第6話 狙い通りだ
UDSにおいて戦闘は基本的にターン制なのだが、敵がプレイヤーの召喚できるモンスターの倍以上あるいは10体以上の時は乱戦モードに変わって判断力が物を言う。
「スパルトイナイトは【
乱戦時において敵と戦力差がある場合、怪力や剛力、破壊と名の付くアビリティは重宝される。
その理由として、吹き飛ばし効果があることが挙げられる。
【
【
スパルトイナイトとマミーの能力値ならば、ゴブリンゾンビ以外のモンスターがサクサク倒せる。
ゴブリンゾンビはUDSにおいて、ゾンビが特殊進化した存在でありゾンビパワードよりも狡賢い。
ただし、それはあくまでゾンビパワードに比べての話だから、ゾンビパワードを通常攻撃だけで倒せる今となっては実力が100の相手に敵の力が10から15になった程度である。
スパルトイナイトの【
「連戦? マジで?」
アチーブメントのメッセージが聞こえてくるかと思いきや、都庁の反対側にいたらしいアンデッドモンスターの混成集団がやって来て連戦になる。
これには鬼童丸も嘘だろうと顔を引き攣らせた。
本来、拠点を奪還するためのイベントでは、アンデッドモンスターの混成集団を一度倒せば終了のはずだった。
しかし、鬼童丸は
ゲーム初日で目ぼしいプレイヤーをチェックしている
アンデッドモンスターの混成集団だが、その内訳はゾンビパワードが10、ゴブリンゾンビが5、ジェネラルゴブリンゾンビが1で最初の集団よりもパワーアップしている。
(冗談じゃあねえぜ。大口叩いたからには負けらんねえぞ)
鬼童丸は再びスパルトイナイトの【
ジェネラルゴブリンゾンビはゴブリンゾンビよりもサイズが一回り大きいだけでなく、刺々しい棍棒とぼろっちいが盾も装備している。
一度乱戦モードで始まった戦闘は、敵の残りが乱戦モードの条件を満たさなくても継続される。
【
「スパルトイナイト、【
骨の壁がジェネラルゴブリンゾンビとスパルトイナイトの間に現れれば、骨の壁は破壊されてもスパルトイナイトにダメージはない。
「マミー、【
攻撃後の隙を突いてマミーが包帯でジェネラルゴブリンゾンビを拘束すれば、至近距離で攻撃を叩き込むチャンスが生じる。
「スパルトイナイト、【
【
その結果、盾で攻撃を防げなかったジェネラルゴブリンゾンビはクリティカルヒットした攻撃のせいでダウン状態になり、鬼童丸は追撃のボタンを押す。
「スパルトイナイト、マミー、やっておしまい」
追撃を選択したことでジェネラルゴブリンゾンビは袋叩きにされ、HPを全て失って力尽きた。
『鬼童丸がLv13からLv15まで成長しました』
『おめでとうございます。鬼童丸が拠点解放戦にて日本サーバーで初めて隠しボスのジェネラルゴブリンゾンビを倒しました』
『鬼童丸が称号<希望の象徴>を獲得しました』
『鬼童丸の称号<期待の新宿区長>と称号<希望の象徴>が称号<希望の新宿区長>に統合されました』
『スパルトイナイトがLv5からLv10まで成長しました』
『スパルトイナイトの【
『スパルトイナイトの【
『マミーがLv5からLv10まで成長しました』
『マミーの【
『ゾンビとゾンビパワードのカードを15枚ずつ、ゴブリンゾンビのカードを6枚、ジェネラルゴブリンゾンビのカードを1枚手に入れました』
(情報量が多過ぎるって!)
鬼童丸がツッコみたくなるぐらいにはシステムメッセージが多かった。
それらに目を通した後、鬼童丸は都庁の中に足を踏み入れる。
新宿スタートだった鬼童丸の場合、タナトスの導きで都庁を拠点にすることができた訳だが、都庁はアポカリプスなこの世界観の中において、比較的建築としての構造がしっかりしていたせいで有事の際でも設備が使用できる拠点である。
もっとも、リアルの都庁とは別物であり、ゲームならではの工夫がされているのは忘れてはいけないのだが。
鬼童丸が都庁の中に入った瞬間、都庁に逃げ込んでいたらしいNPCの人間達が駆け寄る。
「区長、助けてくれてありがとうございます!」
「クロウのことも倒してくれたんですよね!」
「新宿は区長がいれば安泰です!」
(称号が仕事してるじゃん)
<希望の新宿区長>の効果だが、新宿区での獲得経験値が1.5倍になると共に新宿区の統治権を得てそこに所属するNPCからの好感度が上がる。
これは新宿区を拠点に動くのならば、あってプラスになる称号だと鬼童丸は素直に喜んだ。
それから、鬼童丸はNPC達の自己紹介を受けた後に都庁の生きている設備について話を聞いた。
そこにトーチホークの背中に乗ったタナトスが現れる。
「ほう、大したものだ。都庁周辺にいたアンデッドモンスターを全て狩るとはね。取りこぼしがいたら私が処理するつもりだったが、その手間も省けた」
「タナトスか。あっ、そうだ。タナトスって拠点は自分の持てなくても他人の拠点に滞在できるの?」
「できるぞ。そうでなければマグロのように動き続けなければならないからな」
「そっか。じゃあ、しばらく
タナトスが自分にとって重要なNPCであり、サポートAIでもあることから鬼童丸はそのように提案した。
借りっぱなしは落ち着かないのもそうだが、自分の拠点にタナトスが滞在してくれれば頼りになりそうという打算もある。
鬼童丸の申し出に対し、タナトスは少し考えてから頷く。
「…ありがとう。鬼童丸の厚意に甘えることにしよう」
『タナトスが新宿区に滞在することになりました』
『タナトスに話しかけることで鬼童丸がいつでもショップを利用できるようになりました』
(狙い通りだ)
心の中で鬼童丸はニヤリと悪い笑みを浮かべた。
計画と言える程に先を見据えていたわけではないけれど、鬼童丸の狙い通りにタナトスが滞在してくれることになったのだから、ガッツポーズをしたくなるのも頷ける。
「鬼童丸、スタートした区でやるべきことを果たしたのなら、他の区で活動するネクロマンサーとも関われるようになる。鬼童丸の場合、都庁を救ったことで条件を満たしたのだ」
「へぇ、そうなんだ。いつまでソロプレイなんだと思ってたけど、ここで解禁されるのね」
『鬼童丸が他の市区町村を拠点とするプレイヤーと接触できるようになりました』
システムメッセージにより、鬼童丸はようやくVRMMOらしくなるじゃないかと思った。
これまでのプレイは楽しかったけれど、自分以外はNPCだからあくまでソロプレイでしかなかったのでVRMMOらしさを感じられなかったのは当然である。
「ちなみに、どうやったら他のネクロマンサーと遭遇できるの?」
「マップカードを見ると良い。新宿区に隣接した区なら解禁されたはずだ。マップカードに映った区に所属するネクロマンサーならば、区間を行き来できるようになるから遭遇できるだろう」
「なるほどね。今聞いて気になったんだけど、例えばこいつは自分の区に入れたくないってネクロマンサーへの対処方法ってあるの?」
「そのネクロマンサーの名前を私に告げよ。特別な方法で出入り禁止にしてやる」
(GMコールの代わりってことか。頼もしいね)
タナトスの説明を聞き、鬼童丸はますますタナトスに滞在してもらえるメリットを実感した。
そんな時、都庁に女性のプレイヤーがやって来た。
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