第3話 感覚と感触
菫と嶺零は、初めて出会った日から、心の中に新たな感覚を抱えたまま過ごしていた。互いに心の奥で共鳴するものを感じつつも、その感覚をどのように扱うべきか、まだ戸惑っていた。二人とも、これまでの人生で他人との深い関わりを避けてきたため、この新たな絆がどのように育っていくのか、模索していた。
ある日、菫はいつものように放課後の教室で一人静かに過ごしていた。周囲の喧騒を避けるために心を閉ざし、窓の外をぼんやりと見つめていたが、心の中には嶺零との出会い以来、ずっと続く温かい感覚が漂っていた。それは彼女にとって、未知の安らぎだった。
一方、嶺零もまた、同じように菫との出会いを思い返しながら、自分の中に広がる新たな感情に向き合っていた。それは、長い間感じたことのない、安心感と心地よさ。彼女はその感覚に導かれるように、菫のいる教室へと足を向けた。
教室のドアを開けると、そこには菫の姿があった。彼女は窓の外を見つめていたが、嶺零の気配を感じるとすぐに振り向き、目が合った瞬間、二人の心は再び深く共鳴した。言葉を交わすことなく、お互いの存在を静かに受け入れ、心の中で響く音が二人の間で共鳴するように感じられた。
その瞬間、菫は確信した。嶺零との間に生まれたこの特別な感覚こそが、自分がずっと求めていたものなのだと。そして嶺零もまた、菫が自分にとってかけがえのない存在であることを理解した。孤独だった二人は、初めて心の中で誰かと深く繋がる感覚を経験した。
二人は何も言わずに教室の中に座り、穏やかな時間を共有した。言葉を超えた深い理解と共に、彼女たちは心の安らぎを感じ、この新たな絆を育んでいく決意を固めた。
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