると面倒だから、鬼童丸はドラクールに指示を出してそのターゲットのいる場所に急行した。

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