第16話 ふぅ、強過ぎてごめん♪
東京ドームの駐車場に車を停め、鬼童丸と宵闇ヤミはわらわらとひしめくアンデッドモンスターの大群に戦慄する。
「どう見てもレイド規模じゃん」
「これは2人だけじゃキツイかな」
「それな。でも、だからこそ2人でやる」
「だよね! ここは配信者として頑張りどころでしょ!」
これはリアルの光景ではなく、あくまでもゲームなのだ。
楽しんだもの勝ちなんだから、普通じゃできない体験はやらなきゃ損という考えで鬼童丸と宵闇ヤミは乱戦モードに画面が切り替わってすぐにアンデッドモンスター達を召喚する。
「
「
既にアンデッドモンスターの大群は鬼童丸達を捕捉しているらしく、近くにいる者から駐車場に押し寄せて来る。
「ジェネラルライダーは【
鬼童丸が素早く指示を出すと、アンデッドモンスターの大群がジェネラルライダーだけを狙って駆け寄る。
リビングダンサーが【
ドラミーはジェネラルライダーに駆け寄るアンデッドモンスターの先頭の個体に狙いを定め、堅竜牙棍でフルスイングを決めた。
ターゲットがジェネラルライダーに絞られていたため、敵集団はがっつり密集していた。
それを逆手に取った鬼童丸の作戦により、ドラミーの攻撃は一撃で多くの敵をドミノ倒しにしてHPを奪った。
「爽快感半端ないな!」
「ヤミもやりたい! グラッジセティスは【
一瞬で数十体のアンデッドモンスターを倒した鬼童丸のやり方を見て、宵闇ヤミもおびき寄せ作戦を開始する。
グラッジセティスのVITを上げた後、宵闇ヤミ達を無視して鬼童丸達を攻撃しようとするアンデッドモンスター達の先頭の個体に突撃した。
ところが、鬼童丸達の稼いだヘイトを奪い切れなかったせいで上手くいかない。
「すまん! 俺の方でヘイトを稼いじまってるから、宵闇さんは敵集団の横っ腹から攻撃に専念してくれ!」
「ぐぬぬ、見せ場を完全に持ってかれてしまった。 こうなったら攻撃して攻撃しまくるぞい!」
少し考えればわかることなのだが、宵闇ヤミは敵集団のヘイトを完全に鬼童丸達に持っていかれていることを失念していた。
悔しいけれど、今はそうする以外にやれることがないから、宵闇ヤミは鬼童丸の指示通りに自分のアンデッドモンスター達を動かした。
その一方、鬼童丸はドラミーだけでなく、ジェネラルライダーに【
10分程その作業を続けていると、ようやく駐車場に集まって来るアンデッドモンスターに終わりが見えて来た。
東京ドームの敷地は広いから、敷地内にいる全てのアンデッドモンスターを倒せたとは思っていないが、一区切りつけられそうなのは間違いない。
「ドラミー、最後のオークゾンビに【
ドラミーの攻撃でオークゾンビの上半身が千切れ、オークゾンビはそのままカードになった。
『鬼童丸がLv23からLv27まで成長しました』
『鬼童丸が称号<ゾンビスレイヤー>と称号<スケルトンスレイヤー>を獲得しました』
『鬼童丸の称号<希望の新宿区長>と称号<ゾンビスレイヤー>、称号<スケルトンスレイヤー>が称号<
『ドラミーがLv12からLv18まで成長しました』
『ドラミーの【
『ジェネラルライダーがLv12からLv18まで成長しました』
『ジェネラルライダーの【
『リビングダンサーがLv4からLv12まで成長しました』
『リビングダンサーの【
『ゾンビとスケルトンを100枚、ゾンビパワードとポイズンゾンビ、スケルトンフェンサー、スケルトンメイジのカードを50枚ずつ、ゴブリンゾンビとグリムハウンドのカードを30枚ずつ、グラッジセンチピードとグラッジモスのカードを15枚ずつ、オークゾンビを10枚手に入れました』
(長いわ! どんだけお知らせあるんだよ!)
