第69話 笑えば良いと思うよ
東京スタジアムの周囲には、体が灰色だがゾンビよりもしっかりした見た目のアンデッドモンスターがたくさんいて、膝から崩れ落ちて地面を叩いていた。
「終わったとかもう駄目だとか言ってそうだな」
「
鬼童丸に応じる宵闇ヤミは、配信のコメント欄にある多数のコメントに対してツッコミを入れる。
(敵はスッカラン。グールの派生種っぽいけど、名前がなぁ…)
視界に表示される情報によれば、敵の名前がスッカランだったので鬼童丸は苦笑した。
ギャンブルに負けて膝から崩れ落ちたスッカランということなら、ギャンブルに負けがちな宵闇ヤミに例えられるのも頷けなくはないからだ。
「まあまあ、落ち着いて。ギャンブルばっかしてるからそんな風に言われるんだよ」
困った感じの表情で鬼童丸が言うものだから、宵闇ヤミはジト目になりながらそれに言い返す。
「笑えば良いと思うよ」
「あっ、そう?」
「笑わないでよぉぉぉ!」
「どっちだよ」
笑って良いと言われてすぐに笑った鬼童丸に対し、宵闇ヤミはそこで笑わないでほしかったから抗議した。
これには鬼童丸も苦笑する。
それはそれとして、スッカランがたくさんいる中で1体だけ違うアンデッドモンスターがいた。
(あそこにいるのがチートディーラーか)
チートディーラーは右半分が骨で左半分が死体という変わった見た目のアンデッドで、スッカラン達を下っ端のように使っているらしい。
「マスター、降下するのでしっかり掴んで下さい」
「わかった。宵闇さんも」
「うん♡」
わざわざ鬼童丸から自分を掴んで良いと言われたのだから、宵闇ヤミは嬉しそうに鬼童丸に後ろから抱き着いた。
コメント欄では「雌ヤミ」なんて投稿が続いたが、宵闇ヤミはそれをスルーしてみせる。
ドラクールが着地して【
「おーい鬼童丸さん、コール拒否しないでくれ!」
「話を聞かせてくれぇぇぇ!」
「俺も従魔と喋りたいんだぁぁぁ!」
検証班が大勢やって来たその時、光の壁が鬼童丸達と検証班を分かつ。
「「
光の壁が検証班達から自分を守ってくれると判断し、鬼童丸と宵闇ヤミはチートディーラー率いるスッカランの大群と戦うべく全ての従魔を召喚した。
その時、鬼童丸達にとって予定外の事態が起きる。
『掃除屋ガシャドクロが調布市に現れました』
「「え?」」
「「「…「「しまったぁぁぁぁぁぁ!!」」…」」」
ワールドアナウンスが聞こえたその直後に、光の壁の向こう側にガシャドクロが現れて鬼童丸と宵闇ヤミがキョトンとし、ジョブホッパー率いる検証班はやらかしたと自分達の軽率な行動を後悔した。
「あっちも大変そうだな」
「掃除屋のカード、欲しい!」
「それじゃ、俺達はさっさと目の前の敵を倒さないとね」
鬼童丸は他人事のように言うが、宵闇ヤミとしては掃除屋にラストアタックを決めてそのモンスターカードが欲しいから、さっさと調布市のボス戦を済ませて掃除屋レイドバトルに参戦したいのだ。
それをちゃんと理解しているから、鬼童丸はちゃんと戦うことにした。
チートディーラーが手を前に出したら、スッカラン達が一斉に立ち上がってアビスライダーに向かって【
スッカラン達が空振りした時には、リビングバルドが【
続けてヨモミーナが【
そのおかげで、フロストヴィークルが【
(デバフ込みで躱すか。いや、違う。【
プレイヤーのリバースではなく、チートディーラーの【
つまり、デバフがかかればそれだけバフになり、毒状態になれば経過時間毎にHPが回復する訳だ。
そのせいでチートディーラーがバフモリモリ状態になり、宵闇ヤミの従魔達の攻撃がなかなか決まらない。
「まずは邪魔な周りを倒す。レギマンダー、【
鬼童丸の指示により、レギマンダーが発動した【
これで邪魔者は消えたから、後はチートディーラーを倒すだけだ。
チートディーラーは【
「ドラクール、【
その指示に従い、ドラクールは
ドラクールの能力値は元々チートディーラーよりも高かったこともあり、バフが上乗せされてもこちらもバフが上乗せされているためチートディーラーにダメージが入った。
帯電した硬貨がチートディーラーにぶつかった瞬間に爆散し、その後に
そうしている内に1分が経過し、【
「この時を待ってたよ!」
宵闇ヤミはここぞとばかりにセットコマンドを使い、ワイローンをはじめとする従魔達にチートディーラーを攻撃させる。
能力値的を考えれば倒せるはずだったのだが、チートディーラーは【
(そのクールタイムを待ってたんだ)
「ドラクール、【
一撃で倒せる残りHPだと判断し、鬼童丸はドラクールが使える最強のアビリティでチートディーラーを打ち抜いた。
チートディーラーのHPが尽きてそのカードだけが地面に残った。
本来であればこのまますぐにシステムメッセージが届くはずなのだが、今は光の壁の向こうで掃除屋レイドバトルが行われていて戦闘終了のシステムメッセージが出ない。
光の壁が消えたことで、鬼童丸と宵闇ヤミも掃除屋レイドバトルに参戦できるようになる。
「俺達も参戦する」
「助かる! そろそろ耐久戦もしんどくなって来たところなんだ!」
検証班全員が協力しても、ガシャドクロを倒すには全然火力が足りなかったようでガシャドクロのHPは2割弱しか減っていない。
それに対して検証班メンバーの従魔はと言えば、ポーションやポーションⅡ型でどうにか耐え凌いでいるようだった。
ちなみに、前回の掃除屋レイドバトルはボス戦と被ったせいでイレギュラーなことになっていたが、通常の掃除屋レイドバトルは乱戦モードと同様でターン制ではない。
したがって、ガシャドクロの動きをどうにか封じ込めなければ、延々とガシャドクロの行動を許してしまうことになる。
だからこそ、検証班はガシャドクロに対して有効な手段が特になかったから、地道にダメージを与えて鬼童丸と宵闇ヤミが参戦するまで耐え凌ぐ選択をした訳だ。
宵闇ヤミはダメージを稼ぐべく、早速セットコマンドを使って自分に有利になるような準備をしつつダメージを与え始める。
具体的には、ゲイザリオンの【
(ただ見てるだけなのはつまらないし、俺もちゃんと戦おう)
鬼童丸が完成されたセットコマンドを使った瞬間、味方全体のバフはさておき敵へのデバフが他のプレイヤーにも恩恵があった。
宵闇ヤミの参戦で更に1割ガシャドクロのHPが削れ、鬼童丸の参戦でガシャドクロのHPが半分まで削られた。
「圧倒的じゃないか新人戦優勝準優勝コンビは!」
「これで勝つる!」
「ハイパーわからせタイムの始まりや!」
(おいおい、余計なこと言うなよ。そんなこと言ってると…)
その瞬間、ガシャドクロの骨の色が赤く染まり始めて第二形態になった。
どうやら今までの戦いは前座だったようだ。
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