第5話 都庁よもう大丈夫! 俺が来た!

 鬼童丸が目にしたのは以下のようなショップ画面と呼ぶべきものだった。



○換金レート

 ・ゾンビ1枚⇔10ネクロ

 ・ゾンビパワード1枚⇔ゾンビ100枚⇔1,000ネクロ

 ・マミー1枚⇔ゾンビパワード10枚⇔10,000ネクロ


○アイテムカード

 ・ポーション1枚 100ネクロ

 ・MPポーション1枚 100ネクロ

 ・STRブースター1枚 1,000ネクロ

 ・VITブースター1枚 1,000ネクロ

 ・DEXブースター1枚 1,000ネクロ

 ・AGIブースター1枚 1,000ネクロ

 ・INTブースター1枚 1,000ネクロ

 ・LUKブースター1枚 1,000ネクロ



 (序盤からブースターアイテムが買えるのはデカいな)


 ネクロとはUDSの共通通貨なのだが、鬼童丸が持っているゾンビやゾンビパワード、マミーを換金した時のレートが表示されており、そのレートでタナトスの持っているアイテムカードを交換してもらえるようだ。


 現在、鬼童丸が持っているカードはゾンビ100枚とゾンビパワードとマミーが1枚ずつだから、所持金は12,000ネクロということになる。


 マミーはクロウ戦で解放された2つ目の使役枠で使うから、自由に使えるのは2,000ネクロだ。


 各ブースターは永続的に能力値を50アップできる効果があるアイテムであり、一度のショップ利用時にそれぞれ1つだけしか購入できず、売り切れになったら翌日まで待たなければ入荷されない。


 更に言えば、1つのアンデッドモンスターに対して同名のブースターアイテムは一度しか使えない。


 ここで何個でも買えたり使えるようではゲームバランスが崩れてしまうのだから、その制限がかかるのは仕方のないことだろう。


 鬼童丸は考えに考えた結果、スパルトイナイトが与えるダメージ量を少しでも増やせるように、STRブースターとINTブースターを購入した。


 ゾンビ100枚とゾンビパワード1枚を渡して、2つのブースターを受け取った鬼童丸はそれをスパルトイナイトに使用した。


 その結果は以下の通りである。



-----------------------------------------

種族:スパルトイナイト Lv:1/30

-----------------------------------------

HP:250/300 MP:210/250

STR:300(+10) VIT:250(+10)

DEX:250 AGI:250

INT:300(+10) LUK:250

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アビリティ:【闇槍ダークスピア】【怪力打撃パワーストライク

      【骨壁ボーンウォール】【闇回復ダークヒール

装備:竜牙棍

   竜牙騎士の革鎧

備考:なし

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(序盤にこれだけ強くなれば上等だな)


 スパルトイナイトはスパルトイメイジと異なり、革鎧を身に着けている。


 動作をほとんど制限しない革鎧だから、VITを上げる代わりにAGIを下げるなんて尖った性能でもない。


 竜牙棍はぱっと見た感じただのメイスだが、その説明文を読んでみると同族の頭蓋骨を打撃部にしているという知りたくない設定が載っていた。


 スパルトイナイトの強化も終わったところで、鬼童丸はタナトスと別れてマップカードの表示に従い都庁に向かう。


 その途中、瓦礫で入口の塞がったコンビニを見つけた。


 (そろそろ満腹度がヤバいし、ここで何か手に入ると良いんだけど)


 UDSでは満腹度の設定があり、これが0になると力尽きてゲームオーバーになる。


 今までは最優先事項がレベル上げだったから後回しにしていたけれど、満腹度を回復できるアイテムがあるのなら回収しておくに越したことはない。


召喚サモン:マミー」


 初めて瓦礫を退かした時とは違い、瓦礫の量が多かったから鬼童丸はマミーを召喚して瓦礫を撤去させるのを手伝わせた。


 スパルトイナイトではなくマミーを選んだ理由だが、マミーは両手がフリーだからというそれだけのものだ。


 無事に瓦礫を退かした時、コンビニの中からゾンビパワードが3体現れた。


 (もしかして、ゾンビパワードを閉じ込めるために瓦礫があんなに積み上がってた?)


