第30話 ドラピールは俺の従魔だ
美形のアンデッドモンスターが現れたことで、宵闇ヤミもヤミんちゅ達も驚きを隠せない。
「UDSにこんな美形なキャラがいるの!?」
「いたらしいな。ドラピールって言うらしい」
鬼童丸のコメントを受け、ヤミんちゅ達は宵闇ヤミの配信で大盛り上がりしている。
「コメント欄でドラピールは俺の嫁ってコメントが大量生産されてることについて一言どうぞ」
「ドラピールは俺の従魔だ」
「従魔?」
「配下のアンデッドモンスターっていちいち呼ぶのが長い。従うモンスターだから従魔。短くて良いだろ?」
「それはそう」
呼びやすい名前の方が助かるのは事実なので、宵闇ヤミは従魔という呼び名に賛成した。
ドラピールの変化に驚かされたのは間違いないが、変化したのはドラピールだけではないから宵闇ヤミはデスライダーに目を向ける。
「鬼童丸さん、ジェネラルライダーは何に進化したの?」
「こいつはデスライダーだ。中野区でデスナイトを倒したんだが、その状態でレベル上限に到達することでジェネラルライダーが特殊進化したんだってさ」
「倒した敵によって特殊進化先が現れるのも良いよね。ジェネラルライダーはジェネラルゴブリンゾンビがグリムハウンドに騎乗してたけど、デスライダーはデスナイトが蛇の尻尾を持つグリムに騎乗してるって感じかな?」
「そうだな。デスライダーもがっつり見た目が変わったよ」
そう言いながら鬼童丸はデスライダーのステータスを確認する。
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種族:デスライダー Lv:1/75
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HP:2,400/2,400 MP:2,400/2,400
STR:2,500(+100) VIT:2,500
DEX:2,400 AGI:2,500
INT:2,400 LUK:2,400
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アビリティ:【
【
【
装備:ブラッディブッチャー
備考:なし
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外見の変化もそうだが、武器がトマホークから血塗られた首切り包丁になっている。
それがデスライダーの不気味さをマシマシにしていると言える。
「デスライダーは地獄の使者だって言われたら信じちゃう見た目だよ」
「確かにそうかもな。俺の従魔はさておき、宵闇さんの従魔もレベル上限に達したんじゃないの? どうなった?」
「フッフッフ。私の従魔を見て驚くと良い! ワイローンとグリキュラだよ! ワイローンはキャストライダーが特殊進化して、グリキュラはグリムロスから進化したの!」
ワイローンの見た目は黒い骨で構成されたケンタウロスであり、手にメイスを持っている。
馬の骨の下半身があるから、そこにネクロマンサーを乗せられそうだ。
グリキュラは6つのグリムハウンドの首が腰部から左右に3つずつ生えており、上半身は人間で顔に白い無表情の仮面、下半身が灰色の魚という外見になっている。
おそらくモチーフはスキュラなのだろうと鬼童丸は判断した。
「従魔がパワーアップ進化したのは良いとして、宵闇さんはのレベルはどうなった? 俺はLv40になったけど」
「ヤミはLv38だよ。残念ながら5体目の枠は解禁されてない。でも良いの。手に入れたカードで
「あぁ、そうだったな。レギオンと何を融合するんだ?」
「勿論、キングゴブリンゾンビだよ。早速やるね!」
宵闇ヤミはメニュー画面のモンスターカード一覧を開き、
レギオンとキングゴブリンゾンビのカードが合体するエフェクトが発生し、融合アンデッドが誕生した。
手の中にある融合アンデッドを鬼童丸とヤミんちゅ達にお披露目するべく、宵闇ヤミはすぐに新たな融合アンデッドをこの場に召喚する。
「
召喚されたゲイザスは体に無数の目を持つ巨人のゾンビであり、モチーフはアルゴスであることが予想できた。
レベル上限は75であり、レギオンとキングゴブリンゾンビを
「デバフもできるタンクとは良いね」
「うん!」
鬼童丸にゲイザスを褒められて宵闇ヤミは喜んだ。
そこにトーチホークに乗ったタナトスとヘカテーがやって来て、ボックスイーターによって汚されていない場所に着陸した。
そして、気を失っているダストは地獄の門からやって来た複数の死霊によって門の中に連れ去られる。
今までの害悪ネクロマンサー達と違い、やられたショックで気絶していたダストは静かに連れ去られたため、鬼童丸や宵闇ヤミにとって不思議な感じがした。
地獄の門が消えたところで、ヘカテーが宵闇ヤミに話しかける。
「タナトスの弟子の力を借りて無事に<奮闘する荒川区長>になれたようね」
(宵闇さん、また奮闘する区長なのか)
ヘカテーの言葉を聞き、鬼童丸は宵闇ヤミのボス戦で手に入れた称号が<奮闘する荒川区長>だと知る。
文京区でも荒川区でも奮闘していたのは事実だから、とりあえず鬼童丸は何も言わずにそういうものなのだと思うことにした。
ヘカテーと宵闇ヤミが話している間、タナトスも鬼童丸に用事があって話しかける。
「鬼童丸、其方は3日後に開催される地獄主催のイベントに参加したいか?」
「地獄主催のイベント? どんな?」
「新人ネクロマンサーの腕試しだ。言わば新人戦だな」
タナトスは新人戦について開示できる範囲で説明し始める。
新人戦はUDSのサービス開始から1週間経った明々後日の土曜日に開催される。
全国各地にいる新人ネクロマンサーが特別ステージに招待され、そこで腕を競い合うというところまで鬼童丸は教えてもらえた。
なお、他の新人ネクロマンサー達も同じ情報しか与えられないため、事前情報で差が付かないようになっていることもタナトスは説明した。
「面白そうだから出る」
「そうか。では、私の方で参加する旨を答えておこう。当日に備えてしかと鍛えておくが良い」
「そうするよ」
「よろしい」
タナトスは話を切り上げ、同じタイミングで話を切り上げたヘカテーと共にトーチホークに乗って飛んで行った。
ヘカテーから新人戦の話を聞いたらしく、宵闇ヤミは悲しそうな表情で鬼童丸に話しかける。
「鬼童丸さん、新人戦まではコラボ配信は駄目だよね?」
「流石になぁ。宵闇さんの配信を見てるUDSプレイヤーもそこそこいるから、コラボ配信で手の内を晒すのは大会までなしかな」
「だよねぇ…」
宵闇ヤミが配信をするにあたり、宵闇ヤミの従魔のステータスは配信画面に表示されても鬼童丸の従魔のステータスは表示されない。
そうだとしても、共に戦闘していれば使えるアビリティは割れてしまう。
現状ではアビリティの大半が割れていたとしても、レベルアップの過程でアビリティが変われば事前情報に踊らされる者も出て来るかもしれない。
今日の配信までは仕方ないとしても、明日と明後日は鬼童丸がコラボ配信に出演すると新人戦で不利になるから、新人戦で優勝を狙うならコラボ配信に出演しようとはまず考えないのだ。
コラボ配信ができないのは悲しいけれど、1人のゲーマーでもある宵闇ヤミは鬼童丸に無理強いしたりしない。
「すまんな。まあ、次は土曜日の新人戦でお互いに強くなった姿を披露しようや」
「そうだね。次会った時に鬼童丸さんの顎が外れるぐらい強くなっとくから楽しみにしててね」
「おう。俺も容赦なく他のネクロマンサー達を蹂躙できるように強くなる」
「程々にして!」
この叫びは宵闇ヤミだけでなく、配信を見ているヤミんちゅ達の叫びでもあった。
締めるには良い感じの空気の中、話が終わったようなのでと荒川総合スポーツセンターに避難していたNPCの代表者が鬼童丸達の前に現れ、助けてくれたことの感謝と施設の案内を申し出た。
シリアスブレイカーであるそのNPCの登場に対し、鬼童丸と宵闇ヤミは思わず笑ってしまい、施設の案内が終わってから改めて宵闇ヤミの配信が終わった。
鬼童丸もログアウトし、寝る準備をしながら土曜日の新人戦をどう進めるか考えるのだった。
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