第28話 おやおや? 自分の失策を人のせいにするなんて程度が知れてるね!
鬼童丸達が乗る車は荒川総合スポーツセンターの近くまでやって来た。
どういう訳かアンデッドモンスター同士が戦っており、この場に到着した瞬間から鬼童丸達の視界は乱戦モードに切り替わっていた。
「うわっ、これはヤバいな。どんだけ数がいるんだよ」
「鬼童丸さん、あそこを見て。害悪ネクロマンサーとボスアンデッドが戦ってる」
「害悪ネクロマンサーがボスを使役しようって考えてるんだろ。ここは第三勢力として参戦するのが楽しそうだ」
両陣営が弱ったところで漁夫の利を得るのではなく、両陣営とも潰す方が楽しいという鬼童丸の発言は宵闇ヤミにとって頼もしかった。
害悪ネクロマンサーが使役しているアンデッドモンスターはスカルニャルラピードであり、上半身が人型の骨格で、下半身が百足のような見た目の化け物だ。
それに対して、荒川区のボスアンデッドモンスターはキングゴブリンゾンビだ。
ジェネラルゴブリンゾンビよりも一回り体が大きく、頭の上には禍々しいオーラを放つ王冠が乗っている。
荒川区に入って早々に戦ったゴブリンゾンビ系の大群は、ボスであるキングゴブリンゾンビの配下のようだ。
「レギオンと
「キングゴブリンゾンビかな。スカルニャルラピードじゃ
「わかった。じゃあ、害悪ネクロマンサーは俺が対応するから、キングゴブリンゾンビは宵闇さんの担当ってことで。他の
「了解!」
鬼童丸達は使役するアンデッドモンスター達をこの場に召喚し、セットコマンドで指定した最高火力のアビリティを一斉に使って敵の数を減らしていく。
第三勢力の参戦により、キングゴブリンゾンビと害悪ネクロマンサーは鬼童丸達に気がついた。
「おい、このダスト様の邪魔すんじゃねえ!」
「もう一度一斉攻撃だ」
鬼童丸はダストと名乗る害悪ネクロマンサーの言葉を無視して、鬼童丸はセットコマンドを使わずに指示を出す。。
「リビングダンサーが【
リビングダンサーのおかげで場が整ったら、ドラミーとジェネラルライダー、レギランプが敵の大群の数を一気に減らしていく。
「ヤミ達もやるよ!」
鬼童丸に好き勝手させると経験値が奪われてしまうから、宵闇ヤミはセットコマンドであらかじめ準備した攻撃を指示した。
ボスであるキングゴブリンゾンビに辿り着くために、宵闇ヤミも戦って
「おいおいおい! ダスト様が集めた下僕をボコスカ減らすんじゃねえよ! スカルニャルラピード、【
【
ドラミーとレギランプは空を飛んでいるから、鬼童丸の使役するアンデッドモンスターでダメージを受けたのはジェネラルライダーとリビングダンサーだけだ。
(ジェネラルライダーの【
【
ところが、ダストが冷静にこちらの嫌がる指示を出したのだから、ダストもそこそこ頭は使えるようだ。
「ドラミー、【
ダストの頭が切れたとしても、戦うのは使役されたアンデッドモンスターであってダスト自身ではない。
それゆえ、鬼童丸はドラミーの【
そうすることで命中しやすくなったから、レギランプに【
「チッ、冗談じゃねえぞ! こいつを使わせたことを後悔させてやる!
ボックスイーターと呼ばれたモンスターだが、その見た目は脈動する肉で構成された宝箱だ。
ダストがボックスイーターを召喚したがらなかった理由はすぐに明らかになる。
ボックスイーターの蓋が開いたと思えば、そこから無数の触手が現れて荒川総合スポーツセンター前に集まる
アンデッドモンスター達を喰らう毎に体が少しずつ大きくなり、触手の数も増えていく。
(不味い、スカルニャルラピードは食わせちゃいけない!)
「ジェネラルライダー、【
スカルニャルラピードがボックスイーターに食われてしまったら、スカルニャルラピードのカードが手に入らなくなってしまう。
それではダストを倒しても報酬が減るようなものだから、ジェネラルライダーの斬撃でスカルニャルラピードに迫る触手を切断し、ドラミーの攻撃でスカルニャルラピードにとどめを刺した。
これでリザルト発表の時にスカルニャルラピードのカードは確保できた。
その行動はダストにとって不愉快なものだった。
「ふざけんなよクソが! これじゃあボックスイーターが不完全なままじゃねえか!」
「おやおや? 自分の失策を人のせいにするなんて程度が知れてるね!」
ダストが冷静じゃなくなれば自分に有利だから、鬼童丸はわざとダストを怒らせるような言葉を返す。
目論見が狂ってイライラしている今、ダストは頭に血が上りやすくなっていてその挑発に乗ってしまう。
「んだとゴラァ! 舐めたこと言ってっと口の中に手を突っ込んで奥歯ガタガタ言わせっぞゴラァ!」
「できないことをギャーギャー喚くなよ。みっともない」
「ボックスイーター、【
ダストがその指示を出した瞬間、ボックスイーターの触手が砲身を形成してレーザービーム張りに吐瀉物を発射する。
「ジェネラルライダー、【
【
ジェネラルライダーに当たらなかった【
それにより、破損率が一気に25%まで上昇してしまった。
(あと3発撃たれたら終わるぞ。いや、その前に中にゾンビが入れるようになっちまった)
数字だけ見ればまだどうにかなるが、実際には荒川総合スポーツセンターの壁が融けて大きな穴が開いてしまい、そこからアンデッドモンスター達が入れるようになってしまった。
これはさっさと戦いを終わらせなければならない。
「ドラミー、【
しばらく吐き出せるものもないと判断し、鬼童丸はドラミーに大技を発射して隙だらけのボックスイーターを攻撃させた。
硬竜牙棍がクリーンヒットし、ボックスイーターが後ろにひっくり返ってダウン状態になった。
追撃のボタンが現れたため、鬼童丸は迷わず押す。
「総員攻撃!」
ダウン状態のボックスイーターを袋叩きにすれば、HPが0になって力尽きる。
使役できるアンデッドモンスターがいなくなったことで、ダストは膝から崩れ落ちた。
既に気を失っており、完全に無力化されていると言えよう。
(あっちはまだ余裕がありそうだし、地獄に連行される前に目ぼしいものは回収しておこう)
いつもは害悪ネクロマンサーを倒した時、その持ち物を回収できないまま地獄に連行されてしまうが、今はまだ宵闇ヤミがキングゴブリンゾンビと戦闘中のおかげでタナトスがやって来ない。
ダストが起きても何もできないようにするためという名目もあるので、鬼童丸は気絶しているダストの身ぐるみを剥いで使える者は回収した。
使えば良いのに取っておいたらしいHPポーションやMPポーション、携帯食料が見つかったため、鬼童丸は思わぬ成果に心の中でガッツポーズした。
ダストが危険な品を持っていないことを確認すると、鬼童丸はドラミー達と共に戦闘中に開いてしまった壁の穴の前に陣取り、宵闇ヤミの戦いが終わるのを見守り始めた。
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