第27話 物欲センサーってね、本当に感度が良いの
ヤンデレムーブする宵闇ヤミに対し、コメント欄ではヤミんちゅ達がそのリアクションを待ってましたと言わんばかりに投稿していく。
VTuberとしての名前がダークサイド寄りなので、ヤンデレキャラは宵闇ヤミに向いているというのがヤミんちゅ達の見解らしい。
その一方、宵闇ヤミは鬼童丸に声をかけられて正気に戻ったから、変な空気になったことを詫びて会話を続ける。
「ごめんね。じゃあ、中野区のボス戦は鬼童丸さんとヴァルキリーで一緒に挑んだのに、光の壁で分断されたってこと?」
(しれっとヴァルキリーが呼び捨てになってる。さては敵意が消えてないな?)
そんなことを思いつつ、鬼童丸はそれについて指摘しても仕方ないからスルーして質問に答える。
「そういうこと。分断された状態でそれぞれ
ボス戦が協力プレイできるとは限らないという情報は、地味に初出だったから検証班に加入しているヤミんちゅが検証班全体にその情報を知らせた。
鬼童丸は情報の塊だから、宵闇ヤミと鬼童丸のコラボ配信は検証班にとって貴重な情報収集の時間だったりする。
「そういえば、鬼童丸さんって4体目のアンデッドモンスターはどうした?」
「ん? レギランプって融合アンデッドにした。一緒に倒したレギオンとガチャで手に入れたデッドリーキャンドルを
「ガチャ、また良い引きしたんだね」
「その反応、もしかしてまた爆死したの?」
先程の進捗確認において、宵闇ヤミがLv33になったのに使役するアンデッドモンスターの数が3体だったから鬼童丸はおかしいと思っていた。
その原因が今わかり、鬼童丸は苦笑するしかなかった。
宵闇ヤミも鬼童丸と似たようなことを考え、レギオンとガチャ専用アンデッドモンスターを
「物欲センサーってね、本当に感度が良いの」
「…元気出せよ。今日の配信で素材になりそうなアンデッドモンスターを一緒に探してやるから」
「うん♡」
鬼童丸の申し出を受けて機嫌が良くなり、それどころか語尾に♡が付いているテンションで反応するものだから宵闇ヤミが雌化しているとヤミんちゅ達はコメント欄で指摘した。
宵闇ヤミはそれには触れず、荒川区に入った途端に現れたアンデッドモンスターの大群に対応するべく車を停める。
「おぉ、これは昨日の中野区よりも酷いな」
「昨日よりも悪化してるね。UDSってサービス開始から日が経つ毎に難易度が上がってくんだもん。恐ろしいゲームだよ」
「それもプレイヤーを飽きさせない工夫ってことだろ。
鬼童丸が4体のアンデッドモンスターを召喚すれば、宵闇ヤミも経験値稼ぎで出遅れたくないから自分のアンデッドモンスター達を召喚する。
「
ゴブリンゾンビがメインのこの大群だが、所々にジェネラルゴブリンゾンビがいる。
隠しボスだったジェネラルゴブリンゾンビも
だがちょっと待ってほしい。
強くなっていると言ってもレギランプよりも格下なので、敵が格下の
「レギランプ、【
鬼童丸の指示でジェネラルゴブリンゾンビの1体が爆発し、それが率いてたらしいゴブリンゾンビ達もまとめて吹き飛んだ。
1つのアビリティでダース単位の敵が吹き飛べば、宵闇ヤミも抗議せざるを得ない。
「そんなの反則ぅぅぅぅぅ!」
「反則じゃない。仕様だ」
「みんな頑張って! これじゃ経験値稼ぎで負けちゃうよ!」
セットコマンドで最大火力の攻撃を仕掛ける宵闇ヤミだが、鬼童丸はレギランプに【
ドラミーとジェネラルライダー、リビングダンサーを召喚している理由は経験値分配のためだ。
戦闘に出ていないアンデッドモンスターに経験値は分配されないから、そうならないように鬼童丸は考えている。
3分間ぐらい戦い続けた後、ようやく視界に敵アンデッドモンスターが見当たらなくなり、システムメッセージが鬼童丸の耳に届く。
『鬼童丸がLv36に到達しました』
