第22話 お前が井の中の蛙だからだよ
再び車に乗り込んで先に進めば、中野セントラルパークまでやって来た。
そこにはアンデッドモンスターの混成集団が控えていたが、その中心にクロウやドットのように害悪ネクロマンサーが仁王立ちで待っていた。
車を降りた鬼童丸にその人物が声をかけて来る。
「私の縄張りに手を出すつもり? この私がアワセ様だと知っての愚行か?」
アワセはクロウやドットとは違い、女性のNPCネクロマンサーだ。
女王ぶっている態度にイラッとしたため、鬼童丸はその感情を素直にぶつける。
「お山の大将が女王気取りとは笑わせる」
「あ゛? ぶっ殺してやる! お前達、クソ生意気な身の程知らずをわからせてやれ!」
「
画面が乱戦モードに切り替わり、アワセの命令で動き出したアンデッドモンスターの混成集団との戦闘が始まる。
「ドラミーは【
いずれも範囲攻撃であり、
道中に倒して来たアンデッドモンスターと同程度の強さしかなければ、数回攻撃を繰り返すだけで
「クソッ、使えない奴等ね! こうなったら私の本当の実力を見せてやるわ!
アワセが召喚したグラッジミキサーは融合アンデッドだ。
グラッジセティスよりも多くのグラッジと名の付くアンデッドモンスターを
百足の体に蟷螂の鎌、鍬形虫の顎、蛾の翅、を生やしたキメラであり、Lv50が上限で現在Lv25の融合アンデッドなのだから先程まで戦っていた
一度乱戦モードで始まれば、ターン制の戦闘にはならないから使役するアンデッドモンスターの数が多い鬼童丸の方が有利である。
「ジェネラルライダーは【
流れるような指示に従い、鬼童丸達のアンデッドが動き始める。
ジェネラルライダーがヘイトを稼いだことにより、グラッジミキサーがジェネラルライダーに向かった隙にリビングダンサーが味方を強化し、グラッジミキサーを弱体化した。
そこにドラミーが創り出した闇の棘が刺さって行動を制限すれば、レギランプの創り出した呪いの火がグラッジミキサーに纏わりついて継続ダメージを与える。
あまりにも綺麗に嵌ってしまったから、アワセは苛立ちを隠せなかった。
「おい! なんでこんなクソ生意気な身の程知らずに嵌められてるのよ! ちゃんとしなさいよ!」
「なんでこうなったか教えてやろうか?」
「あ゛?」
「お前が井の中の蛙だからだよ」
鬼童丸はセットコマンドを使い、予め設定しておいた味方の最大火力のアビリティをグラッジミキサーに命中させた。
強化された4体から集中攻撃されてしまえば、いくらアワセが自信をもって召喚したグラッジミキサーと言えども多勢に無勢だ。
グラッジミキサーは力尽きてカードになってしまった。
『鬼童丸がLv33に到達しました』
『鬼童丸が称号<中野の主>を獲得しました』
『ドラミーがLv26からLv30まで成長しました』
『ドラミーの【
『ジェネラルライダーがLv26からLv30まで成長しました』
『ジェネラルライダーの【
『リビングダンサーがLv24からLv28まで成長しました』
『レギランプがLv13からLv19まで成長しました』
『ゾンビパワードを50枚、ツイングリムを40枚、クライゴーストを20枚、スカルウォールを10枚、グラッジミキサーを1枚手に入れました』
乱戦モードからストーリーモードに画面が切り替わり、空からタナトスが現れる。
タナトスは亜空間から飛び出した骨の鎖でアワセを拘束した。
「鬼童丸、よくやったな。無傷で増長した愚か者を倒したのだから大したものだ」
「あいつが舐めプしてくれたおかげだよ。戦力の逐次投入は愚か者がすることだから」
「そうだな。愚かで傲慢な態度が勝敗を分けたのだろう。さあ、地獄のお迎えが来たぞ」
ギギギと音を立てて鬼童丸達の前に真っ黒で重厚な門が現れ、その門が開くといくつもの死霊が現れてタナトスが拘束していたアワセを門の中に連れ去る。
「放して! 止めなさい! 私を誰だと思ってるのぉぉぉ!」
アワセの叫び声は門が閉じたことで聞こえなくなり、そのまま門が消えた。
