第18話 やったか!?

 レギオンが第二形態に変化するとともに、鬼童丸と宵闇ヤミの視界も変化が生じる。


「鬼童丸さん、右上のゲージってなんだろう?」


「あからさまな変形からして、ドームの破損率じゃね?」


 宵闇ヤミの質問に鬼童丸が答えた直後、レギオンは体から生やした大砲で一斉に顔面幽霊弾と呼ぶべき攻撃を行った。


 それがドームに命中した瞬間に爆発し、鬼童丸達の視界に映るゲージが10%まで上昇した。


 これは【爆顔霊弾フェイスバレット】というアビリティなのだが、ターゲットに触れるまで爆発せず物理的には防げないという厄介な効果を持つ。


「おい、一度の一斉放射で10%とかシャレになんねえ! ジェネラルライダーは【挑発咆哮タウントロア】! リビングダンサーはレギオンに【落胆舞踏サゲサゲダンス】! ドラミーは【闇砲撃ダークキャノン】!」


 第二形態に変化したことにより、レギオンから稼いだヘイトがリセットされてしまったことに気づき、鬼童丸はジェネラルライダーに再びヘイトを稼がせる。


 それと同時にレギオンの能力値を全体的に減少させ、ドラミーの砲撃でダメージを与えていく。


 【闇砲撃ダークキャノン】の威力が命中し、それがレギオンの幽体を貫通した。


 幽体を再生中は攻撃ができないらしく、宵闇ヤミはそこに付け込んで攻撃する。


「回復タイムなんて許さないよ! グリムロスは【闇棘ダークソーン】! キャストライダーは【闇弾乱射ダークガトリング】!」


 グラッジセティスは【打消騒音キャンセルノイズ】で次の【爆顔霊弾フェイスバレット】を打ち消すための要員だから、グリムロスとキャストライダーの2体に攻撃を任せる。


 これにはドームを攻撃している場合ではないと判断したらしく、レギオンは【爆顔霊弾フェイスバレット】をヘイトを稼いでいるジェネラルライダーに向けて発射する。


「ドラミー、【闇砲撃ダークキャノン】で薙ぎ払え!」


 ジェネラルライダーに攻撃する時、最短距離で攻撃しようとしたせいで【爆顔霊弾フェイスバレット】は一直線に並んでジェネラルライダーに向かって放たれた。


 それをチャンスと捉え、鬼童丸はドラミーに【爆顔霊弾フェイスバレット】を攻撃させた。


 その結果、先頭の【爆顔霊弾フェイスバレット】が爆発したのを起点として後ろに続く【爆顔霊弾フェイスバレット】が連鎖爆発し、【闇砲撃ダークキャノン】の火力を強化状態で本体に届けてしまう。


「「「…「「グォォォォォ!」」…」」」


 鬼童丸の見事な迎撃を受け、レギオンの体は大爆発してそれに呑まれる。


 これでレギオンが倒れたのなら良いが、大爆発の影響でドームの破損率が10%上昇してしまう。


「やったか!?」


「それはフラグだろ。というかドームがやられたわ」


 宵闇ヤミが余計なフラグを立てるものだから、鬼童丸は冷静にツッコミを入れた。


 残念ながらフラグが回収されて、爆発が落ち着いた時にレギオンの体がハンドボールサイズまで圧縮されて赤みを帯びていた。


「第三形態になったらしいな。あっ、不味い! リビングダンサー、ジェネラルライダーに【高揚舞踏アゲアゲダンス】!」


「グラッジセティス、【打消騒音キャンセルノイズ】!」


 ジェネラルライダーの能力値の強化はどうにか間に合ったが、グラッジセティスの【打消騒音キャンセルノイズ】は間に合わずに第三形態になったレギオンが【闇砲撃ダークキャノン】をジェネラルライダーに命中させた。


 その攻撃でジェネラルライダーのHPが半分以上削れてしまい、鬼童丸は瞬時に対応する。


「ドラミー、【闇回復ダークヒール】でジェネラルライダーを回復! リビングダンサーは【混乱霧コンフュミスト】で時間稼ぎ!」


 【闇回復ダークヒール】はアンデッドモンスターのHPを回復させるアビリティであり、このおかげでジェネラルライダーのHPは満タンまで回復する。


 すぐに攻撃されては困るから、リビングダンサーに霧の中に閉じ込めた相手を混乱状態にする【混乱霧コンフュミスト】を使わせ、状態異常に耐性のないレギオンは混乱状態に陥った。


