第62話 シリーズもののクエストってのは定番だな
仕事を終えて帰宅し、食事や身支度を済ませた久遠はUDSに鬼童丸としてログインする。
都庁でログインした鬼童丸にタナトスが近寄って来る。
「鬼童丸、少し良いか? 偵察で知った情報を伝えておきたい」
「偵察してたのか。どんな話?」
「他所で統治したエリアを放置した結果、こっそり紛れ込んでいたヘルストーンが暴発して再びアンデッドモンスターが徘徊するようになったケースがあった」
「そのエリアって何日放置されてたんだ?」
「3日だ。統治権を持つネクロマンサーが3日放置していたことで、地獄の獄先派がチャンスと思って仕掛けたらしい」
(3日ログインできないとそんなことになるのか。まあ、わからんでもないけど)
鬼童丸はデーモンズソフトの考えを読んで納得した。
デーモンズソフトがいくら尖ったゲームを開発するからと言って、遊んでくれるプレイヤーがいなくなればゲームとしての価値はなくなる。
それゆえ、スタートダッシュに乗れなかった者達や後発組に対する救済策として、統治権を有するプレイヤーが3日ログインしなかった場合に統治権が剥奪することにしたのだ。
これはアップデート後の運用変更として実装されており、鬼童丸がゲームにログインする前にワールドアナウンスが出ていたのだが、日中は仕事をしているので鬼童丸はそれを知らなかった。
だからこそ、その救済措置としてタナトスが鬼童丸にワールドアナウンスの代わりとして知らせてくれたということだ。
「なるほどね。でも、そうなると俺もどんどん外のエリアに行くってスタンスは変えた方が良いか?」
「いや、その必要があるとは限らない。地獄の親人派が獄先派に対抗する手段を用意してくれたからな」
「対抗手段?」
「その通りだ。ネクロマンサーに戦闘系クエストと生産系クエストが与えられるようになり、生産系クエストが進められることで統治したエリアが発展して獄先派が手出ししなくなる。つまり、クエストさえ進行すればまだ統治されていないエリアを統治しに行っても問題ない」
(遊び要素の追加か。実際には戦闘系ネクロマンサーと生産系ネクロマンサーの分化を狙ってるっぽいけど)
タナトスの説明からして、今までは戦闘メインだったUDSにおいて生産要素を実装することで、デーモンズソフトは戦闘は向いていない層や戦闘にはあまり興味のない層も取り入れようとしているのだろうと鬼童丸は推察した。
そうなると、生産系ネクロマンサーを目指すプレイヤーを自分の陣営に取り入れたいところだが、生憎その当てはパッと思いつかないから先に生産系クエストがどんな物なのか確かめることにする。
「そうか。じゃあ、一旦は生産系クエストでも見てみようかな」
「わかった。今のところこんな感じだ」
鬼童丸のリクエストに応じ、タナトスは親人派が用意した生産系クエスト一覧を表示してくれた。
-----------------------------------------
クエスト:生存者達に仕事を与えよう
ジャンル:生産
達成条件:統治権のあるエリアの生存者達に仕事を与える
失敗条件:生存者達の好感度が低くて動かないまま3日が経過する
報酬:統治するエリア数×10,000ネクロ
-----------------------------------------
-----------------------------------------
クエスト:ポーションを作ろう
ジャンル:生産
達成条件:ポーションの作成
失敗条件:なし
報酬:1,000ネクロ
-----------------------------------------
-----------------------------------------
クエスト:MPポーションを作ろう
ジャンル:生産
達成条件:MPポーションの作成
失敗条件:なし
報酬:1,000ネクロ
-----------------------------------------
-----------------------------------------
クエスト:キュアポーションを作ろう
ジャンル:生産
達成条件:キュアポーションの作成
失敗条件:なし
報酬:1,000ネクロ