タナトスが一仕事終えたため、鬼童丸はタナトスに話しかける。
「タナトス、自分のアンデッドの装備してる武器って強化できないの?」
「強化は難しいな。武器や防具は<錬金術師>の称号を会得して合成するか、私が持ってる物をネクロと引き換えるしかない」
「<錬金術師>ねぇ。それってどうやったら獲得できるの?」
「ポーションを自作できれば獲得できる。まあ、今はアンデッドモンスターのレベル上げやエリアの掌握を優先するだろうから、追々手を出せば良い」
「そうだな。それじゃ、何か良い装備がないか見させてもらうよ」
そのように鬼童丸が言った瞬間、視界に新たなショップ画面のウィンドウが開かれた。
○換金レート
・ゾンビ1枚=スケルトン1枚=ゴースト1枚⇔10ネクロ
・ゾンビ派生種1枚=スケルトン派生種1枚=ゴースト派生種1枚⇔ゾンビ100枚⇔1,000ネクロ
・上記以外Lv30上限アンデッドモンスター⇔10,000ネクロ
○アイテムカード
・ポーション1枚 100ネクロ
・MPポーション1枚 100ネクロ
・携帯食料1枚 100ネクロ
・STRブースター1枚 1,000ネクロ
・VITブースター1枚 1,000ネクロ
・DEXブースター1枚 1,000ネクロ
・AGIブースター1枚 1,000ネクロ
・INTブースター1枚 1,000ネクロ
・LUKブースター1枚 1,000ネクロ
○装備
・硬竜牙棍 50,000ネクロ
・忘却将軍のトマホーク 30,000ネクロ
・踊り子の一張羅 25,000ネクロ
・暗殺者の仕込み靴 25,000ネクロ
(装備を全部買ったら余裕で11連ガチャ1回分を超えるんだが)
そんな風に思った鬼童丸だが、ガチャよりも確実に強くなる装備の方が即効性があると判断した。
「タナトス、装備全部買うよ」
「そうか。では、今使ってる装備を下取りすることで割引してやろう」
本来13万ネクロの出費になるところが、現在の装備を下取りしてもらうことで10万ネクロにしてもらえた。
この3万ネクロの割引は馬鹿にできない。
ドラミーの堅竜牙棍は硬竜牙棍に変わり、付与される効果はSTRとINTが+20から+50に上昇した。
ジェネラルライダーの将軍のトマホークは忘却将軍のトマホークに変わり、付与される効果はSTRが+20から+50に上昇した。
リビングダンサーの場合、踊り子の衣装と踊り子の仕込み靴は踊り子の一張羅と暗殺者の仕込み靴に代わり、付与される効果はSTRが+10から+20、VITが0から+20に上昇した。
レギランプは装備できないアンデッドモンスターのため、特に変更はない。
「<中野の主>になったのなら、なかのZEROに向かうと良い。あそこが中野区の拠点に相応しい」
「わかった。情報助かるよ」
「ああ。クエストを無事に達成することを祈ってるよ」
そう言ってタナトスはトーチホークに乗り、都庁へと帰って行った。
そろそろ自分も出発しようとしたその時、車が停まってその中からヴァルキリーが現れた。
「鬼童丸、もしかして害悪ネクロマンサーを倒しちゃった?」
「残念、一足遅かったな」
「くっ、寄り道し過ぎたか。でも、まだ<名誉中野区長>になる道は残ってるはず。統治権を狙うんでしょ? 一緒に行かせて」
(嫌だと言ってもごねられそうだし、仕方ないから連れて行くか)
ヴァルキリーの性格は理解できているので、鬼童丸はヴァルキリーの動向を許可することにした。
「わかった。ただし、俺の邪魔はするなよ?」
「わかってるって。私も転移魔法陣を設置させてほしいから、わざと足を引っ張ったりしないって」
「…そんなこと考えてたのか?」
「違うってば。リバースと一緒だったらそういう遊び方もあるけど、鬼童丸とはそんなことしないもん」
「さいですか。じゃあ、行こうか」
鬼童丸とヴァルキリーはそれぞれの車に乗り、なかのZEROに向かって移動し始めた。
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