システムメッセージの量が多過ぎたため、鬼童丸は心の中でツッコんだ。
ジェネラルライダーとリビングダンサーの新たなアビリティは予想がつくから読むのを省略し、まずは< 鏖殺の新宿区長>から効果を見ていく。
この称号の持ち主は新宿区にいる時に与えるダメージ量が10%上がり、新宿区以外にいても与えるダメージ量が5%上がる。
敵対するアンデッドモンスターを多く倒した称号が内包されているため、新宿区に所属するNPCの好感度が大幅に上昇し、それ以外の地域でもNPCの好感度がやや上昇する。
マイナス要素がない称号だから、これは素直に嬉しい報酬と言えた。
次に【
命中した相手を倒しても、勢いが余ればその後ろに砲撃が貫通していくと考えると、
自分に関わるシステムメッセージを整理できたら、鬼童丸は待たせてしまっていたらしい宵闇ヤミに声をかける。
「待たせてすまん。いくつか確認事項があってな」
「それはしょうがないよ。ヤミが射撃ゲームをしている隣で鬼童丸さんは無双ゲームをしてたんだし」
頬を膨らませて拗ねているとアピールする宵闇ヤミを見て、その配信にいるヤミんちゅ達のことも考えた発言が求められていると鬼童丸は判断する。
「ふぅ、強過ぎてごめん♪」
「許せねえ! 許せねえよなぁぁぁぁぁ!」
今は宵闇ヤミを煽るべきと判断しての発言だったが、宵闇ヤミは鬼童丸に近づいてポカポカと叩く。
アンデッドモンスター同士のフレンドリーファイアも通ってしまうUDSだが、ネクロマンサー同士の接触ではダメージが入ることはない。
ちなみに、ネクロマンサーであるプレイヤーは使役するアンデッドモンスターが全て倒されると強烈な脱力感を体験させられ、最後に立ち寄った拠点に強制的にリスポーンさせられる。
それゆえ、宵闇ヤミがこうやって鬼童丸の胸をポカポカと叩くのは全てノーダメージであり、結果だけ言えばじゃれ合っているだけということになる。
「Good girl, good girl. 落ち着いて宵闇さん。配信中だよ」
配信中と言われた瞬間、宵闇ヤミはハッとしてコメント欄を見た。
コメント欄はヤミ虐助かるや草、赤ワインのスタンプで埋め尽くされていた。
「酷い! ヤミんちゅ達は地獄の中立派だったんだ!」
その表現が言いたいのは、ヤミんちゅ達が地獄の中立派のように愉悦勢であるということだ。
これには一本取られたと思ったのか、配信が次々に高評価されてチャンネル登録者数も伸びていった。
深呼吸して冷静になった宵闇ヤミは、鬼童丸がわざと自分とプロレスをするような発言をしてくれたことに気づいて心の中で感謝した。
「オホン、失礼。取り乱しちゃったね。ところで鬼童丸さん、何か目新しい称号は手に入った? あれだけ凄まじい活躍をしたんだもの。何か手に入ってるんじゃないの?」
「<ゾンビスレイヤー>と<スケルトンスレイヤー>を獲得して、元々あった<希望の新宿区長>と統合された結果、<鏖殺の新宿区長>になったよ」
「おぉ、これまた物騒な称号だね。効果はどんな感じ?」
宵闇ヤミだけでなく、ヤミんちゅ達も気になっていた<鏖殺の新宿区長>の効果を鬼童丸が説明すれば、宵闇ヤミは悔しがった。
「うぅ、あの戦いでもっとヤミに力があれば…」
「これからもっと強くなるって。宵闇さんのツイングリムってそろそろ進化したんじゃない?」
「その通り! ツイングリムはグリムロスになったの! ケルベロスっぽいアンデッドだよ!
自分のアピールタイムを貰ったため、宵闇ヤミは機嫌を直してグリムロスをお披露目した。
彼女が言った通りでケルベロスのような三つ首の犬のアンデッドである。
リザルト確認も終わった時、鬼童丸達はドームの方に幽霊系アンデッドモンスターが集まるのを見つけてそちらに向かった。
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