-----------------------------------------
(各種ポーションを作るのは定番だとして、生存者達に仕事を与えるとはざっくりしてるな)
生産系クエスト一覧を見た感想として、鬼童丸は生存者達に仕事を与えるクエストが気になった。
各種ポーションを作るのとは異なり、このクエストはNPCを動かすからだ。
とりあえず、全て受注してNPCに仕事を与えてみることにした。
<鏖殺子爵(新宿・文京・中野・荒川・杉並・武蔵野)>と<新人戦チャンピオン>があるから、NPCの好感度はばっちりであり、鬼童丸は各拠点に赴いて生存するNPCを集めて指示をした。
それによってNPC達は着々と仕事に移っていき、あっという間に生存者達に仕事を与えようというクエストをクリアした。
(シリーズもののクエストってのは定番だな)
一度クリアしただけでエリア内が復興するはずもなく、生存者達に仕事を与えるクエストが鬼童丸の視界に同名のクエストその2が追加された。
しかし、生存者達に仕事を与えるクエストは1日に1回しか受けられないから、続きを受けるには日付が変わって明日になるまで待たなければならない。
デイリー生産系クエストをちゃっちゃと済ませたら、そろそろ約束の午後7時50分だったので宵闇ヤミと合流する。
宵闇ヤミはUDSにログインしており、鬼童丸が都庁に戻ったらそこにいた。
「あっ、鬼童丸さん。こんばんは」
「こんばんは。弁当はありがとう。ハートマークはなしでお願い」
チャットでもお礼は言ったけど、改めて鬼童丸は宵闇ヤミに今日作ってもらった弁当のお礼を述べた。
もっとも、ハートマークに対する抗議もワンセットなのだが。
「私の気持ちを視覚から訴えてみたんだけど」
「他の社員に見られた時に詮索されるのめんどい。それはそれとして材料費払うよ」
「良いの。これは私とシェアハウスすることのメリットをアピールするための営業だから」
「そりゃ料理が美味しいのはポイント高いけどさ、なんで俺とシェアハウスしたいの?」
「鬼童丸さんが部屋を持て余してるし、私の仕事にも理解があるからだよ」
昨日述べた理由と同じ理由を述べる宵闇ヤミに対し、鬼童丸はまだ疑問を解消できていない。
それでも、午後8時からコラボ配信が始まるからこの話は一旦中断してコラボ配信の動きをサクッと確認した。
そして、午後8時になって宵闇ヤミの配信が始まる。
「こんやみ~。今日はサプライズコラボじゃなくてちゃんとコラボする悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す」
昨日はメリーさんネタをやりたいというだけで鬼童丸に逆凸したけれど、今日は最初から鬼童丸がいるのでちゃんとしたコラボ配信である。
ヤミんちゅ達は鬼童丸が配信の最初からいるのは久し振りな気がしたので、待ってましたと歓迎するコメントが多かった。
「じゃあ、鬼童丸さんからも挨拶をお願い」
「どうも、称号に物を言わせてデイリー生産系クエストを終わらせた鬼童丸だ。よろしく」
「デイリー生産系クエストって生存者に仕事を与えるってやつ?」
「それだよ。エリアごとに拠点があるから6回指示を出してあっという間に終わった」
「だから都庁周りが少し片付いたんだね」
宵闇ヤミの言う通りで、都庁周辺の瓦礫が片付けられて少し景観がマシになった。
これはデイリー生産系クエストの影響だから、毎日繰り返すことで瓦礫もあるゴーストタウンが徐々に元に戻って行くかもしれない。
「まあね。宵闇さんのところはどう?」
「鬼童丸さんの称号には負けるから、生存者達の仕事の進捗はもっと緩やかだよ」
「称号によってあのクエストの完了までに時間と進行度が変わるのか。地味に発見だな」
「だね。ジョブホッパーさんが喜びそう。それはそれとして、今日は鬼童丸さんと一緒に三鷹市に挑むよ。墨田区から東は他のプレイヤーさんに統治されてたから、遊べるところを求めて鬼童丸さんに同行するんだ」
ちなみに、西東京市と国分寺市は既に統治されており、まだ統治されていない三鷹市に挑む訳だ。
鬼童丸達は武蔵野市まで転移魔法陣で移動し、そこからフロストヴィークルを【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます