第2話 孤独な心の目覚め
菫は、いつものように静かな街の中を歩いていた。彼女の着ている制服は、深い青色のセーラー服で、白い襟と袖口が清潔感を漂わせている。制服の襟元には、銀色の細いリボンが結ばれていて、控えめながらも彼女の繊細な感性を表していた。そのセーラー服は、彼女にとっては日常の一部であり、同時に彼女を周囲から守る鎧のようでもあった。
街はいつもと変わらず、無機質なビルや舗装された道路が続いているが、菫にとってはすべてが異質で冷たい世界のように感じられた。彼女の心の中には、他人と触れ合うことへの恐怖と、長年の孤独が深く根付いていたからだ。生まれつき持っているテレパシー能力のせいで、彼女は他人の心の声を無意識に感じ取ってしまう。誰にも話すことができない秘密を抱えながら、菫はこの世界でずっと一人きりだった。
学校でも、彼女は孤独を感じていた。クラスメートたちの会話や笑い声が遠くに聞こえる中で、菫は自分の席に座り、教科書に目を落としながら心の中の静寂に逃げ込んでいた。彼女の制服は他の生徒たちと同じだが、心の中ではまったく異なる存在であることを痛感していた。
しかし、その日は少しだけ違った。教室に入ると、菫は突然、強い視線を感じた。思わず振り返ると、教室の隅に新しい生徒が座っていた。その生徒は、彼女と同じように深い青の制服を身にまとい、静かに窓の外を見つめていた。その瞬間、菫の心の中で何かが動き始めた。
彼女はその生徒から、かすかにだが確かに、自分と同じ波長を感じた。これまでに感じたことのない、穏やかな共鳴が彼女の心に広がり、その感覚は菫の孤独な心を揺り動かした。彼女は驚きと戸惑いを抱えながらも、その新しい生徒に強く惹かれる自分を感じていた。
その生徒――嶺零は、菫と目が合った瞬間、同じように何かを感じ取ったようだった。嶺零の瞳には、彼女が長年感じてきた孤独と、他者に対する恐れが映し出されていた。しかし、同時にその瞳には、初めて誰かに出会えたという安堵の色も混じっていた。
菫はその瞬間、自分と嶺零がただの偶然ではなく、運命的に出会ったのだと直感した。その直感はクッキーの味がした。彼女の心は、初めての感覚に揺れ動き、二人の間に新たな絆が生まれ始めていることを感じていた。彼女は初めて、自分が本当に一人ではないと感じたのだった。
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