 混乱状態は50%の確率でアビリティに失敗し、それが攻撃するアビリティだった場合は失敗した際に自らダメージを受けてしまう。


 【闇砲撃ダークキャノン】を放とうとしたレギオンは、50%の確率であたりを引けずに自らを傷つけてしまった。


「グリムロスは【闇棘ダークソーン】! キャストライダーは【闇弾乱射ダークガトリング】で畳み掛けて!」


 ここぞとばかりに宵闇ヤミはグリムロスとキャストライダーに攻撃を命じた。


 しかし、第三形態になったレギオンのVITは上昇しており、2体の攻撃によって受けるダメージは僅かだった。


 【混乱霧コンフュミスト】の持続時間が切れてしまい、レギオンは全方位に【爆顔霊弾フェイスバレット】を放つ。


「ドラミー、ドームスレスレに【闇砲撃ダークキャノン】! リビングダンサーは自身を対象に【高揚舞踏アゲアゲダンス】!」


 全方位への攻撃だから、鬼童丸はドラミーにドームの壁になるような射線で【闇砲撃ダークキャノン】を撃たせ、比較的VITの低いリビングダンサーが力尽きないように自らの能力値を上げさせた。


 結果として、ドームの破損率は上昇しなかったものの、鬼童丸と宵闇ヤミのアンデッドモンスター達はいずれもダメージを負った。


 宵闇ヤミのアンデッドモンスター3体はギリギリのところで踏み止まったが、HPがごっそりと削られてしまった。


 鬼童丸のアンデッドモンスター3体は3割程HPを残しているものの、同じ攻撃をすぐに受けたら危険な状態だ。


 ただし、レギオンのHPも残り僅かだったことから、鬼童丸はAGI頼みの勝負に出る。


「ドラミー、【闇砲撃ダークキャノン】!」


 AGIはドラミーの方が勝っていたから、レギオンよりもドラミーの方が早く動ける。


 そう判断して指示を出した訳だが、鬼童丸のその選択は正解だった。


 レギオンの残ったHPを刈り取り、レギオンは自身のモンスターカードだけ残して消滅した。


『鬼童丸がLv27からLv30まで成長しました』


『鬼童丸が称号<名誉文京区長>を獲得しました』


『ドラミーがLv18からLv22まで成長しました』


『ドラミーの【闇砲撃ダークキャノン】が【暗黒砲ダークネスブラスト】に上書きされました』


『ジェネラルライダーがLv18からLv22まで成長しました』


『ジェネラルライダーの【潜影噛シャドウバイト】が【霊化噛ゴーストバイト】に上書きされました』


『リビングダンサーがLv12からLv18まで成長しました』


『リビングダンサーの【高揚舞踏アゲアゲダンス】と【落胆舞踏サゲサゲダンス】が【偉大舞踏グレートダンス】に統合されました』


『リビングダンサーが【闇付与ダークエンチャント】を会得しました』


『レギオンを1枚手に入れました』


 (UDSをスタートして一番苦戦しただけあって、かなり成長したなぁ)


 鬼童丸はシステムメッセージが鳴り止んだところで、順番にその内容をチェックし始める。


 <名誉文京区長>だが、文京区の統治権こそないが文京区での獲得経験値が1.5倍になると共に文京区に所属するNPCからの好感度が上がる効果がある。


 (俺が名誉職なら宵闇さんが本物の文京区長になれたんだろうな)


 称号の効果を確認したがゆえに、鬼童丸は宵闇ヤミが無事に文京区の統治権を得られただろうことを察した。


 それはそれとして、自身が使役するアンデッドモンスター達が強くなった上に新たなアビリティを会得したため、そちらについても確認する。


 ドラミーの【暗黒砲ダークネスブラスト】は【闇砲撃ダークキャノン】の上位互換であり、威力が底上げされて与えるダメージ量が増加した。


 レギオンを相手に【闇砲撃ダークキャノン】を連発したことで、もっと火力が必要であるとUDSに判断されたのだろう。


 ジェネラルライダーの【霊化噛ゴーストバイト】については、霊体であるレギオンに攻撃が通らないことを受けてジェネラルライダーの攻撃手段に幅が出た。


 騎乗しているグリムハウンドのゴーストが飛び出し、任意のターゲットにそのまま噛み付くというシンプルなアビリティだから、使い勝手は良さそうである。


 リビングダンサーの【偉大舞踏グレートダンス】だが、これは【高揚舞踏アゲアゲダンス】と【落胆舞踊サゲサゲダンス】を一本化して全体に影響させるアビリティだ。


 HPとMPを除き、味方全体の能力値を10%上昇させて敵全体の能力値を10%下降させる。


 これは素直にありがたいアビリティの変化と言えよう。


 また、リビングダンサーが純粋に会得した【闇付与ダークエンチャント】を使うことで、使われたアンデッドモンスターが霊体の敵に物理攻撃を当てられるようになり、闇属性攻撃による被ダメージ量が5%程減る。


 最後にモンスターカード一覧を確認したところ、レギオンも融合フュージョンできる候補がいくつかあった。


 融合フュージョンは気になるけれど、融合フュージョンを優先するよりも先にそろそろ自分に構えと視線で訴えて来る宵闇ヤミに話しかけた方が良さそうだ。


 文京区の扱いやらアンデッドモンスターの強化やらの相談があるだろうと判断し、鬼童丸は宵闇ヤミに話しかけることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る