『ドラミーがLv37からLv41まで成長しました』
『ジェネラルライダーがLv37からLv41まで成長しました』
『リビングダンサーがLv35からLv38まで成長しました』
『レギランプがLv28からLv31まで成長しました』
『ゴブリンゾンビを144枚、ジェネラルゴブリンゾンビを12枚手に入れました』
システムメッセージが鳴り止んだ後、鬼童丸は宵闇ヤミの方を向く。
経験値を荒稼ぎしてしまったから、宵闇ヤミが怒っていないか気になったのだ。
「フフ、これでまた11連ガチャを回せる」
(すっかりギャンブルに嵌っちまったか。中立派の餌食になってそう)
「またガチャを回す気か?」
「わ、私だって鬼童丸さんみたいにガチャ限定アンデッドモンスターが欲しいんだよ。次で10回目だからそろそろ何か当たっても良いと思うの」
「ギャンブル沼にズブズブじゃねえか。というか、ガチャって師匠がいなきゃ回せないんじゃないの?」
「そんなことないよ。メニュー画面からガチャはできるの」
宵闇ヤミの言っていることが事実かメニュー画面を開いてみると、確かにメニュー画面にガチャの項目が追加されていた。
どうやら鬼童丸はガチャにそこまで固執していなかったせいで、メニュー画面からガチャができることを見落としていたようだ。
「知らんかったわ」
「それはUDSライフの半分を損をしてる」
(タナトスが教えてくれなかったのは、俺が今の宵闇さんみたいになるのを防ぐためだろうな)
タナトスがアンデッドガチャ、もっと言えば中立派に対して良い感情を抱いていないから、タナトスは鬼童丸からメニュー画面にガチャと表示されることを教えてもらえなかった。
それについて鬼童丸は損をしているとも思っていなかったから、タナトスがUDS内において常識的なサポートAIなのだろうと判断した。
それはそれとして、ヤミんちゅ達に背中を押されて宵闇ヤミはアンデッドガチャを回し始める。
「ヤミは今度こそ当たりを引くんだ! 出でよ撮れ高! 来い来い撮れ高!」
宵闇ヤミとヤミんちゅ達はガチャのアニメーションを見ながら両手を組んで祈る。
ところが、その結果は演出からして惨敗だったらしく膝から崩れ落ちてしまった。
「どうしてだよぉぉぉぉぉ! 10回も11連ガチャを回してるのにぃぃぃぃぃ!」
このリアクションにはヤミんちゅの中に紛れ込んでいた愉悦勢も大喜びで、コメント欄に赤ワインのスタンプが次々に投稿された。
『宵闇ヤミが日本サーバーで初めて11連アンデッドガチャで10回爆死しました』
(えっ、こんなワールドアナウンスまであんの? 運営も愉悦勢かよ…)
「うわぁぁぁぁぁん!」
あまりにも恥ずかしいワールドアナウンスが流れてしまい、宵闇ヤミは立ち上がって鬼童丸に泣きついた。
「あぁ、よしよし。元気出せって。撮れ高はばっちりだぞ」
「うぅ、今は撮れ高よりも優秀なアンデッドモンスターが欲しいの」
「まあまあ。害悪ネクロマンサーがいたら譲ってあげるから元気出そうぜ。な?」
「…うん」
害悪ネクロマンサーは強いアンデッドモンスターを従えている可能性が高い。
それならば、レギオンと
鬼童丸に宥められている宵闇ヤミを見て、ヤミんちゅ達はコメント欄に鬼童丸パパというコメントを次々に投稿していた。
リアルタイムでその表示を見られないため、鬼童丸は自分がコメント欄でヤミんちゅ達になんて言われようと関係なく振る舞う。
宵闇ヤミが落ち着きを取り戻してから鬼童丸達は車に乗り込み、しばらく進んで行くと前方に荒川総合スポーツセンターに向かうアンデッドモンスターの大群を見つけた。
荒川総合スポーツセンターは宵闇ヤミがヘカテーから確保しろと言われた施設であり、宵闇ヤミはアクセルをベタ踏みして先を急いだ。
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