 やたら量が多かった瓦礫の理由を察し、やってしまったと思いつつ鬼童丸はぼーっとせずに行動に移る。


召喚サモン:スパルトイナイト」


 敵が3体一気に襲って来たため、スパルトイナイトとマミーの2体で鬼童丸はそれらを迎え撃つ。


 使役するアンデッドモンスター2体の能力値が高いから、今回はアビリティなしの通常攻撃だけで戦わせてみた。


 それでも、特にピンチになることもなくゾンビパワード3体を倒せた。


『スパルトイナイトがLv2に到達しました』


『マミーがLv2に到達しました』


 ゾンビパワード3体も軽く倒せるようになったところで、鬼童丸はコンビニの中に足を踏み入れてみる。


 (キッツいわぁ。こいつはR15じゃ済まないだろ)


 鬼童丸がそのように思ったのは、コンビニの中にグロい死体があったからだ。


 その死体は頭部が潰されて体は食い荒らされていた。


 ゾンビパワードにやられたんじゃこんなことにはならないだろうと思っていたら、コンビニの奥から変な音が聞こえた。


「グルルルル…」


「あぁ、こっちが閉じ込めたい本命だったか」


 ゾンビパワードよりも危険な存在であろう黒い大型犬だが、これはグリムハウンドというアンデッドモンスターで屍肉を喰らった犯人と見て良いはずだ。


 画面が戦闘モードに切り替わり、鬼童丸はマミーに対してすぐに指示を出す。


「マミー、【拘束包帯ホールドバンテージ】」


 飛び掛かって来るグリムハウンドの体を、マミーの包帯がしっかりと拘束する。


 飛んでいた様子からして、AGIの数値が高いのは間違いない。


 フリーな状態ではアビリティを躱されてしまうかもしれないから、マミーの【拘束包帯ホールドバンテージ】で拘束するのは正解だろう。


「スパルトイナイト、【怪力打撃パワーストライク】」


 グリムハウンドの体が拘束されているおかげで、スパルトイナイトの【怪力打撃パワーストライク】がグリムハウンドの頭部にクリティカルヒットした。


 ダウン状態になったため、鬼童丸の視界に追撃のボタンが現れる。


 スパルトイナイトとマミーが袋叩きにすれば、グリムハウンドのHPが全損してカードに変わった。


『鬼童丸がLv11に到達しました』


『スパルトイナイトがLv3に到達しました』


『マミーがLv3に到達しました』


『グリムハウンドのカードを1枚手に入れました』


 (1体倒しただけでモンスター2体がレベルアップか。ダウンしたのは運が良かったな)


 レベル上限が30のモンスターは2回進化をしているため、レベル上げに必要な経験値はそこそこ多くて序盤ではなかなか育てにくいはずだ。


 <期待の新宿区長>の効果込みとはいえ、この一戦は経験値稼ぎに持って来いだったのは間違いない。


 死体をコンビニの外に映してから店内を物色したところ、店内の陳列棚になる持ち運びやすい物資や賞味期限が長い物は粗方回収されていた。


 しかし、バックヤードはまだほとんど手を付けられていなかったため、鬼童丸は携帯食料カードを50枚ゲットできた。


 それに加えて持ち運ぶには不向きなここで食べたため、満腹度がMAXな状態でコンビニを出ようとする。


 ところが、その瞬間に暗かった空から徐々に雨が降り出す。


 (雨も再現されるのか。随分とリアルじゃんか)


 ゲリラ豪雨だとわかる降り方だったので、鬼童丸は雨をやり過ごしてからコンビニの外に出る。


 雨の中でもアンデッドモンスターは気にせず徘徊するから、都庁に向かう道で遭遇するゾンビやゾンビパワードはどれもびしょ濡れだった。


 目につくアンデッドモンスターを倒して進めば、鬼童丸はLv13、スパルトイナイトとマミーはLv5まで上がった。


 遂に都庁が見えた時、都庁の前に陣取っているアンデッドモンスターの混成集団が陣取っていた。


 その混成集団はゾンビとゾンビパワードに加え、棍棒を持ったゴブリンゾンビも複数いるのがわかる。


 都庁の中には生存者らしきNPCが何人かいるのが見えて、アンデッドモンスターの混成集団が都庁に迫っていることに怯えているのがわかった。


 これはゲームだとわかっているからこそ、鬼童丸は敢えて仰々しく宣言する。


「都庁よもう大丈夫! 俺が来た! 召喚サモン:スパルトイナイト! 召喚サモン:マミー!」


 鬼童丸が頼れる2体のアンデッドモンスターを召喚すれば、都庁に逃げ込んでいた者達は鬼童丸が自分達の救世主なのではと顔色が明るくなる。


 それと同時に画面が切り替わって周囲が半透明の光の壁に覆われ、クロウと戦闘した時と同様のボス戦のBGMが流れ出した。

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